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第149話

少し間が空いてしまった上短めです。

12月は少しドタバタしております。

お待ちいただいている皆様、申し訳ありません。





「やや痩せ気味だが健康状態は良好だな。何か気になる事があれば私の診療所まで来なさい」


 デトクの診察に合わせて読み取ったステータスを出来る限り『叡知の書』に伝える。


「猫獣人、23歳、男、『漁師』、最良ステータスは『すばやさ』、スキル無し、転職可能な職種に『剣士』と『槍使い』があるな」


『記録した』


 診察を終えた猫獣人の男性が頭を下げながら診療所を出て行くのを見送り、俺達は一息つく。


「お疲れ、今のでとりあえず今日のノルマは消化したけどまだ続けるか?」


 すでに朝から40人ほどの診察を行っている。

 小休止を挟んでいたとは言え、昼食も満足に取れていない。


「ありがとう、私はまだ大丈夫だよ」


 少し疲れの見える顔で笑顔を浮かべるデトク。

 

「俺の故郷に『医者の不養生』って言葉があってな」


『ほう、どういった意味なのだ?』


 『叡知の書』が食いついてきたが構わず話を続ける。


「医者ってのは患者の健康には気を使うが自分の事は分かってない、って意味だよ」


「いや、しかし」


 説明しているとタイミング良くミラが軽食を持って診療所に入ってきた。

 デトクが仕事を続けようとするのは分かっていたのでミラに前もって患者が途切れたら食事を持って来るように伝えておいた。


「お疲れ様です。ヒビキさんの言う通りですよ。まだ診察を続けるなら一度休憩するべきです」


「これは巫女様。お手を煩わせて申し訳ない」


 これなら無理矢理にでも休憩を取らせる事が出来る。

 ミラもにっこりと笑ってデトクを労った。


「とんでもありません。デトクさんのおかげで今日の診察だけでも何人もの命が助かりました」

 

 ミラの言葉は誇張では無く事実だ。

 今日の診察を受けたのは自分で少なからず体調に不安を感じていた者達だ。

 デトクはそんな彼等を次々に診断し薬の調合を指示し続けた。

 おかげで助手達は現在、全員が両腕があがらないような状態になっている。

 

 もちろん、その甲斐あって信者達への処方はスムーズに行われた。


「しかし、あんな道具じゃ調薬も大変だろうな」


 ボソリと俺がつぶやくと食事を食べていたデトクが興味を持ったようだ。


「あんな、とは酷いな。石板をあんな風に加工するのは大変なんだよ?」


 助手達が使っていた道具は一辺が50cmほどの中央が窪んだ石板と窪みの中に入れられた素材をすりつぶす為の木の棒だった。

 

「俺の知っている調合道具はこんな形をしてたぞ」


 縦長に溝を彫られた受け台と円盤の中心に持ち手を取り付けたすり棒を地面に描いて伝える。

 これなら今の物より楽に調合出来るのでは無いだろうか。


「た、確かに便利そうだ。君はどこでこんな知識を得ているんだい?」


 この世界はスキルによる作成があるせいなのか全体的に見て道具の作り込みが甘い。

 道具としてギリギリ機能するような物がほとんどだ。

 しかし、なぜか武器や防具などは握り込む部分の作り込みや剣身の重心の配分など凝りすぎなほどに凝っている。

 後でエミィに確認して分かったことだが、そう言った細部の作り込みは作り手のイメージでどうにでもなるらしい。


「俺の故郷には『錬金術師』も『鍛冶士』も住んでなかったからな。日常で不便を感じたらすぐに自分達で手を加えるんだ」


 デトクが珍しい物を見るような目でこちらを見ている。


「一体、どんな辺境に住んでいたんだい?」

 

「周りは森で囲まれてて一歩でも外に出たらモンスターの餌食になるような所さ」


 こんな時のために出身地についてはある程度考えていたのでスラスラと答える。


「・・・そうか。ところでこの調合道具の事だが」


 デトクが勝手に深読みして話を逸らしてくれた。

 

「そうだな、うちの『錬金術師』にいくつか造らせようか?」


 もちろん、こちらもあまり突っ込まれたくは無いので話題に乗る事にした。


「そうしてくれると助かるよ」


 主に助手たちが。

 実際、彼らも期待のこもった目をこちらに向けている。


「これで明日は2倍の患者が捌けるな」


 俺はデトクに笑いながらそう言った。


「なるほど、そうだな」


 デトクの後ろで声にならない悲鳴をあげている助手たちを尻目にデトクはブツブツと呟きながら明日の診察の予定を計画し始めるのだった。



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