魔法使い
この生意気なガキ、名前はラヴェルというらしい。
あの言い合いの後から私とは一言も言葉を交わさないし目も合わせない。
ソファに座って団欒している今でも、レオナルドには応えるが私は一切無視だ。
「ごめんね。悪い子じゃないんだ。」
「育て方を間違ったな。親として失格だ。」
「だから僕の子供じゃないって。
お腹すいたよね?何か作ってくるよ。」
レオナルドは肩を落とすと、料理をするのか台所へと向かった。
暖炉の炎がパチリと爆ぜる。
「何が狙いだ。」
静かにラヴェルが言った。
「どういうことだ?」
「お前は、先生が鳥使いだから近づいたんだろ?」
ラヴェルは私を睨みながら立ち上がる。
今にも殴りかかりそうな勢いだ。
「オレは先生の弟子だけど、先生を害悪から守る役割もあるんだ。
先生は騙せても、オレは騙されないぞ。」
ぞわぞわと気味の悪い風が、部屋を包むように回り出す。
辺りの置物がカタカタと揺れ、紙類はバサバサと音をたてて落ちる。
これはなんだ?
何が起こっている?
「去れ!野蛮人!!」
ラヴェルがそう叫んだ途端、部屋中のものが私に襲いかかった。
「チッ」
私は置いてあった刀に手を伸ばすと、抜き際に体を捻って回転させ、その遠心力を利用して刀と鞘で飛んできた物を一気に叩き落とした。
「な、なんだと?!」
ラヴェルは肩をふるふると震わせ、私を睨みつける。
地面に落ちた物の破片が、カタカタと音を鳴らして揺れる。
おいおい、もうこんな細かくなったものを叩き落とせないぞ…。
顔が引きつるとはこの事だ。
「そうか、お前は剣術使いか。
だが、残念だったな。オレも使い師だ。」
「使い師?」
「そうだ!オレは、魔法使いだ!!!」
ラヴェルの叫びと共に、地面に転がっていた破片の先が一斉に私の方を向いた。
ヤバい。
そう思った時、
「ラヴェル、その辺にしておきな。」
レオナルドの声が、辺りを静寂にさせた。