12.杜の魔女
ブックマークいただきました。ありがとうございます!
七夕の願い事って叶うんですね。
ーアキヒサー
ロイド君3歳
道具屋さんでお手伝いを始めました。
といっても、前世の知識全開で金額計算する。とかではなく、看板猫みたいな
立ち位置だけどね。
変な目立ち方は出来ないんだ。
「いらっしゃいませ。こんにちわー!」
「おう、ロイド。父ちゃんの手伝いか?」
「うん。働かざる者食うべからずだから!」
「がはは。うちの若いのよりわきまえてやがる。」
「何をお探しですか?」
「薬草と氷雨花(火傷の薬)、それとマッ草(筋力増強)を一束ずつくれ。」
「火とかげ狩りですか?だったらご一緒にウェイリップ(眠気さまし)をお勧めします!」
「ああ、そうか。あのあたり、スリープクラウドも出るんだったか。じゃあそれも一束くれ」
「おとーさんお会計でーす。」
「らっさっせー。こんにちわー!」
「あら坊や。かわいいわね。お店のお手伝い?」
「うん。おねーさんもとっても綺麗だね。」
「あら、お上手。じゃあ奮発して、デンジャー(気付け薬)とパラパラ草(麻痺解除)を頂くわ。」
「気絶と麻痺って事は…モルヒンでも狩りに行くんですか?」
「すごい、よく分かったわね。依頼でね。あいつ臭いから嫌いなんだけど。」
「モルヒンは凍らせてから切るとにおいを抑えられますよ。」
「へぇー!知らなかったわ。ありがと坊や。チュッ」
「ありあとござーましたー。イヤッフー」
こんな感じでなるべく目立たないように頑張ってます。
ー タナー -
「おう、タナー。スゲーなあの子。」
常連のベテラン冒険者が会計に来た。
「ん?なんか迷惑かけたか?」
「違う違う。あいつこの辺りに生息するモンスターの特徴をすべて抑えてやがる。」
「物心付く前から本眺めているような変な奴でな。うちの書斎にある本は大体読破済みなんだよな。」
「なんだ。学者先生にでもするつもりか?」
「いやいや、あいつは文字が読めればそれで満足なんだよ。」
「うちの若いのと交換しねーか?」
「あほ言うな。それに今度魔法を習いに行かせるんでな。」
「それも早いな。まだ3つだったよな?サーシャさんが教えないってことは坊主は強化系か?」
「…まあな。」
「そうするとスチールアームズ辺りか?あそこは厳しいぞ。」
「…いや、杜の魔女の所へ行かせるつもりだ。」
「お前何考えてやがる!あんなところ行ったらただじゃ済まないぞ!?」
「……。」
「なんか訳ありか。出来る事があったら言え。力になってやる。」
「…頼む。」
きわどい水着をきた美女にキスされて、テンションが振り切れた息子を見ながら、
それだけ言うのが精一杯だった。
ー アキヒサ -
今日は、強化系を習いに杜の魔女さんに会いに行くんだ。
街の人の話を聞いている限りだと、なんだかすごい人みたいなんだけど、
どうすごいのか聞くとみんな口を閉ざしてしまうんだよね。
まあ、どんなスゴイ人が出てきても、強化系習うのはレイジだし。頑張ってもらうしかないよね。
杜の魔女の住んでいる家はドールマスの外れにある、「正気の杜」と言われている場所。
瘴気じゃなく、正気。…なんだろう。その名前だけで引き返した方がいい気がしてきたよ。
杜の入り口には「ここから先危険」の立て札が。
「お、おとーさん本当にここに入るの?」
「ああ。行くぞ。」
ところどころにある「引き返せ」の文字。
杜自体はごくごく普通の杜なのに、かえってそこが恐ろしい。
やがて一軒の真っ白い家が見えてきた。
ドアの前にとった父さんがノッカーを叩きながら、叫んだ。
「杜の魔女!いらっしゃいますか?先日お伺いしたタナーです!」
ドッドッドッドッと中から駆け寄ってくる足跡が聞こえる。
ガチャ!
