梅田地下帝国
「梅田地下帝国」。
これは別に秘密結社の名前でも何でもない。
「生粋の地元民」(ネイティブ・オオサカン)以外を困惑の極致に至らしめる、無情なまでに広大な梅田近辺の地下街の通称である。
ここは年がら年中どこかが工事をしており、通いなれた道が翌日にはいきなり閉鎖されて新ルート開拓を余儀なくされて戸惑う人間を、毎日のようにひっきりなしに量産するダンジョンである。
南海トラフがひとたび身震いすれば、逆巻く淀川が怒涛をなして流れ込み、水中迷宮と化すこと請け合いである。
梅田地下帝国は、大阪人が地震が起きたときにいたくない場所、トップ3に入るであろう。(もっとも、ボーリング業者によれば大阪市内の地下は、老朽化した水道管の破損なども相まって、相当にスカスカになってしまっており、地上にいたところで地面が陥没する危険性大、だそうなのだ。ちなみに、大阪市営地下鉄・長堀鶴見緑地線の上が特にやばいそうである)
実質的な広さ深さにおいても、やがて来たるべき大災害で予想される被害においても、大阪トップクラスの地下空間。
ここを縦横無尽に巡り歩くことができたならば、少なくとも梅田の地理に関しては「大阪人オブ大阪人」の称号を与えられてしかるべきだろう。
なお、ネイティブ・オオサカンでない人も、別に恐れる必要はない。
もし道がわからなくてオロオロしてしまったら、とにかく誰かに声をかけてみよう。
あまりに早足で行き過ぎるので、急いでいるのだろうか、だとしたら申し訳ない、と思ったとしたら、「気にするな」と言わせていただこう。大阪人は元々、とても足の速い人々である。ある学者が平均値を計算したところ、東京人が秒速1.6メートルで歩くのに対して、大阪人は秒速1.7メートルで歩行していたそうだ。これはシンガポールと並んでアジア屈指の速度であり、世界においても上位にランクインする競歩力である。
大阪人は忙しいから急ぐのではない。ただ早く歩くのが習慣なのである。予定の時刻には余裕で間に合うのに、眼前のホームに電車が着いていれば、即座に全力ダッシュして滑り込みたくならずにはいられない。これは大阪人の性である。
ギリギリに滑り込んで「得した!」と喜ぶのは、もはや本能に近い習性である。
そうまでして稼いだ時間を何に使うのかというと、別に考えてはいない。本能だから仕方ない。
もっとも中には、こうして余った分の時間を、迷える子羊たちの導きにあてている大阪人も存在する。
いや、別に聖書研究会の勧誘などではない。
梅田地下帝国というこのダンジョンで途方に暮れる人々を、目的地まで案内するというだけである。
ネイティブ・オオサカンは、途方に暮れて立ち尽くす人々を見たら、ほぼ必ず「どこ行きたいん?」などのように声をかける。それに答えさえすれば、もはや「迷える子羊」(ストレイ・シープ)は存在しない。
このような事例は、大阪人の優しさから生じるのかもしれないし、あるいはずっと立っていられたら邪魔だ、という合理的な理由から生じるのかもしれない。
が、何はともあれ、声をかけるのがためらわれたら、声をかけてくれるのを待っても良いだろう、と言える程度には、大阪人は気さくで世話好きである。良い意味でお節介である(中には悪い意味でお節介な人ももちろんいるが)
さて、一人の「大阪のお嬢さん」が、阪急電車から二階中央改札口へと降り立った。
彼女は深紅色の綿サテン地に、共布のフリルとベージュのチュールレースとがあしらわれた、西洋人形のようなドレスを着ている。正確にいうと、生成り色のブラウスの上に、深紅色の膝丈のジャンパースカートを着ている。長い栗色の髪の毛には緩くカールがかけられ、両サイドに作られた三つ編みを中央でまとめて、その交点には同じチュールレースを土台に、深紅色のバラのコサージュとショコラ色の繻子リボンを飾った、円形のヘッドドレスをつけている。トーションレースのハイソックスも生成り色、合わせる靴とバッグはショコラで、いわゆる「クラシカルロリータ」では標準的な色合わせのコーディネイトである。
