第4章 『デンゲキ』!
「おい、クラリット! もっとスピードでないのか?」
「無理言わないでくださいよ! 僕の魔力じゃこのスピードが限界です」
クラリットは『魔車』に魔力を注ぎ、ハンドルを握って操縦していた。
「牙さんは魔力ゼロで役に立たないんですから、文句言わないでくださいよ!」
「はいはい。わかったよ。黙っていればいいんだろ……」
牙はふてくされた。牙は強靭な肉体を持って生まれてきた。しかし、そのかわりに魔力というものを一切持たない。それは牙にとってコンプレックスであり、クラリットはそのことを知った上で、言葉を発していた。
「そうだ、今のうちに作戦の説明をしておきますから、ちゃんと聞いてくださいね」
「えー。いいよ。どうせ作戦聞いたところで、俺の戦い方じゃ協力なんてできないだろ? 俺はただ、でかい剣振り回して、それを敵にぶつけることしか出来ないからな」
「そんなこと言わずに、ちゃんと聞いてください!」
クラリットはそう言うと、作戦の説明を始めた。
「今回、ブルハリを止めるために1000人近い騎士とハンターが集まっています。この1000人を一箇所に集めてブルハリを止めるのもいいのですが、仮に失敗した場合、そこで終わりになってしまいます。それに、ブルハリは常に走っているので、必然的に接触できる時間は限られてしまいます。そこで、1000人を3つのグループに分けて、“ポイント1”“ポイント2”“ポイント3”という3つの場所にそれぞれ配置します。“ポイント1”には600人の戦士を配置します。“ポイント2”には400人の魔法使いを、そして“ポイント3”には……牙さん、聞いていますか?」
前を向いて運転をしていたクラリットは、牙がちゃんと話を聞いているか横を見て確認した。案の定、牙はいびきをかいていた。
「『デンゲキ』!」
クラリットは攻撃魔法である『デンゲキ』を唱えた。
「いでぇ! なにすんだこのやろう!」
「話を続けます」
クラリットは怒鳴る牙を無視して話を続けた。
「“ポイント”は40キロメートルごとに設置されています。ブルハリは時速40キロで走ってくるので、1時間ごとに“ポイント”を通過する計算になります。また、一番グリーン王国に近い“ポイント3”からグリーン王国まで、約80キロメートルあります。つまり、ブルハリが“ポイント1”を通過してからおよそ、4時間でグリーン王国に到達してしまうのです。ですから、僕らは各ポイントに兵力を集中し、協力してブルハリを止める努力をする、もし失敗したら『魔車』に乗ってブルハリを追い越し、次の“ポイント”へと向かう。そしてまた、ブルハリを止めるために共闘する。これを繰り返してどこかの“ポイント”でブルハリを止めることが出来れば、僕らの勝利となります。わかりました?」
クラリットは再び横にいる牙を確認した。牙は寝ていた。
「『デンゲキ』!」
「ぐわぁ!」
~用語解説~
『デンゲキ』
攻撃魔法の一つ。電撃によって相手にダメージを与える。強力な魔力を持つ者が使えば、まるで雷のようなダメージを相手にあたえることができる。その衝撃は、一目ぼれをしたときに全身を流れる電流と似ているという。
「ビビッと来ました! 僕と結婚してください!」
「いやです。初対面の人と結婚とかマジ無理……キモイ」