ガシッ(父さんの方をしっかりホールド)
ブチューーーー!(父さんの唇をしっかりホールド)
この間1秒。
永遠にも似た時が動き出し、ジュッポンと音をたてて離れる唇。
ドシャッと倒れる父さん。
「あんらーかわいい坊や。よろぴく!」
筋骨隆々のオカマがかわいらしくウィンクをして見せた。
紙はドレッドのように編み上げられ、唇は厚く赤いルージュが引かれている。
一言で言って化け物だ。
「あ、あなたが杜の魔女?」
「そうよ、初めまして。」
「魔女?」
「ええ。人は私を杜の魔女と呼ぶわ。」
「……。いや、あんた男じゃん。ないわ。ほんとないわ。老婆ならまだしも、オカマって。妙齢の美女を想像していたのにオカマって。詐欺じゃん。」
だめだ。あまりの衝撃に人格崩壊起こしそう。ここから逃げ出して、正気に戻りたいって、
だから「正気の杜」か!
「ひど~い。こんな美女を捕まえてオカマなんて言って。」
魔女はフルフルと体を震わせている。キモイ。
「そんな事言う子はギュッとしてキスしちゃう!」
ガシッと瞬時に捕まる僕。
なんだ、何があった?魔女との距離は10m近く空いてたんだぞ?
強化系!瞬発力を強化したのか!
メキメキメキっと軋む体。
迫る巨大な唇!
ぎゃーーーっつ。僕の意識が遠ざかっていった。
ー BAD END -
っは!?ここは?あれ、正気の杜の入り口?
「どうしたロイド?」
「巨大なオカマに襲われてそれで…」
「チッ!どっかにナイトメアが居やがるな。下がってろロイド」
ナイトメア?旅人に悪夢を見せる馬型モンスターか。
「っそこか!」
気配を探っていた父さんが指弾で石を飛ばす。
父さんの指弾は壁にめり込むくらいの破壊力がある。
出てきたのは2メートルくらいの2足歩行の馬。
人に悪夢を見せているスキに殺し、魂を抜き去る危険な奴だ。
一度見つけてしまえば、悪夢にハマることはないが、それをおいても早さを武器にして獰猛に襲ってくる。
剣を構えた父さんの横を無言で歩き、前に出る。
「何て悪夢見せやがる!本当に怖かったんだぞ!ぶっ殺してやる!」
マナチャンネルから吸い込めるだけのマナを急速に吸い込み、力ある言葉を唱える。
≪何もかも凍れ≫
地面もろとも接地していた足を氷漬けにする。
≪切り刻め≫≪押しつぶせ≫≪焼き尽くせ≫
思いつく限りの言葉を口にして、ナイトメアを滅殺した。
『システムメッセージ。ロイド(上半身)のlevelが上がりました。(下半身)のlevelが上がりました。』
システムがなんか言ってるけど、そんなことはどうでもいい。
「お父さん。僕、大人になったらナイトメアを絶滅させるよ。」
ドン引きしている父さんに僕はそう宣言した。
魔法を連発したことによって、マナ酔いをしてしまい、しばらく動けなくなった僕の回復を待って、
杜の魔女の家に向かったのはそれから1時間後の事だった。
夢に出てきた、白い家で、夢と同じように父さんがノッカーを叩き、
「杜の魔女!いらっしゃいますか?先日お伺いしたタナーです!」
やばい。ここまでは一緒だ。
またあんな化け物が出てきたら…。その時は殺ってやる。
「ハーイ。」
「あら、遅かったわね。待ってたのよ?」
現れたのはゆったりとしたローブを来た妙齢の美女だった。
ー レイジ ー
杜の魔女っていう人の所に魔法を習いに行くことになったんだけど、
途中でナイトメアに遭遇してトラウマ級の悪夢を見せられた。
怒りに任せて、全力で殺ったんだけど、マナ酔いで動けなくなった。
やっとの思いでたどり着いた家から出てきたのは妙齢の美女さんでした。(今ここ)
「遅かったじゃない。待ってたのよ。」
「申し訳ない。途中でナイトメアに襲われまして。」
「あら、それは災難だこと。」
父さんと、魔女さんが話している。
ゆったりとしたローブを着込んでいるのに、なまめかしい印象を見る人に与える。
隠しているからこそ、におい立つエロチシズムがそこにはあった。
それに何より、悪夢の時と違って本当に良かった。
「よかった。オカマじゃない・・・。」
「あら、生まれてこの方、オカマに間違えられたのは初めてよ。」
何がおかしいのかコロコロと笑う。
おっと、お世話になるのだからちゃんと名乗らなくては。
「初めまして杜の魔女さん。ロイド・ハーシュといいます。宜しくお願いします。」
「はい、初めまして。私はディナ。杜の魔女で通ってるけど、今後は先生とでも呼んでもらおうかしら?」
「はい、ディナ先生。宜しくお願いします。」
「さて、宜しくお願いされちゃったけど、本当に私に習うの?」
「ああ、頼みます。いろいろと事情があって町の道場で習うわけにはいかないんで。」
「ふうん。どんな事情か知らないけど、そんな困難なんか鼻で笑えるくらい厳しいわよ?」
「それでも、構いません。」
父さんたちが何やら好き勝手言ってくれてる。
いや、そこは構おうよ。習うの俺なんだけど。
鼻で笑えるくらいの厳しさってどんなだよ。
「そう。じゃあ契約書を書いてもらうわよ。」
「ハイ、これ。まずはお父さんの方に。もし、修行中に死んでも文句は言いません。って内容。」
「分かった。」
「はい、ちょっと待とうか父さん!」
「なんだロイド。先生の前で恥ずかしい。」
「いやいや、生き延びるための修行で死んだら元も子もないでしょうに。」
「だが、修行とはそういうものだ。」
あれー?俺がおかしいのか?
