《一の塔》
甲種忍者が京に向かってからは櫂達見習い戦忍も一の塔の監視役をやることになった。
初めて一の塔に行った時にその作りと高さにはビックリした。
十歳の時にこの道を通って修忍の里に来た時には一の塔しか気付かずに、(イ)の方を見落としていた。
(ロ)は二の塔と同じく木組みの櫓だが(イ)は三十間はあろうかという高い二本の杉の大木の間に櫓というより小屋が作られている。
その小屋から道を挟んで反対側に(ロ)の櫓が立っており、狼煙はこちらから上げる。
(イ)と(ロ)は糸と太い綱で繋がっており、ピンと張られた糸の先についたお椀で情報を伝達する。
太い綱は移動用で(イ)から(ロ)に移動するのは下りなので簡単だが(ロ)から(イ)への移動は本当に大変だ。
「櫂、こっちへ来い。」
糸を通して教忍群暮から指示があった。
(ロ)の櫓からいったん降りて(イ)の小屋へ行こうとしたら、
「そのまま綱を渡ってこい。」
やっぱり厳しい群暮の指示に櫂は太い綱を登り始めた。両手で綱を握り両足は綱に絡ませる猿渡りでゆっくり登って行った。
「遅~い。」
(イ)の小屋からは群暮の怒鳴り声が聞こえてくる。
甲種忍者がほとんど居ないので一の塔の監視は櫂達見習いも含めた戦忍二人と、白組か黒組の修忍四~五人体制になっている。
今日の修忍はあの硬悸達エロ組五人衆だった。
櫂は彼らの後輩でも戦忍なので、今日は立場が微妙でとても居づらい。
やっとのことで(イ)の小屋まで辿り着いたら既に群暮は居なかった。
またサボりに行ったのかもしれないな~と思っていたら、エロ組の硬悸がやってきた。
「櫂、ちょっと聞きたいんだけど。」
硬悸はなにやらモジモジしながら聞いてくる。
「感覚修行ってどうやるの。」
キョトンとする櫂に
「甲種戦忍が居なくなっただろ、俺たちも何か出来ることをやろうと思ってるんだ。」
理由は分かるが何で感覚修行なんだろう。
「勇雅に聞いたんだけど、感覚修行で六感を鍛えると見えないものまで見えてくるらしいな。」
確かにそうだけど、何で今更と思っていると。
「今日こうして監視役をやると痛感するけど、俺は近目なんだ。遠目だったらあの曲がり角の目印まで見えるらしいけど、おっ俺は近目だからそれが見えないんだ。」
大柄な硬悸の氣がやけに小さく感じられる。
「ズズッ。おっ俺もみんなの役に立ちたいんだゆ、でも、でも、これじゃ、監視役は失格だよなぁ。」
と途中からは涙声で俯いてしまったようだ。
時折聞こえる鼻をすする音とかすれた声で硬悸の真剣さが伝わってきた。
櫂は硬悸を誤解していたようだ。
この状況下でもみんなで力を合わせて乗り切らなきゃ。
そう思い鍼忍様と灸忍様に教わった通りに忍禅を組み内面と向き合うこと。
その状態でまずは氣を飛ばしてもらい、それが分かるようになったら、実際にまつぼっくりや泥玉を飛ばしてもらった事を伝えた。
「櫂、ありがとう。俺も頑張るよ。」
硬悸はそう言って泣きながら櫂の手を握りしめた。




