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extra ツギハギ少女とアイビキ勇者  中編












「テオ、やる気がないなら今日はやめるぞ」


「……ごめんなさい」


 修行の最中にジーナさんが構えをといて僕を叱ってくる。決着がついてからなら数えきれないほど注意を受けた事はあったけど勝負を途中で止められたのは初めてだ。もちろん僕のせいだ。

 ふとした時に昨日見た光景が頭の中に浮かんで慌ててしまう。そんな事をジーナさんに相談なんて出来ないから、謝ることしか出来ない。


「まあ、お前も年頃の男だしな」


「えっ!? 」


 何も話してないのになんでその事を知ってるんだろう。


「そんな不思議そうな顔をされても私にはどうする事も出来んぞ。私が知っているのは、男と言うのは時々どうでもいい事で悩むことがあるって事だけだ」


「どうでも、良くないよ」


「そうだな。今のお前にとっては大事な事かもしれん。でもそれも少し時間が立てば、どうでもいい事になるのさ」


 ジーナさんが僕の頭を軽く叩いてにっこり笑う。僕はなんだか恥ずかしくなって顔を横に向けてしまう。

 僕が顔を向けた先にはリーランちゃんが立っていた。


「ジーナ。トワ達が呼んでる」


「うん? そうかすぐに行く。テオ、悪いが今日はここまでだ」


「うん」


 母さん達がジーナさんを呼ぶなんて何があったんだろう?

 

「……」


「えっと、その」


 少し不安になったけど、そんな事を考えている余裕が無くなってしまった。

 いつものリーランちゃんならきっとジーナさんと一緒に村に戻るはずだ。

 でも今日に限って彼女は僕を無言で睨んでくる。


「ヒ、ヒビキ兄さんがいないのにどうしたんだろうね? 」


 ヒビキ兄さん達なら何かあってもみんなを守ってくれるのに。


「…ぶな」


 あっ、リーランちゃんが何か話してくれてる。ヒビキ兄さんは一緒にいなくてもこうして僕を助けてくれる。


「ごめん。聞こえないよ? 」


 呟くような声だったからなんて言っているのか分からなかったから聞いてみた。


「ヒビキ兄ちゃんを、兄さんなんて呼ぶなぁぁぁ!! 」


 今まで聞いたことも無いような大きな声でリーランちゃんが叫んだ。

 

「兄ちゃんは、あたしの兄ちゃんだ。アイラねぇも、エミねぇも。村のみんなもあたしの家族だぁ!! 」


 僕はリーランちゃんを見つめるしか出来ない。何も言えなかった。


「あんたにはお母さん達がいるし街の人達もいるでしょ。あたしからヒビキ兄ちゃんを盗らないで! 」


 言いたいことを言ってリーランちゃんは黙ってしまい、僕達の間に重い沈黙が流れる。

 一体どれだけ、ここにいたのだろう。もしかしたら一瞬だったのかも知れないが僕には恐ろしく長く感じた。

 誰かなんとかしてくれ、そう願っていたら近くの茂みが揺れるのが見えた。


「キィ」


 茂みから出てきたのは黒っぽい色をした生き物だった。

 大きさは僕の膝くらいでキョロキョロと僕らを見ている。


「なに、これ? 」

 リーランちゃんもそれに気がつき、距離を取ろうと後ずさっていた。

 すると、

「キキィッ!!」

 いきなり、そいつの背中から何かが生えてきた。まずい、こいつは魔物なんだ!!

