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第116話



 次の日は朝からキツイ物を見せられた。


「キ、キュイィィ」


「キィ、キィ」


 ハーピー達が奪い合うように生肉をむさぼり食っていた。

 あれは、村で飼うようになったギガバッファローのドロップアイテム『ギガバッファローの肉』だ。


 戦力向上の為に捕獲したのだがそれより肉が食いたいという意見が多くあったので一部を村で家畜化している。

 その肉を今回、遠征用に準備したのだがあっという間に食べ切ってしまったようだ。

 普段、ろくなものを食っていないのだろう。

 そういえば、人肉が好きとの事。

 『ギガバッファローの肉』は人肉より旨いだろうからこの光景は当然か。

 とはいえ、それなりに整った顔をしたハーピーが血を滴らせて肉を貪るのは中々ショッキングだ。


「ああぁ!!お肉全部食べてる!!」


 リーランがハーピー達を指差してベソをかいている。

 目の前の光景より肉を食べられた事の方がショックらしい。


「困りましたね。ハーピー達がこんなに食べるとは思いませんでした」


 エミィも食糧の心配しかしていないようだ。


「近くで食糧を調達するか?」


「そうですね、森まで行けば食糧になる物があるでしょう」


 ジーナとアイラは既に食糧補充の方法を考えている。


「熊肉など久しぶりじゃのぅ。アイラ、期待しておるぞ」


 ジルは追加される食材にしか興味がないようだ。

 うちの女子はたくましすぎる。


「な、なんだこれはぁ!?」


 フレイが、うっ、と口元を押さえて目をそらす。

 そういえばこいつ、貴族のお嬢様のお供な訳だし、こういう光景に耐性がないのか。

 まさか、俺の考えていた女性らしい反応をしたのがフレイだけとは。 




 女性陣の対応は早かった。

 まず、アイラ、ジーナとゴブリン10匹で食糧の調達を。

 俺とエミィ、フレイ、ルビーでハーピーの食糧の確保をすることになった。

 ジルとリーランは拠点の防衛に残してきた。ジルがあまり離れるとスケルトンの統制が取れなくなるので仕方がない。

 リーランは体力は普通の子供並みなので今回はジルとお留守番だ。


「この辺りの蟲系のモンスターを主食にしていたみたいですね」


 ハーピー達が飢えていたのは、周辺に餌になる獲物が少なかったからだろうか。

 しかし、少し周辺を探すとうじゃうじゃと蟲系のモンスターが現れる。なぜ、これで飢えているのだろう?

 水弾で蹴散らしてハーピーを呼んで食べて良し。と伝えるが誰も手をつけない。


 ルビーを通してハーピー達に尋ねると、

 ここは他のハーピーの群れの縄張りでここの餌に手を出すと襲われる。との事だった。


「他のハーピーの群れ?」


 昨日捕まえたのはどれも同じ群れのハーピーだったらしい。

 餌がなくて餓死寸前のところにご馳走(にんげん)がやって来たので無我夢中で襲いかかって返り討ちにあったわけだ。


 餌の豊富にあるこの辺りの森と、定期便が通る山の中の道はこの山で一番強い群れの縄張りらしい。

 

「一番強い群れ、どれくらいの規模なんだろうな」


 ハーピーに聞くと50羽ほどの群れらしい。


「そこまで多くないな」


 なんでも、その群れには『でたらめに強いハーピー』がいるらしく誰もそいつに勝てないのだそうだ。


「あれ?もしかして今、その群れの縄張り荒らしちゃったのかな?」


 気がつくと、森の中が静まり返っていた。

 虫の鳴き声も、鳥のさえずりも聞こえない。

 かすかに聞こえるのは、バサバサと翼を羽ばたく音。

 お供に連れてきたハーピー達の顔が青ざめる。

 

 どうやら、その『でたらめに強いハーピー』の群れが来たようだ。

 今からでは証拠隠滅も間に合わない。なにより、ハーピーが自らの縄張りにいるご馳走(にんげん)を見逃す理由がないだろう。


 どうやら、覚悟を決める必要がありそうだ。








 やって来たのはどうやら10羽ほどの集団のようだ。

 昨日のハーピーに比べると一回り大きい気がするがステータスではただの『ハーピー』だ。

 やはり、しっかり食っていると同じモンスターでも違うのだろう。

 とっさに森の中に隠れたが、ハーピー達は歩くの苦手なようでよたよたと頼りない。


 目の前で捕食を始めたハーピー達は俺達に気付く気配はない。

 木々に日光を遮られた薄暗い森の中に潜んでいるお陰だろうか。


 「うっ、」


 見るとフレイがまた、ハーピーの食事風景を見てえずいている。


「フレイ!!吐くなよ!!」


 今、ハーピー達が喰っているのは、蟲系のモンスターだ。朝より更にすごい光景が広がっている。

 流石に吐いてしまえば、臭いでバレてしまうだろう。

 よせばいいのにフレイもハーピー達から目を離さない。おそらく、この状況で敵から目を背ける事が嫌なのだろう。


「フレイ、もう見るな」


 フレイの顔を胸元に抱き寄せて、視界を封じる。


「ヒ、ヒビキ、これは別の意味でマズイ!!」


「良いから、黙ってろ」


 さらにぎゅっと抱き締めてフレイを黙らせる。


「あ、うぅ、あう」


 今度は変な唸り声をあげだした。ちょっと締めすぎたか?