彼女は、足首をストラップで留めているとはいえ、それなりに厚底の靴で、踊るように滑らかな動きで紀伊国屋書店前の人ごみをすり抜けた。どれだけ人と触れ合うことなくスムーズに歩きぬけられるかは、ネイティブ・オオサカンを見分ける一つの指標になる。彼女の動きは紛れもなくネイティブ・オオサカン、もしくはそれに準ずる者の動きであった。
紀伊国屋書店前、いわゆる「ビッグバン前広場」から一段エスカレーターを降りた正面の、ナチュラルコスメを豊富に取り揃えた店へと足を向ければ、偶然でなければ類友であろうことが一目でわかる先客がいる。
ハンドクリームを熱心に見分するその客は、襟や袖を細幅のチュールレースで縁取った生成り色のハイネック・ブラウスに、裾が二段フリルになったハイウェスト・タイプのロングスカートをまとっていた。スカートは、夜空のような深い紺色をベース・カラーにした、レジメンタル・ストライプ柄だ。同じ布のシンプルなボレロを羽織り、首元にはカメオを使った三連パールのネックレスをしている。おそらく長いだろう黒髪は、お団子状に編み上げられている。そして、その周囲にはヘリオトロープと呼ばれる明るい赤紫色のバラのコサージュが、大小交えて飾りつけられていた。弦に薔薇の透かし細工が入った優美な眼鏡の奥には、切れ長の目が悪戯っぽい光を浮かべている。
「おはよう、真田。今日はMary Magdaleneのエロディドールジャンパースカートに、ロゼットヘッドドレスか。似合うとるやん」
ストライプ柄でドレスアップした、眼鏡の先客が、にやりと笑う。
「遅くなりました、前田さん」
別に申し訳ないとは思っていなさそうな顔で、深紅の真田嬢は前田嬢に軽く会釈した。
「別にえぇよー。駅着いたら電車来るとこやったから、思わずダッシュして一本早いのにのってしもてん」
「ああー、ありますあります」
うんうん、と互いに納得しあう大阪人が二人。
「それにしても、私のあげたジャンスカ着てくれとるとか、なかなか気が利いとるねぇ」
「前田さんのは、Victorian maidenのレジメンタルストライプ・シリーズですか。こないだ買ったやつですよね?」
「うん、一緒に行ったときに買うたの。似合う?」
「似合ってます。コサージュがネイビーじゃないのが、なんか良いですね」
「ははは、ほめ上手やな。うん、ネイビーやと無難すぎるかな、って」
「そのネックレスは?」
「これは、Innocent Worldの十年ぐらい前のやつ」
真田アヤは、ロリータ歴一年ほどの、まだまだ新米「お嬢様」である。
対する前田ユリは、ロリータ歴もそろそろ十年に達そうかというベテラン「お嬢様」である。
同じ大学に通う二人は、同じファッションを愛好する者として意気投合した。
ちなみに、ファッションのみならず、学年もユリが二つ上である。なのでアヤはユリを「前田さん」と呼ぶ。なぜ「ユリさん」と呼ばないのかというと、ユリが己を「アヤ」と呼ばず「真田」と呼んでいるから、である。
以前は「真田さん」だったのだが、親交が深まるにつれて「さん」は雲散霧消した。
まぁ、珍しくもないことである。
大阪市生まれ大阪市育ちのユリは、生粋のネイティブ・オオサカンである。そして四条畷市生まれ河内長野市育ちのアヤは、準生粋のネイティブ・オオサカンだ。その性質といわれる、馴れ馴れしいといわれるほどの人懐っこさと、物怖じしないふてぶてしさを、二人は併せ持っている。
二人が出会い、こうして「茶をしばく」仲になったのは、自然の成り行きであっただろう。
ユリは見分していたハンドクリームを元の場所に戻すと、「ほな行こか」とアヤをうながした。