「あっ、」

 とっさにリーランちゃんとそいつの間に割り込んで魔物に背中を向ける。

 次の瞬間、僕の背中に無数の衝撃が走った。


「ぐぁっ、……行くよ、リーランちゃん!!」


 凄く痛かったけど動けない程じゃない。そのまま気にせずリーランちゃんを抱えて村の方に逃げ出した。


「ちょ、ちょっと!?大丈夫なの? 」


 リーランちゃんが心配そうな顔で僕を見る。それがとても嬉しくて身体に力がみなぎってくる。


「大丈夫だよ。僕、身体は丈夫だから」

 本当は背中がズキズキ痛むけどリーランちゃんを怖がらせないようにできるだけ笑顔で答えた。

「でも、凄い勢いで飛んで来てたわよ」


「うん。ちょっとだけ痛かったけど、今は大丈夫。何が飛んできたんだろう? 」


「多分「木」だと思う。でもあんな木、見た事ない」


 とにかく、村に戻ればゴブリンのラル隊長や大人のバンパイア達がいる。僕はぐっ、と両腕に力を込め直して走る速度を上げた。




 村に戻るとさっき見たのと同じ魔物が沢山いた。きっと村にいるみんなの数より多いそいつらを、それでも村のみんなは圧倒している。


「グギィ、ギガァ」


「ギギ」


 特にラル隊長が指揮しているゴブリン達は1体の生き物のように連携して次々に敵を片付けていく。


「ラル、こいつが怪我した。傷を治せるゴブリンはどこ? 」


 リーランちゃんが尋ねるとラル隊長が指をさした。僕とリーランちゃんがそちらを向くとゴブリンヒーラーがすでにこちらにやって来ていた。


「流石ラルね」


 僕の背中に刺さったままだった「木」を引き抜いてゴブリンヒーラーが治療をしてくれた。「木」は先端が尖っていて等間隔に節があり力を込めても曲がるだけで中々折れない。


「イテテッ」


 傷が治るときに傷口を引っ張られるような痛みを感じて口に出してしまった。

「ごめん。私のせいだ」


「違うよ。この怪我は勲章だ」


 ヒビキ兄さんが言ってた。女の子を守って出来た怪我は勲章だって。


「でも、」


「大丈夫。もう傷も治ったから。それに家族を助けるのに良いも悪いもないよ。それより僕も村のみんなを手伝わなきゃ」


「家族……」


 村の中での戦いは完全にこちらが押している。でも、味方は多い方が良いはずだ。


「村は心配しなくて良い。もう、村の中の「バンブーヘッジホッグ」はあらかた片付いたからな」


「「バンブーヘッジホッグ」って、この魔物の名前? 」


 やって来たジーナさんはうなづきながら僕に近づいてきた。


「この近くに群生していたようだな。いきなり村を襲った理由は分からんが」


 あいつらの背中から生えていたのは「竹」と言う植物だとジーナさんが教えてくれた。さっき母さん達がジーナさんを呼んだのはこの魔物の事について相談するためだったみたいだ。


「これなら村は問題無いな。予想よりかなり早い襲撃だったがなんとかこれで解決か」


 ジーナさんと一緒に村の様子を見て回る。家や柵が多少壊れている所があるけど怪我人もほとんどいないみたいだ。


「あの、街は大丈夫かな? 」


 村の無事を確認出来たら今度は街のみんなが心配になってきた。

 もちろん街にも象の獣人のボーデンさん達がいる自警団や僕らと一緒にここまで来てくれた冒険者さん達がいる。でも心配はしてしまう。


「あぁ、問題ないだろう。巫女謹製の城壁や防御用の仕掛けが未完成ではあるが多少は稼働しているからな」


 母さん達が作っていた落とし穴とか登ろうとしたら倒れてくる壁の事だ。


「とは言え街の方に「バンブーヘッジホッグ」の残党が集まってきているようだな。テオ、心配なら私と加勢に行くか」


「うん! 」

 僕はすぐに頷いた。すると、


「私もいく」

 なぜかリーランちゃんまで街に来ると言い出した。

「危ないからここで、」

「あんただって行くじゃない」

 だって、僕は勇者だから。

「この村では私の方がお姉さん。弟はお姉さんに従うものでしょ」

 「お姉、さん……? 」

 リーランちゃんと仲良くなれたのは嬉しい。でも、僕はリーランちゃんの弟になりたい訳じゃ無い。

「嫌なの?でも、もう決めたから」


 リーランちゃんはジーナさんの手を取って街に向かって走っていってしまった。僕も置いていかれないように慌てて後を追うことにした。







 僕らが街につく頃には戦いもだいぶ落ち着いていた。そもそも「バンブーヘッジホッグ」はそのほとんどが街の中に入ること無く倒されているようだ。


「剣での攻撃じゃ「竹」に邪魔されて本体に届かない。ハンマーや棍棒で「竹」ごとぶっ叩くのが良いみたいです」


 この街に住み着くようになった冒険者の1人が倒し方を周りの人に伝えてくれたおかげみたいだ。

 

