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幼女と執事が異世界で  作者: 天界
第4章
74/182

74,レーネの実力



 昨日同様に何度か転移したあとに徒歩も織り交ぜ、約1時間程度で特殊進化個体(モンスター)と激戦を繰り広げた場所までやってきた。


 アルの予測通りに大きなクレーターや削れた跡も大分砂を被っており、足跡なんかはほとんど残っていなかった。

 それでも特殊進化個体(モンスター)の巨大な足跡はたっぷり残っていたし、大きな跡なんかは残っているので調べる分には問題なさそうだろう。



【では私は調査を始めますので、ワタリさんはお暇でしょうが少しお待ちください】


【えっと、案内だけでいいんですか?】


【はい、調査とはいいますが私の本業はそういった方面ではありませんし、確認のようなものですので】


【そっかぁ~、でもあんまり離れたらだめですよね?】


【そうですね。エリザベートさんからも単独行動をしないように目を光らせて欲しいと言われています】



 ちょっと苦笑気味に話すレーネさんにエリザベートさんの過保護っぷりに呆れながらも了解の意を返す。

 調査自体も大して時間もかからないみたいだし薬草を取ってくる時間はなさそうだ。

 それに昨日取って来たばかりなのでまた群生地を探さないといけないし、短時間ではとてもできない。

 調査が終わった後はレーネさんとお買い物に行くことになっているし、彼女の調査の仕方でも勉強させてもらいながらどこに行くか考えるとしよう。


 近場にあった岩のところに腰掛けてアルと2人でレーネさんの調査を眺める。

 最初はこちらの視線を受けてちょっと恥ずかしそうにしていたレーネさんだったが、アイテムボックスから袋を取り出した辺りからはその恥ずかしさは微塵もなくなった。


 仕事モードということなんだろうか。さすがはランクAといったところだろう。

 公私の区別がしっかりついている。


 クレーターやオレの魔法で削った跡を確認し、その砂の一部を払って少し採取する。

 ランクCの調査というのは調査対象の一部を採取してくるのも含まれるのだろうか。

 魔物の調査と違って今回は場所だから勝手も違うのだろう。


 いずれはあぁいった調査依頼も受けるかもしれないのでレーネさんの調査方法をしっかりと頭に叩き込む。

 とはいってもアルも見ているので覚え切れなくても問題ない。その時はアルに聞けばいいんだから。


 砂を採取したあとは何か魔道具のような物を取り出して、戦闘跡に向け始める。

 アレはなんだろう。


 小首を傾げながら見ていると魔道具が魔法で削った穴に差し掛かると青く点滅する。

 そこでレーネさんは紙に記入を始める。

 他にも特殊進化個体(モンスター)が爆破して空けた穴では赤く点滅したりして、その度に紙に記入をしている。


 特殊進化個体(モンスター)の足跡には反応してなかったことから攻撃で出来た場所に対して反応しているのだろうか。

 多分魔法やなんかの属性の跡なんかが残っているのだろう。それに反応しているのではないだろうか。

 つまり、どの戦闘跡にどういう属性の攻撃が加えられたのかがわかるのだ。


 オレが魔法で削った跡は青く点滅していた。

 初級魔法:水で作った氷の槍で出来た穴だから青なのは納得がいく。

 特殊進化個体(モンスター)の攻撃で爆発して出来たクレーターは火の属性でもついていたのだろう。爆発してたし。だから赤と。


 なんともわかりやすい。


 ただあれだけだとどちらの攻撃によって出来た跡なのかがわからないんじゃないだろうか。

 戦闘協力をしたことになっているオレならその戦闘を見ているだろうから聞けばより正確な情報になるだろうに、レーネさんは特にそういったこともない。

 それとも見て少し調べれば特殊進化個体(モンスター)のものなのか人のものなのかわかるのだろうか。

 レーネさんは熟練の冒険者だからもしかしたらそういうのもわかるのかもしれない。

 経験っていうのはそういうことも可能にしてしまうから怖い。


