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第77話






「これは、すごいね」


 20体ほどのゴブリンが礼儀正しく並んでいるのを見て、サイと同じような反応を見せるフランク。


「まるで、領主軍みたいに統率が取れているね」


 野球で鍛えた統率力です。とは言えないが、おおむね好意的に思ってくれているようだ。

 ここ数日、集中的に鍛えただけの事はある。


「実力も問題ない」


 テストと称して冒険者が襲いかかってきたが全員殺さず無力化して見せた。

 街中ではできるだけ殺すなと言っておいて良かった。

 もちろん、護衛中に襲ってきたら人間でも遠慮なく殺せといってある。


「フランクさん、人が悪いですね」


「いや、すまない。今襲った冒険者達が今回の護衛で一緒になるから実力を見たいと言ってきてね」


 冒険者からすれば護衛をする人数が増えればうまみが減る。なら、実力不足を理由に俺たちを外させれば良い。

 そんな考えだろう。

 フランクとしてはより強い護衛を雇えた方がいい。

 ここでゴブリン運送(おれたち)が負けても、失う物は少ない。

 やはり、どのギルドの支部長も油断ならない奴らばかりだ。


「それでは、当日もよろしく頼むよヒビキ君」


 そういってフランクは錬金術師ギルドへと戻っていった。

 今日の目的は顔見せなので、用は済んだと言ってもいい。


「お客へのアピールも出来たし、この調子で頼むよサイ」


「ああ、とはいってもこいつらが優秀なんで俺の仕事は本当に交渉くらいしかないけどな」


 サイはポリポリと義手で頭をかく。腰には先日折れてしまった鉄の剣の代わりに魔鉱製の剣がさがっている。


**************************

 魔鉱の剣+5


効果 【属性付与】

 一時的に剣に属性を付与する事ができる

 

