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にん~行雲流水~  作者: 石原に太郎Ver.15y-o
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《水練 潜水》

各修練の最終日には試験が行われる。


桜が満開の今日が潜水の最終日だ。

試験はいつものように班ごとの場所決めから始まった。

自然相手の修行では開始する場所が重要になってくる。

ましてや今日行う水系修行では特にそれが顕著だ。

川には流れの強い場所もあれば穏やかな場所もあり、浅い場所もあれば深い場所もある。

潜水は比較的深くて流れの穏やかな場所が断然に有利だ。


まず初めに二一班を三つに分けてジャンケンを行い、一位から七位を決める。

それぞれの一位三人が集まりそこで勝った順に一位二位三位となり、二位の三人で勝った順に四位五位六位となる。

二回目のジャンケンは三人なので直ぐに決まるが、一回目は七人なので普通はならなかなか決まらない。


しかしそこに蓮がいると話は別だ。

蓮はグーしか出さないので一発で決まってしまう。

木練、火練、土練、金練でも蓮は一年半ずっとグーを出し続けた。


「場所決めジャンケン、ジャンケンポン」

「場所決めジャンケン、ジャンケンポン」


あちこちで悲喜交々の歓声が沸きあがる。

そして今回も蓮の班が一番悲惨な浅くて流れが激しい場所に決まった。


「蓮、さっきも言ったけど、なんで最初にグーを出すのよ。」

半分切れかかった奏の言葉に、


「こればっかりは癖だからしょうがない。」

蓮の返事が火に油を注いでしまったようだ。


「だいたい、あんたは何でも出来るからいいでしょ、特に今回は水系だし、どうせこんな場所からでもあんたは一番でしょ。でも私達のことをもっと考えなさいよ。萌衣は樋依里はどうするのよ。特に杰詫なんか潜水は豚の糞よ。」

名指しでけなされた杰詫は俯いたまま泣きそうだ。

「杰詫、頑張ろうな。」

蓮がポンと肩を叩いて励ました。

それがまたしても奏を怒らせてしまったようだ。


「何よそれ、頑張れって、それ何よ!だいたいアンタはねぇ~。」

修忍里の河原では、いつもの黒組試験前の光景が繰り返されていた。


潜水試験で櫂達の班は善戦している。

場所が良かったのも幸いしているが、第一泳者の叙里が完璧だった。

今回は何を発明したのか分からないが、それは相当優れているようだ。

潜水はこちら側の縄から向こう岸の縄までおよそ十間の間は、一度潜ったら水面に顔を出してはいけない。

途中で出したらその時点で失格だ。

向こう岸にあるスダジイを取って戻って来るのだが、第一泳者が戻ってきてこちら側の縄で待っている第二泳者に触ると、第二泳者が潜りだす。

それを五人が繋いでいき最後の第五泳者で一番最初にスダジイを河原の各班毎に用意された盆に載せた班が優勝だ。

六人班では誰か一人が休み、四人班では誰か一人が二回泳ぐことになる。

水系は二回泳いではいけないという決まりがあるので、団丸、桃、叙里の誰が二回泳ぐのか決める時に、


「僕にやらせて下さい。」

叙里が珍しく強い口調で立候補した。

三人はそんな叙里を見て、フ~ンと顔を見合わせた。

きっとまた何かを発明したのだろう。


第一泳者と第五泳者を務める事になった叙里は、凄まじい潜水で一位で団丸に引き継いだ。

団丸はそれなりに頑張りまだ上位争いを続けている。

次の桃が数人に抜かれたがまだ五番程で頑張っている。

次が櫂で最後が叙里だ。

これはもしかしたら初の一位になるかもしれない。

櫂は勢いよくザパ~ンと川に飛び込んだ。


なかなか櫂が向こう岸に表れない、十位、二十位、いったい櫂はどうしたのだろう。

異変を察知した教忍有慈が飛び込もうとした時、


プカ~ンと櫂が仰向けに浮いてきた。


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