息子の死亡許可証にサインをする父親っておかしいよな?
「はい、じゃあ今度はロイドくん。先生の言うことには絶対服従ですって内容。」
「いや、ちょっと待ってください。魔女相手に絶対服従って死んじゃうでしょ?」
「ロイド!なんださっきから?師の言うことは絶対なんて当たり前だろう?」
すいません。こいつ緊張しているみたいでとかそんなノリで俺に拳骨を落とす父さん。
何なんだ?
ハッ。もしやマインドコントロールか?もしそうなら逃げなくては!
「スイマセン。ぼくよくわからない契約書にサインをするなってじいちゃんの遺言で!」
ダッっと走り出した俺。
しかしあっさりと父さんに首根っこを捕まえられてしまう。
「いや、お前のじいちゃん、お前の生まれる前に死んでるから。」
結局自分の奴隷許可証にサインをさせられてしまった。
「はい、結構です。じゃあとりあえず、今日から10日間ここで寝泊まりしてもらうわ。」
「えぇ!?泊まり込み?」
なんだそれは。こんな美女と一つ屋根の下とか。入会特典すごくないか?
「それじゃあ、宜しくお願いします。」
そう言って帰っていく父さん。
後にはディナ先生と混乱している俺が残されるだけだった。
「さて、じゃあ修行を始めるけれど。強化系の事はどのくらい知っているの?」
「はい、放出系が取り込んだマナに世界の意思と錯覚させて、世界を書き換えるのに対して、強化系は己の肉体を世界と認識させて、肉体(世界)を書き換えることを言います。」
「あら!その辺の話は禁忌扱いなんだけど。よく知っていたわね。」
アッやばい。管理人さんには内緒って言われてたんだっけ。
「い、家にあった古い本に書いてありました。」
「そう…。よく勉強しているわね。」
ホッ。なんとかごまかせた。
「そう。いまロイド君が言った通り、世界を極小規模書き換えるのと、己の肉体を書き換えるのとではリスクが全然違うの。最悪、魔法を解いても後遺症が残ることもあるから十分気をつけなさい。」
「はい。ディナ先生」
「それじゃあ、実践に入るわね。とその前に準備をしなきゃ。ロイド君こっちに来て。」
「?はい先生。」
「うん。ちょっと動かないでね。」
そう言って先生は、おれの、目を、つぶした。
「がああああああああああああああああああ!?ぐうううううううあああああああ」
途端に真っ暗になる世界。
転げまわる俺に、ディナ先生いや、くそ女は言う。
「これから10日間君には盲目で過ごしてもらうわ。」
「それの、どこが修行だ!くそ女ああああ」
「あら、ひどい。これもれっきとした修行よ?」
「普段の人間は目に頼りすぎている。それを強制的に奪うことでほかの感覚を伸ばす修行よ」
「だからって目をつぶすとか何考えてやがる!?」
「ふふ。地が出てるわよ。そうね。最終的には自分の目を再生させるところまでが第一段階かしら?」
こうして、俺の暗闇の中の生活が始まった。
オカマのままで書き貫くことができませんでした。
ヘタレな作者を笑ってください。




