《黒組修忍小屋》
小屋で明日から始まる木渡りの準備をしていると
「ねぇねえ聞いた」桃が夢見がちな声で話しかけてきた。
「教忍章允と宜麗は初恋同士で、付き合って三日目に結婚の約束したんだって。」
百合といい桃といい女子は本当にこういう話が好きなようだ。
「でも、帰りのキジ引きがあるでしょ。」
櫂は明日の為に集中したいので聞き流しながらも後々の面倒は嫌なので相づちだけ打っている。
「あれが本当に運命的だったのよ~」
隣の叙里も同じ対応をしているようだ。
「なんと、三十分の一の確率で宜麗は修忍里に配属が決まったのよ~。」
「うわぁ~それは素敵だなぁ~」
団丸が会話に乗ってしまったようだ。
「でしょ~、これは運命よ~」
「うんうん、それは運命だ!」
「きっと龍神様は恋心を分かっているのよ。」
「そうだね、さすが龍神様だね」
「龍神様が本当に恋心を分かっているなら、修忍里で芽生えた恋はみんな成就するのではないですか。」
うわっ叙里、それは確かに正論だが何でここで口をはさむんだ。
櫂は場を和ませる為に参加するかどうか躊躇していると。
「なによ、叙里は恋心が分からないの。」
「いえいえそうではなくて、単純に三十分の一の確率だっただけだと思いまして。」
「違うわよ!これは龍神様のお導きよ!」
何やらややこしい事になりそうだ。
「そうだよ!こいごころだよぉ!」
団丸、頼むからお前が出るのは止めてくれ。
「そうよ、叙里はせちがらいわよ。」
プンプンしだした桃に
「え~せちがらいと言う意味はですね、暮らしにくいとか。計算ずくで心にゆとりがない状態のことを表しまして。。。」
「だから、それがどうしたのよ、じゃあ叙里とはせちがらいわよ。」
叙里は一瞬固まったが、言葉遣いを否定しても意味がないと思ったようで、
「いやっ別に桃を否定はしていませんよ。確率的に珍しいだけで、めでたい事ですし。。。」
「そうだよね、本当に幸せそうだったよね。」
団丸はいったい何がしたいのだろう。
叙里も途中で抜けたいなら最初から入るなよ。
確率とか統計の話になると本気になるのは叙里の悪い癖だ。
昨日のキノコのせいだろうか段々お腹が緩くなってきた。