二人は三番街のファッション・コートから、さらにエスカレーターで地下に降り、イングス前からホワイティを目指して歩き出す。黒山の人だかりの流れを読み切り、何の苦もなくすいすいと早足で追い抜いていく。
「あれ? 今日はいつもンとことちゃうんですか?」
NAVIO前、の表示を通過したところで、アヤがぱっちりしたお目目を、ぱちくりさせてそう問うた。うん、とユリは振り返りもせずに答える。
「平日やから、空いてるんとちゃうかなー、って」
そう言いながら、二人は曾根崎警察署のすぐ下に位置する辻まで歩みを進める。右へ折れると阪神百貨店であるが、ユリは何の迷いもなく左へと曲がる。ここを直進していけば、梅田には意外に数少ない待ち合わせスポット「泉の広場」へ続く。
もっとも、うら若きお嬢さんには、待ち合わせ場所として「泉の広場」はおすすめしづらい。
理由は、ここがナンパの巣窟だからである。
うら若き女性が一人で噴水そばに立っていれば、ケータイ片手に暇そうな顔をして柱にもたれかかったままのオジサンたちが、必ずといっていいほど声をかけてくる。いわく「お茶せぇへん?」と。
乗る乗らないは個人の自由かもしれないが、アヤにはあまりよろしからぬ思い出があったようで、「泉の広場」の表示が見えると、あからさまに不審そうな顔をしてしまった。振り返ったユリが、思わず「どないしたん」と笑ってしまうほどには。
「いや、去年ぐらいにナンパされた記憶が蘇って」
「あはは、難儀やったな」
「お茶せぇへんかって、しつこく来るから、もう蹴ッ倒したろうかと……」
おしとやかなお嬢様のような外見からは、あきらかにかけ離れたことを口走るアヤに、しかし、ユリは笑うだけである。
「蹴ったん?」
「どうにか蹴る前に待ち人が来ました」
「ははははは。誰やの、あんな場所待ち合わせに指定したんは?」
「後藤トモです」
しかめ顔のままアヤは回答する。ユリは、いかにも納得したように頷いた。
「ああ、ああ。そらしゃあないな」
「私もその頃はまだキタは詳しなかったんで……まぁ、おあいこ言うたらおあいこなんですけど」
はっはっは、とユリは笑い、安心しぃ、と一つの店の前で止まった。
「今日は美味しいスコーンを食べよう」
ユリの示した店は、泉の広場よりは少し駅よりにあった。なんとなく英国っぽい内装がお洒落なカフェである。
ドアに向かって右手が脇道に面した角にあり、四つある窓からも、店内の様子がうかがえる。ドアの左右には、通りに向けて飾り棚がしつらえられており、お洒落なデザインのティーポットや、様々な銘柄の紅茶の缶が、所狭しと並べられている。アヤが、ミニチュア・ハウスのような家型のティーポットを見ていると、ユリはそれを見て、「可愛いけど、実用は無理やな」と評価を下した。
「なんでですか?」
「ポットのボディは丸ぅないと、うまいこと対流せぇへん」
店内には空席が見えるが、店員が二人に気付くのには少し時間が掛かった。
「ここ、二人だけで回してはるから、たまに追いつかへんのやわ」
気にした様子もなくそう説明すると、ユリは勝手知ったるとばかりに店の中へ踏み込んでいった。
カラン、コロン、とベルが鳴る。
二人が席に着くと、グラスにアイスティーが注がれて出てきた。
あれ、まだ注文してないのに、というアヤの顔を見て、これお冷みたいなもんやから、とユリが解説する。
「あ、薄い」
口をつけたアヤの感想に、そら薄めたるねんから当たり前やん、とユリは笑った。
「さーて、ケーキにスコーンに紅茶と、どれにする?」
いかにも素朴な手書きのメニューを見せながら、ユリは目を細める。自分の頼むものが決定している時の、お決まりの動きだ。なるほど「いつもの」が決まっている程度には、通いなれた店なのだろう、とアヤは判断した。
