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LIU:2016発目の弾丸は君がために  作者: ウサギ様@書籍化&コミカライズ
第二章:不良と魔女と時々ゴリラ
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白熱! 歓迎会! 2-5

 一時間半程経過してから、やっと利優と野空が教科書を机の上に置く。 あと半分ほどしか居られる時間はないが、いいのだろうか。


「あー、本当蒼は教えるの上手いな。 かなり捗った。 別の教科やるか」

「……まだ分かってないところばかりだろ。 まぁ、いいけど」

「えへへ、蒼くん上手ですよね。 ボクもいっつも家で習ってるんですけど、授業よりも分かりやすいです」


 利優はそう言って笑いながらこっちを向く。

 その言葉に反応したのは、話していた横野ではなく、野空だった。


「え……家で?」


 利優が「あ」と口を塞いで、俺の方を見る。

 まぁバレることはあるだろうと言い訳も既に考えていたので、それを話す。


「ああ、利優の親に頼まれて、防犯代わりに一緒にいるんだよ。 利優のような小さい奴が一人暮らしは危ないだろ」

「あー、そうだな。 でも、なんか同級生で同居ってエロいな」

「エロくねえよ」


 なんだかんだ言って、二ヶ月経っているのに利優の下着も見たことない。 いや、そりゃそうなのかもしれないし、特に期待していたわけでもない。

 野空がヤケに静かに俺の方を見ていて、気まずさに口を開く。


「……親戚だし、幼い頃から一緒にいたからな。 ほとんど兄妹みたいなものだから、特に違和感もなかったな」

「ふーん、そっか。 じゃあ、二人が付き合ったりとか、ないんだね。 ちょっと安心しちゃった」


 野空の言葉に利優は野空から目を逸らして、俺の方を見る。


「え、あの……それは……」

「ないよ。 彼女を作るつもりもないからな」


 利優の言葉を打ち切るようにそう言って、暗に野空と交際するつもりはないと伝える。

 誤魔化すように教科書に目を向ける。


「わり、ちょっと勉強に飽きたから走ってくる」


 横野はそう言って立ち上がって、勉強していた本やペンを置いて立ち上がり、外に出て行った。 ……あいつ、逃げやがった。


「……べ、勉強、しましょうか」


 まだ一切進んでいないノートに目を向けて、利優は言う。 俺はそれに便乗して頷いて、無理矢理話題を変える。


 野空も俺を諦めてくれたのか、何か言うことなく勉強を始めて、やっと一息つくことが出来た。


 息を吐き出して、棚に何かのアニメのキャラクターなのか、フィギュア……人形が目に入った。

 他の物に比べて異彩を放っており、周りにアニメやゲーム、漫画といった物がないからヤケに目立つ。


 それについて尋ねようと思ったが、一瞬横野の言葉を思い出して、もう一人の幼馴染の事が頭に浮かぶ。


「あ、蒼ー、ここ教えてー」


 面倒くさいと思いながらも教えて、時々利優に呼ばれて教える。

 微妙に気まずい中、二人に教える。


「蒼ー」

「蒼くん」


 同時に呼ばれて、一瞬だけ迷ったあと、面倒を回避するために野空の方を先に見ようとして、机の下に入れていた脚が小さな手で抓られる。


 仕方なく利優の方を先に見てから、野空の方を教える。 確かに横野の方がまだ勉強が出来るらしく、頻繁に呼ばれて自分の勉強が出来ない。 まぁ必要もないが。


「……横野戻ってこないな」

「……そうですね」

「……まぁ、しばらくは戻ってこないと思う」

「……そうか」


 まぁ、気まずい空気から抜け出した奴が戻ってくるのは、気まずい空気がなくなったあとだろう。


「あの、あのフィギュアのキャラ、ボクも好きなんですけど、葵ちゃんも好きなんです?」

「いや、友達からもらったから知らないかな」

「あっ、そうなんですね。あはは……」

