164,黒き舞姫
屋敷に帰って来ても興奮しているネーシャをなんとか寝かしつけた後、狐槌舞姫の首飾りに鑑定をかけてしっかりと性能を把握してみた。
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狐槌舞姫の首飾り [鬼蜘蛛] [鬼蜘蛛] [鬼蜘蛛] [鬼蜘蛛] [鬼蜘蛛]
鬼紫刃華をふんだんに使ったロケットペンダント。
チャームの中の彫り物は角度によって見せる姿を変える。
魔力を流す事によって対となる紫電の大槌の柄の真価を発揮する。
さらに魔力を流す事によって段階的に能力を解放する。
第1段階、紫電槌。
第2段階、紫電纏。
第3段階、紫幻装身。
第4段階、無紫刃華。
付与効果:筋力+44 魔力+55 器用+21 回復力+33
固有スキル:紫電槌 紫電纏 紫幻装身 無紫刃華
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スロットは5つ。
その全てに鬼蜘蛛の魔結晶が仕込まれている。
この小さなロケットペンダントのどこに魔結晶が仕込まれているのか不思議でならないが鍛冶神自らの手ほどきを受けたネーシャになら可能な事なのだろう。
鬼紫刃華では第1段階が紫電槍だったのに狐槌舞姫の首飾りでは紫電槌になっている。
まぁこの辺はオレの要望通りだ。
付与効果は鬼蜘蛛5つ分が加算されてさらに強化されている感じだ。ちなみに鬼蜘蛛は器用が増加する魔結晶だ。
鬼紫刃華の9割を使ったのに付与効果はしっかり全部残っているのがすごい。残り1割を使っている柄の方はどうなのだろうか。
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紫電の大槌の柄 [啼羊] [啼羊] [啼羊] [啼羊]
鬼紫刃華の一部を使って作られた柄。
狐槌舞姫の首飾りと対となり、狐槌舞姫の首飾りに魔力を流すと紫電の大槌へと姿を変える。
重々陣は流す魔力に応じて効果を変化させる。
付与効果:筋力+4 魔力+5 器用+1 回復力+3
固有スキル:重々陣 紫電纏
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一部と書いてあるが残り1割全てだろう。
そしてやはり付与効果がある。1割分だから鬼紫刃華の1割だけ付与されるみたいだが、狐槌舞姫の首飾りは9割分じゃなかった。まぁその辺はネーシャの腕のおかげだろう。
スロット全てに啼羊が埋め込まれているがこれが重量増加の魔結晶だ。
固有スキルの重々陣は啼羊を4つも埋め込んだからついたものだろう。おかげで任意で使用できるのはありがたい。
紫電纏はもとより設計上紫電が武器を形作るので必須スキルなのだろう。これのおかげで防御力と再生能力が付与されるしいい事尽くめだ。
これほどの素晴らしい装備を作ってくれたネーシャには本当に感謝だ。
「ありがとう、ネーシャ」
幸せそうに眠るネーシャの額に唇を落とし、ちょっと艶の減っている髪を優しく撫でてあげた。
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翌々日。
1日では完全回復しなかったネーシャもなんとか平常運転に戻ったので改めて御礼を言うためにランカスター家を訪れた……のだが――。
「ワタリちゃん、こっちは? これは? あっちはどう? これも。あ、あとそれは?」
「ちょ、ちょっと待ってください!
え、えっと、そっちは2つでこれが1つ。あっちはだめですね。これは3つです。それはだめです」
「オッケー、じゃあどれにする? まずこの2つのやつからいこうか」
ネーシャは回復に大分時間がかかったのにランカスター家ではすでに昨日から平常運転だったらしい。
そこでさっそく鍛冶を再開しているゴーシュさん達なのだが、トトさんには練武でのデータ収集を兼ねた資金集めのための魔結晶の仕込みを以前から依頼している。
特殊進化個体の素材をいじれてテンションが高まっていたトトさんは未だにそのテンションを維持しているらしくやる気満々で練武を使いまくっていたりする。
もちろんどの武器に魔結晶を仕込むのかはオレが決めるのでなかなか大変だ。
魔結晶もゴーシュさんがたくさん仕入れてくれたので色々試せる。
魔結晶はレアアイテムな上にオークションからまだ日も経っていないので、なかなか市場には流れない。しかしそこは蛇の道は蛇。有る所には有るというわけだ。
そんな感じにトトさんのテンションに引きずられてどんどんゴーシュさん作の装備に魔結晶が仕込まれていく。
データ収集が目的でもあるので、スロット0の装備にも安い魔結晶を仕込んでみて失敗のデータもきちんと収集している。
ちなみにこの大量の練武作業は初めてではない。
すでに何度かやっていてデータはかなり集まっている。
