表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼女と執事が異世界で  作者: 天界
最終章
171/182

171,打ち合わせ




 トレーゼの迷宮の攻略が始まる。

 ただ馬鹿正直に1階から行くわけはない。ただでさえ時間がないのだから当たり前だ。

 そこでここは先駆者を利用することにした。


 まぁつまりはアイツだ。



「遅くなって申し訳ありません。リオネット・ブルーリラ・エル・ミッシルハングただいま到着致しました」


「うむ、そなたが元破滅の牙か。ではさっそくじゃがトレーゼの迷宮にはアンカーは設置してあるのかの?」


「いえ、ありません。150階のフロアボスを討伐した段階で不要となりましたので回収済みです」


「そうかえ。では近くへの移動手段はないのかえ?」


「145階層への転移の水晶がございます」


「ではそれを使ってアンカーを打ち込んでくるのじゃ」


「かしこまりました」



 (リオネット)のフルネームなんて初めて聞いたけどどうでもいい。

 アイツを利用するといってもこのようにカトルゼにもあったようなショートカット手段を使わせてアンカーを打ち込ませるくらいだ。

 顎の強さでは居ても居なくてもあんまり変わらないしね。

 ただ1人で行かせるわけにはいかない。さすがにアンカーを打ち込む前に死んだら1階から攻略しなければいけなくなる。

 まぁ適当にトレーゼの迷宮近くにある街で冒険者を集めてショートカット手段を使わせるという手段をとってもいいけど、やはり最高到達階層者を使った方が早い。


 顎に戦闘奴隷さん達をつけて送り出す。


 トレーゼの迷宮近くの街にはエリア姫がアンカーを設置していたためにショートカット手段の使用にも1日あれば問題ない。


 というか実はまだ討伐メンバーが集まりきっていなかったりする。

 まぁそれは正直仕方ないとは思う。だってオークロードがトレーゼに逃げ込んでからまだ1日も経っていないのだし。


 ちなみに討伐予定メンバーは――。


 オレ、アル、レーネさん、エリア姫、グレーさん、アイトさん。

 この現在屋敷に集まっているメンバーに付け加えてライリさんというもう1人の転生者とドリルさんだ。

 ライリさんとドリルさんは今現在向かっているそうだが準備もあるので今日1日かかる可能性が高い。

 でもどっちにしても顎がアンカーを設置しないことには動けないので大丈夫だ。


 ちなみにPTを組むには人数が多い。

 しかしそこは従者が実は3人いるので問題なかったりする。

 アルはオレの従者だ。そしてアイトさんとライリさんがエリア姫の従者なのだそうだ。

 とはいっても名ばかりだそうだけど。

 従者や奴隷はPTメンバーとして1人分とは数えない。従って従者や奴隷でPTを構成すれば、通常6人までのPTが主人1人と従者及び奴隷が最大35人で36人の大PTになる。


 オレ達のような大戦力の個人が多い場合、1PTに集まっている方が何かと便利だ。

 1回で範囲支援とか終わるしね。

 もちろんデメリットもある。PTを対象とするような範囲攻撃などだ。

 だがメリットとデメリットを秤にかけた場合、今回はメリットの方に大きく傾く結果となった。


 それはひとえに女神の祈りのためだ。

 害のある効果を無効化するこの勇者装備の固有スキルはPTにも恩恵がある。

 従って魔道具を無効化するあのスキルに対抗するには1PTで挑む必要性があるということだ。

 女神の祈りは勇者装備の兜にしかないのだから。


 有象無象でいくつもPTを組んで人海戦術で倒すという方法も迷宮にいるということと、オークロードと戦えるような高Lv者のほとんどが魔道具で身を固めているという事実によって使えない。

 まったく厄介なスキルをもちやがる。


 迷宮に逃げたのも人海戦術を使えないようにするためだとしたらなかなか頭も切れる。

 最下層でふんぞり返っているだけとは思わない方がいいかもしれない。もしかしたら不意打ちなどもありうるのだ。

 いやそういったこともあるという前提で動くべきだろう。

 女神の祈りは常時発動させることが出来ない――再使用には時間がかかる――ので不意打ちを警戒して使い続ける事が不可能だ。

 ……まったく面倒な。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「わたりん! わたくしただいま到着しましたわ!」


「妾ではなく、まずはわたりんに挨拶なのじゃな……」


「あら、エステリア姫様。アリアローゼ・シャル・ウィシュラウ、ただいま到着致しました」


「うむ。よくぞ妾の願いに応えてくれた。話はライリから聞いていよう。此度は厳しい戦いになる。覚悟はよいか?」


「無論ですわ。そもそもわたりんがいますもの。

 何も心配はいりませんわ!」


「……ふむ。まぁ確かにあの治癒魔法があれば死ぬような事はまずないじゃろう」


「えぇ、わたりんの一撃が決まればどんなものでも死にますわ!」


「……ふむ?」



 ドリルさんとの会話が噛みあわなくなっている事にエリア姫が気づきだした。

 まぁこれは仕方ない。あの人に内緒にしてもらうのはどだい無理な話だったのだ。……まったく。



「どり……アリアローゼさん、こんにちは。今回はよろしくお願いします」


「まぁ! わたりん、そんな他人行儀はいやですわ! わたくしとあなたの仲ではないの!