「テオ、油断するな! 」

 考え事をしていたのをジーナさんに注意されてハッとする。そうだ、今は戦いに集中しなきゃ。すぐに目の前にいる3匹の「バンブーヘッジホッグ」を睨み付ける。

「【火魔法】で攻撃します! 」


 僕の使える最大の火力を「バンブーヘッジホッグ」に向けて打つ。

 あっという間に「バンブーヘッジホッグ」が炎に包まれた。これでこいつらは片付いたはずだ。

「テオ、下がれ!! 」

 そう言いながらジーナさんが急に僕の襟首を掴んでぐいっと後ろに引っ張った。

 それと同時にドスドスっと鈍い音が僕がいたあたりから聞こえてきた。

「ぐぇ」

 と、変な声がでてしまったがジーナさんを責めるつもりは無い。ジーナさんが僕を引っ張ってくれていなければ今頃、真っ黒になった「竹」が身体に刺さっていた筈だ。


「そんな、僕の【火魔法】が効かないなんて」

 「バンブーヘッジホッグ」の背中の「竹」は枝葉が燃え尽きただけで幹の部分が残っていたようだ。僕の目の前にも真っ黒になった「竹」が地面に何本も突き刺さっている。

「どうやら、かなり燃えづらいようだな」 

 ジーナさんがそう言いながら、「竹」の数が減っている「バンブーヘッジホッグ」に接近していた。

「ギィ」

 ジーナさんは隙間の空いた背中に剣を突き刺して「バンブーヘッジホッグ」にトドメをさしていた。


「やれやれ、あとどのくらい残っているんだ? 」

 今、僕らがいるのは街と村の真ん中辺りだ。ここより街に近づくと色々な罠が仕掛けられていて戦い辛くなってしまう。

「森からはもう来てない。このまま罠を避けて道沿いに街に向かって残ってる奴らを片付けて行くのがいいと思う」

 リーランちゃんの言う通り、道沿いに進めば罠に引っかかる事はない。

 

「あれ? 」

 今、何か変な音がしたような気がする。ドッ、ドッとまるで地鳴りような音だ。

「どうした、テオ? 」

 一度気になりだすと、音がどんどん近づいて来ている事にも気づいてしまった。


「なにか、来るよ!! 」

 僕が森の奥を警戒しながら叫ぶと2人ともしっかりと戦いの準備をしてくれている。


「ウォォォォォッ」


「なんだ、こいつは!? 」


 森から勢い良く飛び出して来たのは、大きな熊だった。立ち上がってもいない状態で普通の人より大柄な僕の3倍はあるように見える。立ち上がったら一体どれだけ大きいのだろう。

 それだけ大きいのに動きも俊敏で、出会い頭に一撃を繰り出したジーナさんの攻撃を簡単にかわしていた。


「くっ、速い!! 」 


 そして何より特徴的なのは、見事に塗り分けられた白黒の毛皮だ。

 よく見れば奴の口元には、「竹」の葉と何かの血肉がこびりついていた。おそらく「バンブーヘッジホッグ」を喰ったのだろう。


「なるほど、お前が原因か」


 ジーナさんも僕と同じ考えにたどり着いたようだ。街を襲った「バンブーヘッジホッグ」はこいつから逃げ出していたのだろう。


「フシュルルルルッ」


 白黒の大きな熊が喉を鳴らしながら僕らを睨んできている。僕は自然とリーランちゃんの前に出ていたし、ジーナさんはそんな僕の前に立ってくれていた。


「テオ、私が奴をここで食い止める。お前はリーランを連れて出来る限り、仲間を集めて戻って来てくれ」

 流石にジーナさんの言葉を鵜呑みに出来るほど、僕は子供じゃない。ジーナさんは僕らを逃がすためにここに残ると言っているんだ。


「駄目だよ!! ジーナさんが死んじゃう!! 」


 ジーナさんは一度も「熊」から目を離さずに答えた。


「死ぬものか。ウィキーに手伝ってもらって時間を稼ぐだけだ」


 ウィキーは森にいるアウラウネという魔物だ。村や街に勝手に入ろうとすると森の中を迷路に変えて迷子にしてしまうと聞いている。

 「バンブーヘッジホッグ」達はただ、この「熊」から逃げようとしていただけだったから、迷子になりながら無茶苦茶に森の中を突っ切って村や街にたどり着いたと言う事なのだろう。