 しばらく興味深く見ていると歩き回っては魔道具で調べ、記入をし大体のところを見て回ったレーネさんが道具一式を袋に戻してアイテムボックスに仕舞う。

 彼女が使っている袋もたくさん入れてもアイテムボックスに仕舞える不思議袋だ。

 しかも結構な大きさでオレ達が持っている収納袋大並に大きい。

 有用なのでわかるが、普通に買ったら一体いくらになるんだろう。さすがランクAだ。


 ランカスターさんにもあの背負っている大剣を作ってもらっていたし、レーネさんは相当お金持ちなんだろうなぁ。


 戻ってくる途中でレーネさんが突然止まり林の方を見つめ出した。

 なんだろうと釣られて見るとしばらくしてまだら蜘蛛が3匹ほど林から出てくる。

 レーネさんの位置と林が始まる位置までは有に200m近くある。

 気配察知のレベルが一体いくつなら感知できる距離だというのだろうか。



【ワタリさん、もう少しお待ちになってください】


【あ、手伝いますよ。まだら蜘蛛くらいなら平気ですし】


【いえ、ワタリさんのお手を煩わせるわけには行きません。ここは任せてください】


【わかりました。お願いします】



 ちょうどいい。ランクAの冒険者の動きなんかも見れるし、ここはお願いしてしまうことにした。


 林の方に歩き出したレーネさんは歩きなのに、オレが小走りに走っているくらいの速度は出ている。

 やはり大きいから1歩1歩のストロークがものすごく長い。

 近づきながらも背中の大剣ではなく腰に履いていた長剣を引き抜く。


 レーネさんの長身には少し物足りない長剣だったが、その刃は2つの太陽の光を反射し真っ青に輝いている。

 一見しただけで普通の武器じゃないのがわかる。

 あれも相当な代物だ。


 まだレーネさんと魔物達との間には100m近い距離がある。

 まだら蜘蛛の糸の射程はそれほど長くないが、レーネさんの一歩の踏み込みと長剣のレンジを合わせた距離よりは長いはずだ。

 ただレーネさんのリーチがどの程度なのかにもよるが。


 だがオレのリーチ云々の予想を無視してレーネさんが長剣を袈裟懸けに振るう。

 青い残身を残して振るわれた長剣は返す刀で逆袈裟に翻る。

 さらに上段から振るわれた一刀によりレーネさんの攻撃は終わった。


 信じられないことに100m近い距離があったのにも関わらず、繰り出された3回の斬撃は全てまだら蜘蛛を切り裂いていた。

 レーネさんが振るった長剣の力なのか彼女のスキルなのかはわからないが、斬撃が距離を無効にしてその刃を届かせていた。

 現れたまだら蜘蛛達は明らかに届かない位置から攻撃により一瞬にして絶命してしまった。

 これがランクAの実力。


 たった3回の攻撃だけで理解させられてしまった。

 オレには創造神からもらったチートがあるが、レーネさんには勝てる気がしない。

 だがそれは今は、という前提の話だ。


 これからBaseLvをあげて経験を積めばどうなるかはわからないだろう。

 まぁそれ以前にレーネさんが敵になるとは思えないけど。


 まだ出会って間もないというのにどうやらオレは彼女のことをかなり信用してしまっている。

 普段ならもっと警戒心が働くものだが、彼女の見た目によらない繊細で可愛らしい点なんかがどうにも心を緩めてしまう。


 アルがずっと前に言っていたオレの姿は警戒心を緩める効果があるというものと似たようなものを彼女も持っているのかもしれない。

 主に見た目とのギャップで。


 長剣をいつの間にか鞘に収めて解体しに魔物の死体の傍までいっていたレーネさんに思考を戻す。

 解体はやっぱり近づいて普通に行うようだ。

 遠くから解体して素材を回収するような便利なものはやっぱりないのか。


 ちなみにまだら蜘蛛から取れる素材はそんなに大きくない。

 レーネさんは調査道具が入ってる袋とは別の袋を出してその中に入れるとまたアイテムボックスに収納している。

 基本的にソロで活動しているという彼女だからポーターも雇っていないのだろう。

 そうすると魔物を倒した際の素材なんかが重荷になってしまうので、対策としてアイテムボックスの拡張を行っているのだろうか。

 アイテムボックスは最初の拡張だけでもポイントを10使う。