**************************


 魔力や魔法そのものを収納できる魔鉱の性質を利用した剣だ。

 俺が好きな魔力を込めてもいいし、空っぽの状態なら相手の魔法を吸収する、なんて使い方も出来るだろう。

 ティルさんに作って貰った業物だ。

 なんでも器用にこなすサイなら上手く扱ってくれるはずだ。


「お前がこの部隊のリーダーなんだ。自信持てよ」


「いや、不安はないよ。この戦力だ、よっぽどの事がない限り無事に依頼を果たせるさ」


 サイはこんなに楽な仕事で良いのか、と悩んでいるらしい。

 人生ハードモードがデフォルトだった時の感覚では、ここまで楽だと逆に落ち着かないのだろう。

 難儀な奴だ。


「大丈夫さ、お前なら」


「そう、だよな!!よし、帰ってこいつらと訓練するか」


 サイはゴブリンたちを連れて村に戻って行った。

 俺は、街での買い物のために別れたアイラたちと合流するために冒険者ギルドへと向かった。


「お、『全滅』、またお前にお客さんだぞ」


「また?」


「そう怪しむなよ。今度はすげぇべっぴんさんだぜ」


 シチューのおっさんはすぐに俺を待っていたという女性を連れてきた。

 なるほど、かなりのべっぴんさんだ。どことなく知り合いに似ているが他竜の空似だろう。


「やぁ、ヒビキ 数日ぶりだね。後始末も落ち着いたから遊びに来たよ」


 現れたのは灼熱竜セルヴァだった。

 よそ行き用のファッションなのだろうか、わりとカジュアルな格好をしている。


「セルヴァ、本当に来たんだな」


「ひどいなぁ、友達が遊びに来たんだ。歓迎してくれよ」


 これお土産、と『迷宮に行って来ましたクッキー』を渡してくる。


「行ってきましたって、お前の住み処じゃないか」


「だって、アイリが『友人を訪ねると言うのに手土産の1つも無いとは情けない』って言うもんだから、入口のお店で買ってきたんだよ」


「そうか、まぁ、一応ありがとう」


「どういたしまして~」


「で、なんの用だ?」


「はぁ、君は本当に私に冷たいよね。・・・実は最近教会が騒がしいから原因を調べたんだけど、邪神教が活動してるみたいでね」


「教会?なんでお前と教会に繋がりがあるんだ?」


「その言い方はひどいよ、私だって灼熱竜なんだから教会内の話だって耳にするよ。まぁ、全部アイリから教えて貰ったんだけど」


 灼熱竜と教会の繋がり。実は灼熱竜は教会にとって『神の使い』として崇められているのだ。

 教会の修道服が赤系なのはその為だ。

 灼熱竜が本当に『神の使い』なのかは灼熱竜にも分からない。

 しかし、せっかく人間が『神の使い』と崇めてくれているので灼熱竜たちも好きにさせているらしい。


「だから、教会の最新情報が手にはいるのか」


「そう、私のダンジョンには神殿もあるから教会からすごいアピールとかくるんだよね。全部アイリに任せちゃってるけど」


 やれやれ、と首をふるセルヴァ。こいつを崇めている奴が居るのかと思うと不憫に思えてくる。


「ご主人様、お待たせしました」


 セルヴァと話していると、アイラたちが買い物を終えてやって来た。

 荷物は全てルビーが持っているのだろう。全員手ぶらだ。


「あれ、珍しいなジルが手ぶらなんて」


 こういう買い物の時にはジルは一人で買い物に行きたがる。

 俺にお小遣いをねだり、その買い物の内に全てを使いきるのがいつものパターンだ。

 買い物帰りには持ちきれないほどの食べ物を両手に持って現れるのだが今日は何も持っていない。

 今もどこか上の空で俺が話しかけている事にも気がつかないようだ。


「ジル?」


 ジルの肩にポンと手をおいてジルに話しかけるとようやく反応を返してくれた。


「な、なんじゃ!?」


「どうかしたのか?」


「な、なんのことじゃ?」


 どうやら、言いたくない事らしい。


「ジル」


「なんじゃ、しつこいのぅ」


「大丈夫なんだな?」


 これ以上追及はしない。しかし、ジルが無理をしていないかだけは確認する。


「・・・主は優しいのぅ」


「ジル?」


「大丈夫じゃ、絶対に主には迷惑をかけん」


 俺が聞きたい事とはズレているが、ジルの決意に満ちた顔から理由を話すとは思えないので、この場では引き下がる。 

 セルヴァを村に招待する事になったので、買い物の追加を行った。


「エミィ、ちょっといいか?」


「はい?なんでしょう?」


 歩きながらエミィに話しかける。買い物中のジルの様子を聞くためだ。

 

「街で別れるまではいつも通りでした。ギルドに行く前に合流した時にはあの様子で、一応何があったか聞いてはみたのですが」


 なんでもない。と答えるだけだそうだ。

 一人になった時に何かがあったのだろう。


「エミィ、頼みがある」


「お任せください」


 話の内容を聞いてもいない内からとてもいい返事を貰ってしまった。

 何があってもいいように準備だけはしておこう。




 村に戻って、セルヴァの歓迎会をするとみんなに伝えて、早速準備を始めた。

 ゴブリンたちはすっかり広場での食事がお気に入りだったので今回も広場で食事にする。

 セルヴァを初めて見たメンバーはそれぞれ、


「うわーー、すごい美人さんです」


「綺麗なお姉ちゃん!」


「しゃ、灼熱竜様!?お、お祈りしなければ」


 紹介の時に灼熱竜のセルヴァと自己紹介していたので全員竜だとは知っている。

 意外にもフレイは熱心な教徒だったようで、セルヴァに膝をつき頭を垂れて黙祷している。


 ラティアが半魔族だと知っているはずだが大丈夫なのだろうか。


「ラティアは私の友達だ。教義と友情は関係ない」


 本当に柔軟になったものだ。

 

 お互いに紹介もすんで、思い思いに食事を始めた。


「友達の家でこうやってご飯ごちそうになるの、少し憧れてたんだ」


 セルヴァは嬉しそうに話し始めた。


「毎回、こんな歓迎があると思うなよ。次来たら料理を作る所から手伝わせてやるからな」


「うん、それも楽しそうだね」


「セ、セルヴァ様、良ければ私達とお話ししませんか?」


「うん、今行くよ~」


 俺に手をふりながらセルヴァがフレイ達の所に行く。


「あの竜も愉快なやつじゃのぅ」


「まったくだ」


 ジルが酒を片手に近づいてきた。どうやら調子が戻ったようだ。


「主の周りにはおかしなやつらが多いのぅ」


「お前も十分おかしな奴だろ?」


「くふふ、自覚はあるぞ」


 ケラケラと笑うジルを見てほっとした。


 食事もそこそこにジルが俺を寝室に誘ってきた。

 アイラやエミィの邪魔がないのは、まだ2人とも食事中だからだ。


「あとで、2人に怒られてしまうかもしれんのぅ」


 そんなことを言いながらやめるつもりはさらさら無いようだ。

 自ら服を脱ぎ捨てベッドに横になる。


「さあ、主よ、可愛がっておくれ」


 俺も服を脱ぎ、ジルの上に覆い被さるようにしてベッドに入った。


「くふふ、あるじぃ~♪」


 今日のジルはひどく甘えてくる。

 何度も首筋を噛まれたので俺もジルの弱点を噛み返す。


「うきゃんっ!?あ、あるじぃ、そこはっ」


 お互いに身体中を噛み合い、歯形だらけした。


「これは明日、アイラ達がむくれそうじゃのぅ」


 嬉しそうに笑うジル。


「これで、もう・・・」


 その目には何故か涙が光って見えた気がした。


 朝、目が覚めるとジルの姿が消えていた。


 


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