市販の小さなアルバムに、ケーキの写真と解説を挟んだそれは、わくわく感をつのらせてくれる。平日限定セットだと、ケーキとスコーンの両方を味わえるようなので、ほとんど迷わずそれにした。
「紅茶はどれがオススメですか?」
「ケーキ、どれにすんの?」
質問に質問を返されるが、それはそうだ、と納得する。紅茶とケーキの相性はとても大切だ。
「ガトーショコラにしようかなと」
「ん、ほなダージリンは却下やな。ミルク入れる前提やったら、アッサムか」
ミントティーとかロシアンティーとかもあるねんけど、と呟く先輩に、まだそこまで探求していない後輩は、答えを決定する。
「いや、アッサムで。前田さんは?」
「あえてダージリンで攻める」
平日限定セット二つ。アヤがガトーショコラ、ユリはベイクドチーズケーキ。スコーンのトッピングは、アヤがホイップクリームとストロベリージャム、ユリはホイップクリームとブルーベリージャムを選択した。
なお、この店では、トッピングは追加料金を支払えば、何種類もつけることができる。
さて、注文の品が届くまでは、互いにマシンガントークを繰り広げるのが常である。
「どう? ドイツ語どない?」
本日先手を取ったのは、先輩のユリであった。
「ホンマ楽になりましたね。前期のたうち回っとったんが、嘘みたいです」
なお、アヤは1回生、ユリは3回生である。
関西では「○年生」ではなく「○回生」というのが標準である。あえて「○年生」と言う場合は、その学年に該当するカリキュラムを履修している、という意味になる。なので、医・歯・薬には6年生、その他の学部なら4年生より上は存在しない。留年した者は「4年生で7回生」のように表すのがローカルルールである。ちなみに、休学と留年をMAXまで重ねると、6年制学部では18回生、4年制学部では12回生まで実現可能である。
「ドイツ語はなぁ、あれでもフランス語に比べたらマシらしいねんけど。半端に分かるから参るんやよねぇ。ロシア語なんか一周回って逆に単位は取りやすいみたいやし」
「あ、聞きました。前期の期末テストに活用表が載っとったんですよね! あれはヒドイ」
「噂やけど、工学部のロシア語なんか、2年の後期でも『1,2,3,4』やっとるとか言うしなぁ……第三外国語まで取らされるウチらに謝れ。ホンマ、うらやめしいわ」
「ホントに、うらや『め』しいですよね」
互いにうなずきあいながら、文学部の悲哀について語り合う。
「前田さんは第三外国語、ラテン語でしたよね?」
「うん。カエサル爆発しろとか思いながらやっとったな。シンプルなんはえぇけど、主語がない! 主格・呼格・与格・対格・属格・奪格に、男性名詞・女性名詞・中性名詞、単数形に複数形……廃れるのも無理ないでアレは」
とは言うものの、ラテン語は今でもヴァティカンの公用語である。ヴァティカンの会議はラテン語で行われるため、カトリック教会で出世するためには、ラテン語の会話ができなければお話にならない。また、イギリスのオックスフォード大学では、今でもラテン語での論文提出を受け付けているという。
まぁ、そんなものは特殊な事例である。
「『来た、見た、勝った』はラテン語でなんて言うんですか?」
カエサルの超有名なセリフの一つである。正確には、セリフではなく手紙の一部であるが。
「"Veni, vidi, vici"やな。最後の『ウィーキー』は、英語の"victory"と関連させて覚えるねん」
「なるほど。まぁ確かに、言語学的には関連ありますもんねぇ」
ラテン語は直系としてはイタリア語やスペイン語などのロマンシュ系言語につながっているが、ゲルマン系言語である英語も、同じくインド=ヨーロッパ語族の仲間である。
「そうそう。ヨーロッパの言語は、関連で覚えるのが一番楽やで。英単語で三音節以上あるんは、だいたいがフランス語由来やから、そっちで繋がったりもするしな」
