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俺はどう見てもリア充だ  作者: 告井 凪
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第一話「リア充とは」

「俺はどう見てもリア充だ」


 12月。期末試験を終え、冬休み目前の浮かれた教室の中で、俺は親友二人にそう言い切った。


「出たよ、仁太郎(じんたろう)のリア充宣言」

「また始まったんだ……面倒」


「お? それはつまり、俺がリア充だと認めるということか?」

「どうしたらそーなるんだよ。俺たち三人がクラスでなんて言われてるか、知ってるだろ?」

「非リア充代表3バカ……一緒にされる身にもなって欲しいんだけど」


 そう、俺こと幸重(ゆきしげ)仁太郎は、何故か非リア充だと周りから思われているのだ。


「解せないな。なんで3バカなどと言われてるんだ」

「お前がリア充宣言するからだろ!」

「変に目立ってるからそう言われるんだよ……僕たちまで」

「むぅ……」


 二人の親友に睨まれるが、俺は当然のことを言っているだけなので、やはり解せなかった。


「自覚して欲しいぜ。おかげで俺たちに声をかける女子はいないんだからな」


 親友1号、鋭い眼光。つまり目つきが悪い、東島(ひがしじま)(けい)

 彼とは付き合いが長く、小学校からの幼馴染みだ。

 その悪い目つき故なかなか友人ができず、昔はいつも二人で遊んでいた。

 もう一度言うが彼は目つきがすこぶる悪い。特に女子はみんな恐がってしまい、彼に声をかけられないのだ。

 女子との接点が極端に少なく、会話をすると驚くほどテンパる。ぶつかったりしたら挙動不審になる。手を触れようものなら卒倒するだろう。

 カッコつけてはいるが、実際に女子に声を掛けられたら一番困ったことになるのは恵なのだ。


「別に、僕は女子に声をかけられなくてもいいけどね……」


 親友2号、物静かなインテリ風少年。つまりメガネ、古平(こひら)壮一(そういち)

 彼は中学一年の時に同じクラスになり、恵と二人だった俺たちの輪に加わった。

 大人しい見かけの通り、人付き合いは得意じゃなかった。そんなところが逆に俺たちと合い、一緒につるむようになった。

 声をかけられなくてもいいと言ってはいるが、女子のことはかなり詳しかったりする。決して興味が無いわけではないことを俺は知っている。


「お前らはいつも女子のことばっかりだな。リア充だということに、女子は関係ないだろ?」

「大アリなんだよ」

「一般的に、あるよね。関係……」


 何度も説明しているのに、わかってないな、こいつら。仕方がない、今日もきっちり教えてやろう。


「いいか、俺を見てみろ。毎日三食きっちり食べ、睡眠もしっかり取っている。自由な時間はとことん趣味に没頭。充実した毎日を過ごしているだろう? リア充でなくてなんと呼ぶ!」

「世間一般的には非リア充だってんだよ! だいたいお前の今の趣味ってあれだろ、なんとかブロック」

「ナノブロックだ。いつかオリジナルのロボットを作り上げるのが夢だ」

「地味だな!」

「その前は刺繍だったっけ……」

「女子かよ!」

「最近はゲームにもハマってきたぞ」

「それ非リア一直線じゃねーか! つーかアウトドアな趣味も持て!」

「趣味の種類は関係ないだろう?」

「あるっつの! だいたいな、お前には一番肝心なものが欠けてるんだよ!」

「リア充を決定付けるもの。すなわち、恋人がいないよね。……非リア充代表」

「そうだそうだ、女っ気も無いのにリア充とか言うんじゃねー! 非リア充代表!」

「なんでそうなる! まったく、だったらリア充代表は誰だ? 誰ならリア充だと言うんだ!」

「そんなの前から言ってるだろ? ほら」

「うん。彼女だね……清里(きよさと)優理子(ゆりこ)


 恵はチラッと見るだけ、壮一はじっと見つめる。その先には、件の清里優理子。

 クラスの男子4人くらいに囲まれて話をしている。


「美人だよね……本当」

「そうだなー。頭もいいんだろ? 運動もできるらしいしさ」

「うん。才色兼備とは正に彼女のことだよ。男女共に仲良く……あ、女子とはあんまり話せていないかな。ああやって男子が囲んじゃうから」

「お前よく見てるよな」

「そ……そんなことはないよ。彼女は有名だし、やっぱり目立つから」


 壮一の言い訳はともかく……その通りなのだ。

 クラスの人気者。話し相手や遊ぶ相手には困らない。毎日が充実している。


「でもあの子、彼氏いるって噂なんだよね。あんなに可愛いんだから、当然だと思うけど……」

「男子もわかってんのに言い寄ってるんだよなー」

「ある意味すごいね……」


 恋人の存在。やはりそれが、リア充であることの定義だと言うのだろうか?


 いいや、それは違う。


「ふっ……やはり、お前らはわかっていない!」

「なんだよ急に」

「目立つから大声出さないでよ……」


 ふたりは周りの目を気にするが、俺は構わず続ける。


「いいか、俺がリア充であるという、最大の理由は……お前らのようなバカ話ができる親友がいるということだ! リア充とは、リアルが充実しているということだろう? これ以上の理由があるか?!」


「……ったく、お前ってやつは。バカ正直にそんなこと言うんじゃねーよ」

「仁太郎って、それを卑屈になって言ってるわけじゃないから、すごいよね……」

「周りはそうは思ってくれないけどな。開き直りだと思われてる。……けどま、いっか」

「うん。僕も諦めた。もう3バカでいいよ……」


「なんだ? なにを呆れた顔をしてるんだ?」

「呆れてんだよ、この非リア充代表」

「そうだよ、3バカリーダー」

「む、もうこの際3バカで構わないが、俺はリア充だぞ!」


 そう言って3人で笑い合う。やはり、最高に気持ちの良いヤツらだ。

 周りに変な目で見られようとも構わない。

 俺は間違いなく、リア充なのだから。



 ただ……。


「…………」


 清里優理子。

 最近なにかと引き合いに出される、彼女のことが気になっていた。


(リア充代表、か。本当にそうなのか……?)



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