 わたくしはわたりんのためならどんな強敵にでも立ち向かうつもりですのよ! もちろん一緒に!」


「あ、はい。そうですか」


「えぇ、そうですわ! このアリアローゼ・シャル・ウィシュラウ、わたりんと肩を並べて戦える事に誇りを感じていますわ!」



 キラキラと盛大に輝いているドリルさんに対してきっとオレは黄昏た感じのどうでもいい顔をしていただろう。

 どうせドリルさんは気づかないだろうけど。

 その証拠にエリア姫が目をぱちくりさせて呆然とオレ達を見ている。


 一国の姫を差し置いてオレばかりに話しかけて、その上エリア姫と(・・・・)ではなくオレと(・・・)一緒に戦える事を誇りだと言っているんだから。


 ……一緒に戦う姫の目の前で。


 まぁそこはエリア姫。

 転生者だし、かなり頭の回る人だ。ドリルさんという特殊個体の事も理解しているし、彼女の有用性も把握している。だから肩を竦めるだけだった。


 ……不敬罪ってこの世界だとどの程度の罪なのかなー。



 ちなみにライリさんはドリルさんと一緒にきた。ドリルさんを迎えに行ったのだから当然と言えば当然だ。

 薄い青味がかった綺麗な髪をした美女だ。

 大人の妖艶な色気を持った今までオレ達の周りにいなかったタイプだ。


 ……エリザベートさん? あの人妖艶じゃなくてただの変態だろう。

 妖艶だったことも1回もなかったと思うし、あの人は可愛いタイプのお姉さんだ。変態だけど。


 まぁ今はエリザベートさんはどうでもいい。

 今回の事は極秘なので彼女には知らされていない。

 でもすぐ近くにみんないるし、これだけ物々しい雰囲気を出しているので気づいているかもしれない。

 いや、あの人は気づいているだろう。なんだかんだで結構すごい人だしな。変態だけど。

 それでも今は孤児院の責任者だ。子供達に不安を与えてはいけない。子供は敏感だからね。信頼するエリザベートさんが不安げにしていたらまずい。

 ただでさえうちの孤児院にいる子達の大半は元奴隷だ。

 今は笑顔が絶えないがほんの1ヵ月前までは絶望していた子だって多いんだから。


 ともかく、これでメンバーは全員揃った。

 すでにそれぞれ準備も終えているのであとは顎がアンカーを設置し終わるのを待つだけだ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 アンカーの設置が終わるまでに各自自己紹介と打ち合わせを済ませる。

 これは非常に重要な事だ。

 ただでさえ大半は知らない人なのだ。一緒に戦った事などもまったくないのに強敵を相手にしなければいけない。

 正直かなり無茶な話だ。


 元々PTを組んでいた人ならば連携も問題ないだろう。

 即席でもある程度はどうにかなる。


 しかしそれは相手が普通かある程度の強さまでだ。

 鬼刃を相手にしたときは2人だけだったし、完全に役割が分かれていた。あの時とはまるで違うのだ。


 だが時間がないのも事実。

 即席でもなんでもやらなければいけないのだ。


 エリア姫とグレーさんを中心として打ち合わせをしていく。

 わかってはいたがレーネさんとドリルさんを前面に押し出したごり押し戦法が主軸だ。


 ステータスとスキルが現実としてある世界だ。

 ステータスを大幅に上昇させ、固有の強力なスキルをいくつも保持する勇者の装備を纏える物を前面に出すのは当然だろう。


 それ以外はバックアップ。

 特にオレは回復要員として随行する。

 グレーさんは元々中距離戦闘を主にするタイプで、積極的に前線に出るタイプじゃないそうだ。

 アイトさんは前衛もできるが能力的に前衛と後衛の中間位置がもっとも力を発揮できるらしい。

 ライリさんは完全な後衛。

 しかも支援系能力で、攻撃能力をほとんど持たないそうだ。なのでオレと一緒にアルに守られる形になる。


 で、問題がエリア姫。

 この人完全な前衛型。


 でも勇者の装備もないし、ステータス自体はLvがそこそこ高いからまぁまぁだがそれでもグレーさんやアイトさんには遠く及ばない。

 ちなみにレーネさんやアルのLvはすでに絵本に出てくるような英雄クラスだ。

 ランクSのグレーさんを超えているLvなのでこの2人と比べるのは少々可哀想だが、事実としてLv差というのはステータスに大きな差を生む。もちろん構成次第ではあるが、アルみたいな職業恩恵による超強化なんかは例外中の例外だ。


 というわけでエリア姫は前衛にはなれない。

 なってもお荷物でしかない。

 なのでオレ達と一緒に後衛になる。

 というかライリさんの護衛というポジションだろうか。オレにはアルがいるしね。


 オレやライリさんを守るのは重要だ。

 何せオレがいればまず即死しなければ回復できる。

 ライリさんの支援もユニークスキルなので普通のスキルに比べたらずっと効果が高いそうだ。


 打ち合わせを終えて軽く訓練場で連携を確認。


 ……まぁぶっちゃけ勇者の装備の2人が突出して凄まじい。

 恐らく未知の150階層以降までは楽勝レベルだろう。

 問題はそのあとになるわけだが、たぶん大丈夫だろう。このPTすごいわ。



 ……勇者の装備やっぱり壊れ性能すぎだろう。




攻略開始と思わせておいて実はまだまだやることがありました。

即席PTなのでいきなり強敵と戦うには難があります。

顎にアンカーを打ち込んでもらってショートカットしたり、連携確認をしたり色々あります。


次回予告

まずは150階層へと赴く一行。

順調に階層を突破していき、あっという間に到達してしまう。

しかし最下層ではなく、150階層に待ち受けていたのは……。


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


☆★☆宣伝☆★☆
『濁った瞳のリリアンヌ』完結済み
お暇でしたらお読みください

『王子様達に養ってもらっています inダンジョン』完結済み
お暇でしたらお読みください

匿名希望な感想や意見は下記にどうぞ~(返信はありません)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