フランス語も、イタリア語とはずいぶん違っているが、一応ロマンシュ系である。
イギリスというかイングランドは、1066年のヘイスティングスの戦いで、ノルマンディー公ウィリアム(1世)に敗北して以降、しばらく上流階級の言語がフランス語であった時代がある。第三回十字軍で有名な、リチャード1世・獅子心王も、フランス語が母語で、英語はさっぱり喋れなかったという。
「でも、フラ語は英語と綴りがそっくりでも、発音が凶悪に違うんですよねぇ。なんで『ワイン』が『V・I・N』で発音が『ヴァン』なんだか……」
ため息をつくアヤに、無情なツッコミが入る。
「甘いで。そこは鼻母音を利かせて"vin"や」
「前田さん、無駄に発音綺麗ですよね」
「無駄言わんといてんか。おかげで海外に行ったら、必ず香港人に間違えられるねんから」
「それ、自慢になってるんですかねぇ……?」
無駄に賢そうなアホトークを続けていると、ついに注文の品がやってくる。
「うわぁ、可愛い!」
アヤは目を輝かせてスマホを取り出す。そしてこそっと撮影した。ユリは微動だにしない。
「さて、いただきます」
「いただきます」
アヤがフォークを持ってケーキに取り掛かるのとは対照的に、ユリは素手でスコーンをつかむ。
不思議そうに見つめる後輩に、一口サイズに割った欠片にホイップクリームとジャムをつけながら、ユリは答える。
「スコーンは、熱いうちの方が美味しいからな」
「あっ!」
「まぁ、ここのスコーンは冷めても美味やで。たまに持ち帰りするぐらいや」
意地の悪いチェシャ猫のような笑いを浮かべながら、ユリはスコーンを口に放り込む。
アヤも、一口目のチョコレートケーキを食べ終えると、早速スコーンを割って、クリームとジャムとを塗る。
ほっくりとした食感。バターの香ばしい匂いと、小麦粉の素朴な味わいとが相まって、何ともいえず心が穏やかになる。家庭の味、という形容を連想する、優しい味わいだ。ほんのりと甘さがあるのが、また良い。
これならば、毎日のおやつが同じだったとしても、幸せだろうと思えるほどである。
「美味しい!」
「よきかな、よきかな」
二人は満面の笑みを浮かべながら、スコーンを食べ尽くす。
ケーキは一口ずつ交換する。
「ケーキも、なんか優しい味ですねぇ」
「どれも手作りやからな。売り切れ御免やから、早めに来んと種類あれへんねんけど。土日はえらいでー」
そう、この店のケーキとスコーンは、二人の店員さんの手作りなのである。
「ホンマですか。うわ、平日バンザイ。おかわりいけますよ私」
アヤは嬉々としてケーキを平らげ、アッサムにスプーン山盛り一杯の砂糖を足して、ほうっと一息つく。
「それは次の客にかわいそうとちゃう?」
ユリもスコーンに一区切りつけて、ダージリンを堪能する。
「て言いながら、スコーンのお持ち帰りはするんですね」
「うん。美味しいもん」
しれっとした顔で、ぬけぬけとそう言う先輩に、「ダブルスタンダード!」と抗議の声を上げる。まぁ、いつものことである。美味しいものに夢中になってしまうのは、逃れ難い人間の性なのだ。
「すみません、スコーン単品で追加。トッピングはホイップクリームとブルーベリージャムで」
抜け駆けのごとき注文を出すユリに、負けじとアヤも欲望に従う。
「季節のシフォンケーキとダージリンのホット、セットで追加お願いします!」
こうして、見た目はお嬢様、中身は食欲魔人の二人は、小さな喫茶店のメニューを大いに堪能したのだった。
「はー、美味しかった。内装も可愛いし……いいお店教えてくれてありがとうございます!」
「いえいえ。可愛い後輩ですからね」
うふふ、と笑いあい、二人はパンと手を合わせて、口を開く。
「ごちそうさまでした!」
久しぶりに顔を出したら、店員さんは3人に増えていましたが。
まぁ作中時間ということで。