 ジーナさんの言葉が聞こえていたようで、木々がうねりながら「熊」を捕まえようと動き始めた。

 しかし、「熊」は素早く動いて枝をかわし、運良く身体に絡まった枝も引きちぎりながらジーナさんに向かって来た。


「行けっ!! 出来れば村にいるミノタロウかハーピー達を連れてきてくれ」


「分かった!! すぐ戻るから、ジーナさん。死なないでね」


「わ、私は、残る、きゃっ」


 確かにミノタウロスのミノタロウならあの大きな「熊」とも戦えそうだ。そう思って僕はリーランちゃんを抱き抱えて村へと走った。

 走りながらジーナさんが「熊」の突進を上手くいなしているのを確認して僕は足に力を込めて全力で走った。


「は、速い」


「僕、いや俺には、虎獣人と獅子獣人の血が流れてるからね。走るのは得意なんだよ」


「えっ!?」


「お父さんとお母さんの事はあんまり覚えて無いけど、虎獣人のアイラさんも足が早いしきっとそのせいだよ」


「お父さん、いないの?それに、虎獣人と獅子獣人の血って」


「いないよ。でも今は母さんが3人もいるんだ。俺、街じゃ「合挽き勇者」って言われてるんだ」


「そう、なんだ。あんたも私と一緒なんだ」


 よく聞こえないけど、リーランちゃんが落ち込んでしまったみたいだ。


「大丈夫? どこか痛いの? 」


「……平気。それより、ミノタロウならきっと野球場にいると思う。あいつ何かあったらすぐに野球場に行くから」


「ヤキュウジョウ、ってあの森の中にある広場の事だよね。分かった」

 

 村のゴブリン達がよく集まって何かしている広場の事をみんなヤキュウジョウと呼んでいた。

 確かに、ゴブリン達が集まる時にはいつもミノタロウがいた気がする。

 腕の中にいるリーランちゃんを落とさないようにヤキュウジョウに向かう。


「ミノタロウ!! いるんでしょ。ジーナが大変なの、手伝って!! 」


 ヤキュウジョウに着くとミノタロウが広場の真ん中で「バンブーヘッジホッグ」の背中に生えていた「竹」を勢い良く振り回していた。

 どうやら、枝に生えている葉っぱを振り落とそうとしていたみたいだ。


「あんたは、こんな時になにを遊んでいるの!!」


「ス、スンマセン。この葉っぱを落とせるくらいの鋭いスイングを身につけたくて」


「いいから、来なさい。ジーナが大変なんだから」


「えっ、ジーナさんが? 分かりました。すぐ行きます」


 手に持っていた「竹」を放り出して、足元に置いてあった丸太を加工した棍棒と巨大な戦斧を持ち上げてすぐに準備を終えた。


「準備出来ました。ジーナさんはどこで戦っているんですか? 」 


「テオ、あんたミノタロウを連れてジーナの所に戻って。私は他の人達にも頼んで来る」


「で、でも」


「姉さんの言う事は聞きなさい。それに、ミノタロウとあんたがいればあの「熊」を倒せるかも知れないでしょ? 」


 確かにその通りだ。倒せなくてもかなりジーナさんが楽になるはずだ。

 それにここで僕が「熊」を引きつけておけばリーランちゃん達の危険は減るはずだ。


「分かった。行こうミノタロウ」


「了解っす」


 