魔結晶の仕込みに成功した装備はゴーシュさんの伝手を頼って売り払われ、その資金を使ってまた魔結晶を大量に買い込むというスパイラルを形成している。
もちろん高い魔結晶や2つ3つ仕込みに成功した装備は値段が跳ね上がる。
そのため資金は凄まじい速さで増加の一途を辿っていたりする。
ちなみにすでにゴーシュさんの伝手を使っても売れないレベルの物がいくつか出来上がってしまっていて、1番近い時期に行われるオークションに出品が決まっている。
1つ2つではないから一体資金がどこまで膨れ上がるのかがちょっと怖い。
「はい、完成!」
「お疲れ様です、トトさん」
「ワタリちゃんもお疲れ様。それにしても本当にワタリちゃんはすごいねぇ。どうやったら魔結晶の仕込が成功するかなんてわかるの?」
「それは企業秘密ですよ」
「ふふ……そうだったね。まぁボクとしては練武の練習になるからなんでもいいけどね」
とりあえず買い集めた魔結晶は全部使ってしまったのであとはまたこの大量の魔結晶の仕込みの成功した装備を売り払って、魔結晶を買い込んでもらう。
データ収集はあと2,3回これを繰り返したら終わりでいいだろう。でも資金はあった方がいいから続行するつもりだ。
これから密かにランカスター家から魔結晶を仕込んだ装備が大量に市場に流れる事になる。一時的に市場は混乱するだろうが、落ち着いた頃には今までよりも安く強力な装備が手に入ることになる。
そうなれば強い魔物に挑む冒険者も増えるだろう。貴重な魔結晶の入手確率も上昇し、入手もし易くなる。
これからも魔結晶にはお世話になるだろうし、欲しい魔結晶がお金を払えば手に入るならそっちの方が楽でいい。
自力で出すのはかなりきついしね。
出ないなら、取ってきてもらおう、魔結晶。
「そういえば防具の方はどうなりました?」
「ユユが最終調整をしているはずだよ」
「あ、そうなんですか。じゃあユユさんのところいってきますね」
「あ、まってまって、ワタリちゃん。今きっとかなり慎重に作業してるからいくなら後にしてあげて」
「あぁ……。それもそうですね。すみません、気づかなくて」
「ううん、ワタリちゃんは鍛冶師じゃないんだから気づかなくても無理ないよ。
じゃあリビングでちょっとお茶でもしながら待たない?」
「了解です」
トトさんがフォローしてくれたけど、オレとしたことがそんなことにも気づかないなんて……。トトさんのテンションが移っちゃったのかな?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しばらくアルの淹れる素晴らしい紅茶を飲んでいるとユユさんが晴れやかな達成感溢れる顔を輝かせながらリビングに入ってきた。
「おっまたせー! 出来たよー!」
「お待たせしました、お嬢様!」
「お疲れ様です。おぉ~ばっちりですね」
「でしょでしょ~! この辺とか超自身作だよ!」
ユユさんがリビングに入ってくると同時にネーシャが真っ黒いマネキンを抱えて入ってきた。
マネキンに着せられているのがオレ用の防具。
その名も――。
「見て見て! この靴! 黒迅豹の皮をふんだんに使いまくった超高級品だよ!
緻密に施された刺繍には魔結晶が溶け込んでるから効果もばっちり!」
膝まで覆うタイプの漆黒の靴は黒迅豹のグリーヴ。
「さらに靴とお揃いのこの手袋! フォーマルな中にも防具としての性能をこれでもかと詰め込んだ最高の逸品!
私的にはこの手首のファーが超イカス! 希少な黒狼の皮と毛を使ってるからやばいよ!」
肘まで覆う黒い礼装用の手袋は黒狼のドレスグローブ。
「止めはこれだー! 私が寝ないで縫い上げた最高傑作!
そのまま王さまに謁見出来ても不思議じゃないくらいの完璧なドレス!
でもでもでもでもでもー!
驚くなかれ! その防御力は希少な魔物の素材をふんだんに使われている生地と魔結晶を溶かし込んだ私の刺繍のおかげで天下一品!
尚且つ魔力を流す事によってさらに強化される優れもの! もうワタリちゃん専用の最強の防具だよ!」
靴と手袋とお揃いの真っ黒なドレスは舞姫のブラックドレスアーマー。
荒い息を吐きながらやり遂げた感がすごいユユさんの演説は全体的な説明から各装備の細部の解説へと移り……さらに細部の細部へと移っていった。
……あれ? いつまで続くのこれ……。
その日、日が暮れるまでユユさんの演説は続いた。
ユユさんに自分の作ったものを語らせてはいけません。
ワタリちゃんでも止められないながーい話になってしまいます。
ちなみにネーシャはそんなユユさんを尊敬の瞳で見て、しっかりと自分の技術にするために聞き入っています。
ラスボスはユユさんで決まりだ!
次回予告
さっそく新たな装備を着込むワタリちゃん。
しかしいきなり実戦というのもちょっと怖い。
慣らしというのはとても大切で……。
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