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LIU:2016発目の弾丸は君がために  作者: ウサギ様@書籍化&コミカライズ
第三章:セクシーブックハンター外伝 すごいよ!!ミミミさん
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ブックハンター登場 3-2

「問題はさ、侵入が出来るかってことと、それからどうやって本を見つけるかってことだよね」

「まあ、逃げるだけならそう難しくはないな」


 最悪、二人合わせても110kgそこそこだろうから俺が背負って逃げられる。 その程度なら背負っていてもそこらの人よりかは速く走れることは間違いない。


「侵入する方法なら心当たりあるよ。 鍵は水元も開けられるでしょ?」

「まぁ出来るが、その言い方だと二手に分かれるのか? それは避けたい」

「ボクと片時も離れたくないと」

「危険を負わせたくはない」


 微妙そうな表情をするミミミとシドを見ながら首を横に振る。


「やはり、二人には待機してもらいたい。 一人でやれると思う」


 一人でなら目立たない。 それに一応、足音を消す歩き方や隠形の基礎程度は出来るので、だいたいの場所の予想が出来た今は下手に三人で動くよりかは一人の方がいい。


「ん、でもさ、仕事はボクたちと協力してしろってことなんだよね」

「それは俺の独力で可能か分からなかったからだろ」

「それなら、水元が報告して人を雇うなら手伝ってもらうなりじゃない?

実際、独力で可能かもしれないところに人をわざわざ確認もせずに寄越すって珍しいし、一人が二人や三人になってもあまり出来ることは変わらないわけだし、あれでしょ人と協力出来るかのテストみたいな」


 やろうと思えば、僕とシドだけでも出来だろうしさ。 そう付け足したミミミの言葉を否定する。


「俺は組織の中で嫌われているからな。 初めから協力がどうとかは期待されていないはずだ」

「だからこそだよ。 わざわざ組織? の人間ではなくて外部に委託するって、変な話だし。全員が全員に嫌われているわけでもないなら、今まで測れなかった協力することが出来るかどうかを確かめるつもりかもよ?

