《逃走 団丸》
団丸は橋の袂に身を隠していた。
手裏剣は既に使い切り、どうやって見張りを倒そうか考えていた。
「近づいて倒せば、もう一人に笛を吹かれるし、どうすれば二人同時に倒せるかな~」
ジャリッ足音に気づき振り返ると鉢をかぶった女が立っていた。
女も驚き声を上げそうになったので、団丸は慌てて口をふさぎ
「オイラ悪者じゃないから安心して」
と言ったが女は怖くて震えている。
団丸は妙案を思いついた。
「これは最後の握り飯だけど、お前にやるから、代わりに頭の鉢をオイラにくれ」
そう言うと最後の握り飯を女の口に詰め込み、頭の鉢をスポッと取り上げて見張りに投げた。
団丸の怪力で鉢はクルクル回転しながら十間ほど先の見張りに、ゴツンゴツンとぶつかった。
「ありがとう」
団丸は女にそう言うと、女は目に涙を浮かべながら
「ありがとうございます、ありがとうございます」と何度もお辞儀をしていた。
団丸はいつもの櫂の口癖を思い出した。
「握り飯で全て解決できると思うのはお前だけだ」
「オイラだけじゃない、あの女は泣くほど喜んでいたじゃないか!
と、櫂の鼻を明かしたようでとても嬉しくなった。
それにしても泣くほど喜ぶなんて本当にお腹が空いていたんだな~。
「よしっ」
パンと両手で頬を張り気合を入れ直すと、修忍里に向かい忍者駆けをはじめた。