 


 しばらくしてハーピー達の食事が終わり、1羽、また1羽と飛び立っていく。


「ふぅ」


 なんとかこの場を切り抜けられそうだ。そう思った次の瞬間に『奴』は現れた。

 

「キィ、キィ」


 弱々しく鳴くハーピーの声。声のする方を見ると全長3mはある純白の羽を持ったハーピーが俺のハーピーの首筋に噛みついていた。

 噛みつかれたハーピーは、体格の差ので足が地面に着いていない。


 弱々しく数度羽ばたいて体が力を失った。


「こ、こいつ、どうやってこんな近くに!?」


 フレイの叫び声を聞きながら、奴のステータスを確認する。


**************

アルビノハーピー 3歳



スキル

【アルビノ】

標準種に比べ、特殊な能力に目覚める可能性を持つ。


【思考発達】

思考する力を得る。


**************


  

 アルビノハーピーは、森の中を歩いて俺達の後ろに回り込んで来た。

 そう、普通のハーピーなら考えもしない徒歩で近づくという発想を持ったモンスターだ。

 しかも、【アルビノ】の効果を考えればこれからもまだこのモンスターは強くなる可能性がある。

 しかし、


「今は生き残るのが最優先だ!!」


 残ったハーピー達に逃げるように指示する。アルビノハーピーは、事切れたハーピーを吐き捨てこちらを睨む。

 どうやら今の指示で俺がリーダーだと理解したようだ。


 「キィィィキキーー」


 アルビノハーピーがすぐに上空の部下達に飛び上がったハーピー達を狙わせる。

 しかし、


「うぉぉぉりゃぁぁ」


 フレイが味方のハーピーに抱えられた状態で敵を倒していく。

 グリフォンに乗っていた時もそうだったが、ハルバートを目一杯伸ばして敵のハーピーを寄せ付けない。

 エミィも魔弓で敵ハーピーを落としていく。敵の数もそれほどではないので上は二人がいればなんとかなるだろう。


「さて、どうする?」


 なまじ知性があるために、俺が挑発していることに気づいたアルビノハーピーはこちらに真正面から向かってくる。


「キキキィッッ」


 しかし、ハーピーは歩くのが苦手な種族だ。大した速度は出ていない。

 突進を難なくかわして後頭部を強打する。


「キィー」


 しかし、アルビノハーピーは急に体勢をかえて俺の攻撃を避ける。

 そしてそのまま、羽ばたいて空へと飛び上がる。

 どうやら攻撃を読まれたようだ。


「逃がすか!!」


 飛び上がった瞬間に脚に掴まって一緒に飛び上がる。


「キィ!?」


 アルビノハーピーは俺を振り落とそうとでたらめに飛び始める。

 俺は掴んだ脚を改めて握り直し、【電撃魔法】を直接流し込む。


「キャッ、キィキュゥーー」


 アルビノハーピーは短く悲鳴をあげた後、意識を失う。

 俺とアルビノハーピーは仲良く地面に墜落していく。


「ルビー!!」


 下で待機していたルビーに指示を送る。

 ルビーは待ってましたとばかりに体をたわませ俺とアルビノハーピーを優しく受け止める。

 さらにアルビノハーピーを包み込み拘束する。


 俺は立ち上がって空中戦のほうに参加しようとしたが、既に決着はついていた。





「さて、じゃあ俺と仲良くなろうか?」


 ルビーに拘束してもらったままアルビノハーピーの支配を始める。

 昨日のテンペストイーグルの時の事を踏まえて最初からスキンシップを取りながらアルビノハーピーを可愛がる。

 

「ほらほら、ここが気持ちいいんだろ?」


「キャゥ!?」


「なんだ?もうこんなにして、堪え性のない奴だ」


「キュゥ~」


「自分から(羽を)拡げるなんて欲しがりさんめ」


「キャゥ、キャゥ」


 俺の献身的な説得により、アルビノハーピーは俺に頭(こうべ)を垂れた。


「今日からお前は、ソラだ」


 アルビノハーピーにソラと名付けて頭を撫でる。

 ソラも自分から俺の手に頭を擦り付けてきた。



 ソラも落ち着いてきたので巣に残っていたソラの群れの残りを捕まえに行く。

 ソラが積極的に協力してくれたのでそれほど時間はかからなかった。


 今回の最終的な戦果は、

 