「……最近会ってないんだけどね。 フィギュア? とか、そういうの好きだから、利優ちゃんとは気が合うかも」


 また勉強に戻って暫くしていると、外が暗くなってきたので、教科書をしまって野空に向かって話す。


「そろそろ帰るな。 そろそろ暗くなってきたから」

「んー、また明日くる? 休みだし」

「いや、用がある」


 利優も片付けて立ち上がって、野空にぺこりと頭を下げる。


「あの、今日は楽しかったです。 また一緒に勉強しましょうね」

「うん。 またね。送ろっか?」

「あ、蒼くんがいるから大丈夫です」


 野空は微妙そうな表情をして家の外まで送ってくれ、少し薄暗い道を利優と一緒に帰る。

 やっと気まずい空気から解放されたことで肩が楽になり、軽く解すように動かした。


「ん、蒼くん、女の子だったら誰でもデレデレしてません?」


 利優は服の袖を引っ張って、不服そうに口を尖らせて言った。


「してない。 結構ハッキリ断っただろ」

「んぅ……でも、最初パンツ見てましたし、ボクよりも先に教えてあげようとしてましたし」

「見てないよ。 利優より早く教えようとしていたのは、そっちの方が角が立たないと思ってだよ」

「じゃあ、葵ちゃんより、ボクの方が好きです?」

「……そういうのは、せめて俺を好いているなら言ってくれ」


 これで両想いであれば、利優の手を掴んで引き寄せてやれるのに。

 今の利優の嫉妬は、そういった意味ではないだろう。


「……先輩や、鈴ちゃんや、葵ちゃんみたいな気持ちだったら、いいんですか?」

「ああ、友情とかではなく、恋慕とかそう言った……」

「……でも、三人とも別々じゃないですか。 好きって気持ちでも、全然違う「好き」じゃないですか。 なら、ボクのそれでもいいじゃないですか」

「俺は、利優に後悔してほしくないだけだ」


 その場の感情でばかり動いている俺が言えることでもないけれど。

 利優は俺の顔をジッと見つめて、俺は口を開くことも出来ずに目を逸らした。


「先輩って、いつも勝手です」

「悪い」

「他の女の子を見てデレデレしますし」

「してない」

「してます」

「……はい」


 利優は不満そうに続ける。


「先輩がボクのことが大好きで仕方ないのも、だからというのも、分かってるつもりです。

先輩の気持ちは分かってますけど、なら変に他の人を見たりしないでください。 前にも言いましたけど」

「……俺は利優が好きだ。 そもそも、俺は乗り気じゃなかっただろ。 今回のも」

「パンツ見ようとしてましたし」

「偶々目に入っただけだ」

「先輩、パンツ好きですよね」


 首を横に振る。

 家に着いたので、利優に開けてもらって中に入る。

 いつも通り手分けして風呂や食事の用意をしようとしたところで、利優が「あ」と声を出す。


「先輩、あ、蒼くん。 買い物行くの忘れてました……」

「買ってこようか?」


 利優はパタパタと動いているので、置いていた財布を手に取ってから少し待つ。


「ん、一緒に行きますか?」

「一人で行かせられるわけないだろ」

「えへへ」


 機嫌も直ったし、怯えられてるのもなくなったかな。 と一息吐き出す。


「蒼くんは、もっとボクに頼ってくれてもいいんですよ?」

「十分頼りにしている」


 少なくとも、マトモな人間でいられているのは利優がいるからだと思う。


「蒼くんは、かっこつけですよね」

「利優に惚れられたいからな。 格好も付ける」

「えへへ、かっこ悪いです」


 外は暗い中、二人で外に出る。


「明日、ボクの実家に来てくださいね」

「あれ、本気で言ってたのか」

「ん、ボクはいつだって本気ですよ。

明日は蒼くんの歓迎会をしてあげます!」


 すごく気まずいから、正直行きたくない。

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