 10ポイントあればそれだけ強くなれるのだから、自分の力だけが頼りのソロではかなり躊躇われるものだろう。


 他にも収納袋を使ってアイテムボックスを広く使うやり方なのだろうけどそこまで行くのには大変だったのではないだろうか。

 収納袋は小さいタイプでもかなりの金額するし。

 大きなタイプだと一体どれだけのお金が必要になるかわかったものではない。


 この世界でソロで活動するというのがどれだけ難しいか。

 オレにはアルがいるし、創造神から貰ったチートやポイントなんかもある。

 彼女の味わった苦労は想像でしかわからないけれど相当苦労したのは簡単にわかる。


 そんな風に思ったからかオレはどうやらすごく優しい表情をしていたようだ。

 レーネさんが戻ってきてまた真っ赤になって、念話でわたわたしながらも伝えてきたのを今度は苦笑してしまった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 帰り道は行きと調査にそれほど時間もかからなかったので転移も行きの半分くらいに抑えて移動することにした。

 その分レーネさんと話をする。


 今までソロでやってはきたが、たまにPTにも入っていたりすること。

 たまにPTに入っても意思疎通がなかなかうまく出来ず、連携は問題ないのだがそれ以外で問題が出て馴染めず結局一時的なものにしかならないことなど。


 どうやら本当に彼女はオレ達と喋るようには他の人とは喋れないようだ。

 しかも念話でならオレ達とも普通に喋れるが、声に出してとなると途端に小さな声になってしまい顔も真っ赤になってしまう。

 これはなかなか重傷だ。


 他にも迷宮に入ったりもするそうだが、ソロだとどうしても深い階層にはいけず低層止まりなんだそうだ。

 2,3日なら寝ずに戦闘も行えるらしいが、それが限界でそれ以上となると休息が必要となりどうしても階層を進められないそうだ。

 オレが迷宮にいけるようになったら一緒に行ってあげようかと提案したらそれはそれはものすごく喜ばれた。


 ランクAまでソロで昇ってきた彼女もやはり限界を感じていたらしく、だが性格が災いしてPTを組めない。

 組めても続かない。


 そんな時にオレが現れた。


 彼女にとってほとんど緊張せずに念話だけとはいえ意思疎通が取れる相手というのは、まるで神が遣わせた天使のような存在なんだそうだ。


 天使はさすがに言いすぎだと思うが、彼女がそういうんだから仕方ない。

 アルは当然といった具合で頷いているし。


 まったくどうしてオレの周りはこういう人達ばかりなんだろうか。

 そりゃあランクAですごい実力者で可愛いレーネさんみたいな人とお近づきになれたのは嬉しい。

 でももっと普通であってほしかったというのも正直なところだ。


 まぁ普通だったらこんなに短時間で仲良くはなれなかったとは思うけど。

 そう考えるとこれもありなのだろうか。

 別に時間かかってもいいとは思うけどね?


 ゆっくりと途中でお昼を食べてお喋りをしながらラッシュの街まで戻り、ギルドに報告し、レーネさんは調査書を渡して特別依頼は終了した。


 ちなみに成功報酬はランクCなので単位が金貨だ。

 半日もかからなかった仕事なのに金貨がもらえた事にびっくりしたが、本来なら特殊進化個体(モンスター)討伐でこの1000倍の報酬はもらえていただろうということだったのでそっちの方がびっくりだ。


 討伐部位を今からでも見せたら貰えるだろうか……。

 いやいやでもしかし……。



 悶々としながらも結局討伐部位を見せることはなく、約束通りにレーネさんとお買い物をする為にギルドを後にした。




レーネさん半端ないです。

ぼっち力も半端ないです。


次回予告

レーネからの突然の申し出。

ランクAとランクFの狭間でワタリちゃんはどうでる。


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ご意見ご感想お待ちしております。


8/29 誤字修正

11/11 誤字修正

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