 ホーンバード・・・・・・・14羽(立派な角を持つ鳥。全長1mほど)

 ソードフェザー・・・・・・15羽(剣のような羽を持つ鳥。全長2mほど)

 ハーピー・・・・・・・・・98羽(ソラの群れを含む)

 テンペストイーグル・・・・ 1羽(拠点に戻ったらリーランがテンと呼んでいた)

 アルビノハーピー・・・・・ 1羽(ソラ 普通のハーピーより2回りほど大きい)


 となった。

 結局、食糧はソラの縄張りの餌を手に入れたがハーピーの数が増えてしまった為に解決には至らなかった。

 これは、アイラ達に期待しよう。



「御主人様、只今戻りました」


 アイラ達は、俺達の食糧として熊や鹿などの動物を大量に狩って来てくれていた。


「ご主人ならまたハーピーを増やしているんじゃないかと思って多目に準備したが、それでもギリギリだな」


 ハーピー達も昨日ほど空腹ではないので朝のような事態にはならないだろうが、あまり食糧に余裕がないのは事実だ。

 戦力もしっかり確保できたので、ここは一度村に帰るべきだろう。

 日も落ち始めていたので、今日は休むことにして明日の朝から撤収作業を行うことにした。

 行きとは違い空輸能力が上がっているのでゴブリン達にハーピー達とコンビを組ませてみた。



 次の日、朝から撤収作業を急いですぐに村に向かって飛び立つ。

 ハーピー達の『鳥目』を気にしてのことだが、鳥系モンスター達の速度を甘く見ていた。

 昼過ぎには村の付近までたどり着いたのだが、何やらウェフベルクの方が騒がしい。


「祭りでもあるのか?」


「あっ!!御主人様、あの騒ぎの原因はおそらく私たちです」


 エミィにそう言われてようやく気がつく。

 俺の後ろを見れば100を超える数の鳥系モンスターがゴブリンを運んでいる。

 むしろここまで何事もなく近づけた事の方が奇跡的だったのだ。


「すぐにギーレンのところに行ってくる。アイラ、ハーピー達を村の広場に降ろせ。エミィは一緒に来てくれ。ジルはヴァンパイア達に頼んでハーピー達の寝床を用意してやってくれ」


「わかりました。お気をつけて」


「はい、私も行きます」


「仕方ないのぅ」





「ヒビキ!?良かった、戻って来てたんだね!!フレイから街を数日離れると聞いていたから」


 ギーレンが抱きつかんばかりに迫ってきた。俺は両手でギーレンを引き剥がして落ちつかせる。


「落ち着いてください。ギーレンさん」


「しかし、君も見ただろ?あんな数のハーピー達が街の城壁を超えて来たら街は大変な被害を受けるぞ」


「えっと、言いづらいんですが、あの群れは俺の新しい僕(しもべ)です」


「な、何を?」


「全て村に降ろしますのでこの街には迷惑をかけません。約束します」


 これから『ゴブリン運輸』に『高速便』を設けるつもりだ。

 街周辺のモンスターもハーピーが餌として処理するでしょう。

 とエミィがペラペラと今考えたハーピーが村にいる利点を並べ立てる。

 しかし、『高速便』は悪くないな。落ち着いたら早速やってみるか。


「信じられないが、君ならあり得るか」


「はい、御主人様は『加護』をお持ちですから」


 エミィに決め台詞を取られてしまった。




 村に戻ると、野球広場にハーピーの大群がいた。

 寝床として村に畜舎を増す話が出ていたが、ハーピー達は人間のように横になって眠らない。

 どうしようか悩んでいると、ビルギットが名案をあげてくれた。


「トマリギが欲しいの?ならあのアルラウネに頼めばいいじゃない」


 早速、ウィキーに村の近くの森にハーピー達を住まわせて貰うように頼みにいった。


「いいよ~みんな仲良し楽しいよ」


 すでにウィキーは畑の植物だけでなく村の周辺の森すらも自らの領域としていたので、受け入れはスムーズに行われた。

 村には食糧の備蓄もたっぷりあるし、いざとなればハーピー達の食糧は自力で集めて貰っても構わないだろう。

 人間だけは、俺の許可がない限り食べないように言いつけた。

 まあ、『ギガバッファローの肉』を定期的に与えていれば人肉に飢えることもないだろう。


 これで、事情を知らない冒険者が村の周辺に寄ってくればウィキーが感知してすぐにハーピー達に伝わるだろう。

 素晴らしい防衛網の完成だ。

 これで航空戦力については問題ないだろう。

 次はどこにいって、何をしようか?



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