異能対策室室長による異能力者対策講座①
キャラクター紹介
異能力者No.1
氏名:水元 蒼
:一人目の対策講座にしてはなかなか対策の難しい人だ。
能力の出力や有効範囲に大きく関わりのあるレベルは「4」と、能力者と呼ぶことの出来る最低レベルの力しかないけど、それは彼の攻撃能力や射程が短いことを表すわけではない。
主な能力の使い方は、能力により周りを観測し、能力により照準のズレを修正する精密射撃であり、それは並大抵の人間では対応や対策が難しいのが事実である。
能力者であってもそれに変わりはなく、戦おうと思うならば、まず銃で撃たれても大丈夫なようにならなければ勝負の土俵に上がることも出来ない。
ここまでは一般的な「銃を操る能力者」全てに当てはまることなので、彼個人への対策を後述しようと思う。
彼を評価する上で、戦闘に長けた「銃を操る能力」や、非常に高い干渉深度に目が行ってしまうが、彼の特筆すべき点は能力ではない部分だろう。
能力者対策講座という名前の文章で何を言っているのか、といった話の流れではあるけれど、事実として彼は多くの任務を遂行する上で八割強は能力を使うことがなく(弾丸が減ることがなく)終わらせている。
異能対策室でも時々いる、言ってしまえば能力がなくとも「素で強い人間」の代名詞のような存在だ。
単純に身体能力が高く、武術的な心得があり、戦闘における心構えや戦術を持っているような人間が「素で強い人間」と言える。
分かりやすくまとめると、彼の能力はこのような感じになる。(A〜EでAが高く、Eが低い)
能力出力:E
能力精度:A+
身体能力:A+
精神強度:E+
随分と偏った感じだ。
なので彼の弱点としては、出力の低さに目をつけて、銃弾が通じないぐらい硬くなる。
あるいはひたすら煽って挑発に乗ったところを不意打ち。
といったように戦えば高い確率で勝利を収められるはずだ。
いずれにせよ、まともに相手取れば非常に厄介な相手なので、直接戦闘は可能な限り避けて(避けにくいならば逃走をお勧めする)、心理戦や頭脳戦に持ち込む方がスマートであると言える。
異能力者No.2
氏名:塀無 利優
:No. 1で紹介した水元とは対照的に、レベルは「6」それも限りなく「7」に近い(実質は7であると言える)非常に高出力、広範囲、高性能な能力を持っている。
干渉深度の浅さにより、あまり細かい能力の扱いは得意としておらず、全体的に大味で単純なことしか出来ないことが特徴だろう。
「鍵の能力」という話だが、実際には「鍵」と「錠」の両方に作用することは大切だ。
能力の出力と精度が反対だったように、素での強さも対照的であり、酷く弱い。
「素で強い人間」のように種別で括るならば「能力頼りの人間」と言い表すことが出来る。 能力さえなければ普通の子供と変わらない程度の力だ。
対策をするなら、可能な限り室内戦や市街戦を避けることを強く勧める。 彼女の能力は逃げることや閉じ込めること、誘導することに向いていて、上手く立ち回らなければ室内に一人で閉じ込められることになるだろう。
閉じ込められたところで、彼女は18時間以上寝ずにいることは出来ないので、しばらくゆっくり寝るなりして過ごしていれば、いつかは錠の締められ方がゆるまっているはずだ。 その頃には逃げられているだろうが。
この弱点も「能力頼り」と言える所以だろう。
また、どうしても市街戦を行うのならば彼女に近づくことが出来ればほとんど勝利と言える。 閉じ込められることさえなければ、普通の少女と変わらない。
彼女の能力を表すとしたらこのようになる。
能力出力:A+
能力精度:C-
身体能力:E-
精神強度:D
総評としては捕まえたり殺したりは難しいが、こちらが負けることも同様に考えにくいことである。
だが、その事実は彼女が一人でいる時のみであり、彼女の能力の本質は彼女が多人数の仲間といるとき、それも彼女の仲間が多ければ多いほどに厄介さが増していくことであるため、単に彼女の対策講座という議題においては彼女への対策を行うことが出来ていないことを知る必要がある。
異能力者No.3
氏名:鈴鳴 鈴
:能力のレベルも干渉深度もそこそこであり、身体能力は低いが頭脳は優れており、能力も治癒という典型的な「後方支援型」能力者であると言える。
彼女が出来ることはサポートだけであり、直接的な戦闘ではいわゆる普通の人間にも大きく劣っていることを考えれば、No. 1〜2のような相手取ることを前提とした対策ではなく、彼女が後方に控えている他の人との戦闘への対策を考える方が建設的だろう。
あるいは指揮のようなことをさせれば才覚を発揮する可能性もあるが、彼女を扱う室長としての身となれば指揮の真似事をさせる気にはなれない。
何故ならば彼女の持つ「ドナー型肉体操作能力」は現在の科学では不可能である部位や臓器組織の再生が可能な、非常に稀有且つ価値の高い能力であるからだ。
彼女の肉体と交換することになるので限りがあり、彼女の人権を考えると禁止にする他ないが、もし私が人権や倫理、道徳を一切無視し、彼女がそれに従うのならば、何処かの権力者の身体と彼女の身体を丸々交換して組織や国を秘密裏に乗っ取ることすら可能である。
尤も、それをすれば能力の反動がどのように起こるかが分からず、危うい状況になることは間違いないが。
ともかく、彼女に対する方法はいくらでもあるが、逆に彼女が全てを捨ててくれば、一国すらも壊せるだけの能力であると言える。
能力出力:-
能力精度:B+
身体能力:D
精神強度:B-
異能力者No.4
氏名:神林 炎
:異能対策室所属の能力者ではないのであまり語ることは出来ないが、これもまたNo. 1と同じく「素で強い人間」という括りに入るだろう。
能力は「テニスを操る能力」であり、テニスボール、テニスコート、ラケット等、テニスに関するものならば広範に渡って作用するため、存外に汎用性は高いと言える。
No. 1の銃を操る能力も、実際は拳銃だけでなく弾丸にも作用する。 No.2も上記の説明通り鍵と錠に作用する。
そういう複数の物に影響を与える能力は珍しくないが、その中でも非常に多数であり、違う材質や性質のものに作用する。 これはNo.3とは違う意味で希少な能力である。
このテニスを操る能力自体は強さもなければ汎用性にも欠けるが、この能力を知った私は年甲斐もなく心が揺れ動いた。
単一の物ではなく、大きな括りとしての「関連性」を丸ごと中に収めた能力が存在するということは、もしかしたら「武器」を操る能力や「戦場」を操る能力のようなNo. 1の「銃」を操る能力という強力な能力の上位互換的な能力もあり得るかもしれない。
能力としての有用性は高くないが、希少であり、何よりも能力の「可能性」を示してくれた能力だ。 これから能力の観察や実態の把握に生かしたいものである。
能力出力:C
能力精度:E
身体能力:B+
精神強度:C