「はぁぁぁ!! 」


「ウォ、ォォッ」


 ジーナさんのところに戻って目にしたジーナさんと「熊」の戦いは凄まじい激しさで行われていた。

 ジーナさんが剣で「熊」の喉元を狙えば「熊」は分厚い毛皮に覆われた腕で剣を弾き飛ばし、そのままジーナさんの喉元に噛み付こうとして来た。

 「熊」の攻撃を木の枝が間に割り込んで勢いを削ぐ。一瞬遅れて「熊」の攻撃に気が付いたジーナさんは身体をひねって枝が勢いを殺しきれなかった攻撃をかろうじて避ける。

 戦いは互角に見えたが、「熊」には戦闘を一撃で終わらせることの出来る一撃があるのに対して、ジーナさんの攻撃は致命傷とは言い難い攻撃にしかならない。

 いずれ「熊」が決死の覚悟で襲ってきた時、ジーナさんには勝負を引き分け以上にする事が出来ない。

 どうやら「熊」にもその事が分かっているようで、けして必要以上に深追いをしてこない。


「ハッ、ハッ」


 さらにジーナさんの体力もすでに限界に近づいて来ている。荒い息を整える事も出来ずに「熊」との攻防を続けている。

 僕とミノタロウはギリギリまで森にひそんで「熊」の横まで回り込みチャンスを待つ。

 すぐにでも助けに行きたいが正面から戦っても勝てる自信がない。それでも、やるしかない。きっとヒビキ兄さんだったらそうするはずだから。


「ミノタロウ。僕に続いて「熊」に攻撃して。僕が先に攻撃を仕掛けて「熊」に隙をつくるから」


「分かりました。でも、」


「やるよ。僕よりミノタロウの方が強いんだから、僕が囮になったほうが良い」

 ミノタロウの言葉をさえぎって自分に言い聞かせるように呟きながら移動を始めた。

 森と一体化しているウィキーも僕達に気がついたみたいで僕の周りを草木で覆って「熊」から隠してくれた。


「ウルォォ」


 さっきより近くで聞こえる「熊」の声に少しだけビックリしたけどなんとか「熊」の右側に回り込むことが出来た。


「よし、」

 ギュッと剣を握り締めて体中に力を込めてチャンスを待つ。何度か「熊」の攻撃を見ていたけど、ジーナさんを攻撃した後にジーナさんの様子を見るために動きをとめている。

 ジーナさんもその事に気がついているみたいだけど突進の勢いのまま「熊」が距離を取っているので攻撃するには時間が足りない。でも今の僕の位置ならその隙をついて「熊」の死角から攻撃できる。


「やぁぁぁぁ!! 」


 ジーナさんがさっきより大きな声を出して「熊」の攻撃をなんとか弾いた。「熊」はまたジーナさんを通り越して距離をあけてジーナさんが弱っているか品定めを始めた。


「今だ!! 」


 剣の切先を突き出したまま僕は全力で走った。リーランちゃんも言っていたけど足の速さならジーナさんにも負けない自信がある。

 「熊」が僕に気が付いてこちらを睨んで来た。

「あぁぁあぁぁぁ!! 」

 僕は叫びながら「熊」に向かって走り続けた。「熊」がゆっくりと太い右腕を僕に振り上げて来るのが見える。

 僕は死ぬかもしれない。そう思った瞬間、「熊」が真横に吹き飛んで行った。

「テオ、大丈夫ですか? 」


 ミノタロウが「熊」に戦斧で攻撃をしてくれたおかげで僕は助かったようだ。


「ありがとう、ミノタロウ」


「いえ、まだみたいですから」


 ミノタロウは吹っ飛んだ「熊」の方から顔をそらさずに僕に答えた。釣られて僕も「熊」の方を見るとすでに「熊」は立ち上がろうとしていた。

「そんな、ミノタロウの攻撃でも倒せないなんて」


「そうでもない。斧を受けた背中に大きな傷ができているぞ」

 ジーナさんが冷静に判断してくれた。確かに「熊」は立ち上がっただけでフラフラしている。これならもう一度ミノタロウの攻撃が当たれば倒せるはずだ。

 そう考えた瞬間に「熊」が一回り大きくなった。


「えっ!? 」


「【激昂】持ちなのか!? 」


 ジーナさんが言うには、大きな身体のモンスターの中には追い詰められると【激昂】して力が強くなる奴がいるらしい。【激昂】したモンスターは力も強くなり、身体が固くなったり大きくなったりするらしい。


「みんな、奴に近づくな。【激昂】状態の奴から攻撃を受けると、かすっただけで【即死】する事がある」


 時間が経てば【激昂】はおさまり、あの傷ならそれほど長くは無いだろう、とジーナさんが結論づけた。


「村と街に近づけないように注意してこのまま様子を見るぞ」


 ジーナさんの言うとおり、少しして白黒の「熊」は地面に倒れてそのまま起き上がってこなくなった。




まさか、3部作になるとは。間があいてしまって申し訳ありません。

これ以降はもう少し早く投稿できると思います。


ちなみに、出てきたパンダのモンスターは「巨大大熊猫ジャイアント・ジャイアントパンダ」と言う名前です。

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