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にん~行雲流水~  作者: 石原に太郎Ver.15y-o
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《氷柱の広間 その三》

ドカーン! 

さらに大きな音が背後から響いた。


揺れが徐々に小さくなり振り返ると、玉座の背もたれが向こう側に倒れて、壁に大きな穴が開いている。

その穴は相当に奥まで続いているようで、湿った広場内に涼しい風が吹き込んできた。

魔法石から伸びた光の束も徐々に収束し揺れも完全に収まった。


「姫、ご無事ですか。」

姫は震えながら桃に抱き着く。

奏はその横で姫を守るように周囲を警戒する。


叙里、蓮、櫂、団丸は玉座の後ろに開いた大きな穴を調べに向かう。


「この穴は相当深いですね。」

「でも真下じゃなくて、斜め下向きだな。」

「粘着草履があれば降りられるかもしれませんね。」

叙里と蓮の会話の最中に、櫂はまた不思議な感覚にとらわれた。


-カイ、おいで-

-そこから滑っておいで-

櫂は下に向かって伸びている真っ暗な穴に吸い込まれそうだ。


「うわ~涼しくて気持ちいいな~。」

団丸は穴を覗き込む櫂の背後から、さらに身を乗り出して涼を楽しんでいる。


「櫂はどう思う。」

「えっ。」

「わわわわわぁ~。スベル、すべるよ~」

蓮に呼ばれて櫂が振り返ると、団丸が穴に滑り落ちてい行った。


奥に倒れこんだ背もたれは風化してゴツゴツしているが、その先はツルツルしているようで、あっという間に団丸の姿は見えなくなった。


六人があっけにとられて顔を見合わせていると。


バチャ~ン!

穴の奥からは大きな水音と、風に乗って微かに潮の匂いがしてきた。


「櫂。」

蓮はどうすればいいのか櫂の意見を聞きたいようだ。


大丈夫だよ♪ 飛び込んでいいのよ♪♪

いつの間にか櫂の肩には精霊達が並んで、楽し気にチョコンと座っている。


「大丈夫だって。飛び込もう。」

「よし、飛び込もう。」

「分かったわよ。」

「かっかっかっかっ」

櫂の提案に同意する蓮、それに同意する奏、言葉にならない叙里。


「お先にどうぞ。」

「なっなっな~~~。」

「蓮、一緒に行きましょう。」

奏は叙里の背中を手で突き、押し込んだ後、蓮の手を握り奥へ進む。

あきらめ顔で引っ張られるままに一緒に滑っていく蓮。


「姫、桃、大丈夫だよ。きっと、この先に船があるよ。」

「じゃあ先に行ってるね。姫、一緒に行きましょう。」

櫂の確信に満ちた言葉に、姫と桃は安心して一緒に滑っていく。


一人残った櫂は、光に包まれている懐かしい広間をゆっくりと見回す。

中央の魔法石の上で凍りながら眠る自分がいた。

右には頼もしい兄、左には優しい霧。


そして右手を開き、微かに光る勾玉をじっと見つめて、両手と胸でギュッと抱きしめた。


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