まぁ、楽出来るならボクはそれでいいけどさ」


 一理あるが、一人で出来ることを数人でするのは協力でもチームワークでもないだろう。


「何を急いでいるんだ? 水元は僕らが何を出来るかも知らないわけなんだから、一人の方が手っ取り早いとも限らないわけだろ」


 彼等の言葉に何度か頭を掻いて、頷く。


「そうだな」


 冷静さを欠いているのもあるが、生来の気質か、あるいは育ちの物か、人との協力が苦手らしい。

 あちらの組織にいた時にもよく師に諌められたことを思い出し、もう数年経っているのにあちらのことを忘れられないのかと溜息を吐く。


 本質はあちらに置いたままだ。 今の居心地の悪さもミミミやシドが普通に接してくれているからだろう。


 利優や鈴にはなんだかんだと本性を知られているので、避けられるところは避けられるからな。


「とりあえずロリ元の奢りでレストランでもいくか」

「一応言っておくが、別に童女趣味があるわけじゃないからな」

「ロリを待ち受けにしていて?」

「……いや、これは同年齢だ」


 ミミミは訝しげな目を俺に向けて何度か頷く。


「妄想が過ぎるぞ」

「妄想ではない」

「……水元、流石にお前の腕力でロリコンだとあれだよ。 射殺されても文句言えないレベルだ」

「射殺されたら文句言えねえよ」

「水元って幽霊とか信じないタイプ?」

「信じる奴でも幽霊にまでなってやることが文句じゃないだろ、祟れよ。 少しはアクティブさを見せろよ」


 ミミミは髪を少し整えてから立ち上がり、遅れてシドも立ち上がる。


「よし、行くか」

「俺は適当に売店でも行って食うから、二人で行け」

「なんだ水元。 あれか、反抗期か」

「いや、少し頭を冷やしたい」


 俺がそういうが、中二病と一言で括られて呆れたような目で見られながら連れていかれる。

 レストラン内の騒がしさに苦手意識を感じながら、味を感じられない食事を摂る。


「とりあえず、疲れたし明日の朝には帰る?」

「……今日帰らせてくれ」


 朝帰りすると利優にあらぬ誤解を招きそうなので、朝に解散したら一人で何処かで時間を潰す必要が出てくる。


「コミュ障め。 パンツを見るとき以外に積極性が皆無か。 お前はシドか」

「僕を巻き込むなよ。 流石にパンツと言われても振り返って転けたりしない」

「してたじゃん」

「あれは転けた水元を見てただけだ」


 呆れたように見られ、誤魔化すように残りの食事を全て食べる。

 少ししてから、一つのことを思い出す。


「そう言えば、個人の依頼とかもいいのか?」

「ん、ハントのこと? もちろんだけど、ちゃんとお金はもらうよ。 どんなエロ本がほしいの?」

「……………………いや、昔に比べ読んだ小説なんだが、タイトルや著者が分からなくてな」

「間がすごいな」


 そもそもそういった本はいらないが、もし持っていたら利優や鈴が部屋に入った時に見つかると困るので持つことはできない。 そうでなくともいらないが。


「まぁ、時間はかかるし確実じゃないよ? どんな官能小説?」

「官能小説ではなく、ファンタジーだな。 結構大きいサイズで、雑誌より小さく文庫本より大きい……」

「四六判?」

「多分そうだと思うが、古そうな本だったから、違うかもしれないな」

「小説なら、普通に印刷されてるぐらいの時代のならサイズはだいたい一定だよ」

「茶色い表紙だったな」

「絵とかは?」

「特になかったな。 うろ覚えだが、挿絵もなかった気がする。 男が竜を倒したりする話で、言葉の使い方が翻訳のようだった」

「……うーん、話を聞くと……個人でやってるっぽい感じかなぁ。 海外の気に入った小説を個人で翻訳してっての、してる人結構いるし。 翻訳元を探すにしても、多分表紙も挿絵も大きさも何もかもが違うだろうから、探すのは難しいね」


 そりゃそうか。 などと思いながら二人が食べ終わるのを待つと、ミミミが首を傾げる。


「そういうの興味なさそうだけど、何か思い出の品?」

「ああ、昔、十年ほど前に住んでいた家に置いてあってな」

「引越しの時に持って行かなかったのか?」

「ああ、色々あって」


 ミミミは店員を呼んでデザートを注文する。


「まぁ、無理ならいい」


 どうせ手元にあったとしても、読むわけでもないだろう。 以前あったものを手に入れても、以前のように戻れるわけではなく、普通になれるわけでもない。


「いや、難しいって言っただけで、出来なくはないよ。 凄腕だからね」

「出来るのか?」

「時間はかかるけど、絶対に無理でもないかな。 その特徴がないのも特徴だしね。

わざわざ外国のファンタジーを個人で読んで、翻訳までする人って珍しいからね。 特に古いエンタメ系だと。 SFとか文学とかのは結構いても」

「そういうものか」

「水元が個人出版って分からなかったのを考えると、よほどちゃんと作れてたんだろうね。 そうなると複数作は作ってるだろうし、シンプルな作りにしてるなら他作もそうだと思われるからね」


 ミミミは自信げな表情を作りながら、指をピンと立てる。


・個人で外国のエンタメファンタジーを翻訳している。

・過去作があり、それらもシンプルな作りである。

・年代は10年以上昔である。

・茶色い表紙で挿絵などはない、個人出版のものである。


「──まぁ、あくまでも仮定でしかないけどね。 商業で子供でも読める本ならだいたい挿絵あるだろう。 みたいな曖昧な仮定してるから。

それでもだいたいこれであってるだろうから、多分あとは適当に探せば見つかるかな。 数も少ないだろうから在庫があるとも限らないというか、見つかっても手に入らない可能性は高いけど」


 それだけ言って、ミミミはデザートを口に含んでいく。

 少ない情報しかないはずなのに、一瞬でそれから特定が出来るところまで纏めたことに感嘆しながら、侮っていたことを自覚する。


 元の……能力やら戦闘、あるいは殺人をするより以前の幸せだった過去を多少なりとも取り戻す。


 それが現実的なことになると「じゃあ頼む」などと気楽に言えるものではなく、デザートの二つ目を頼んだミミミを見たまま押し黙ってしまう。

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