第19章 落ちろ!
「バヒヒヒヒヒヒューン!!」
(落ちろ!)
誰もが心の中でそう、祈っていた。もはや、彼らに出来ることは何もない。ただ、結果を待つことしか出来なかった。それでも、彼らは必死に祈った。
「バヒヒヒヒヒヒューン!!」
「落ちろ!」
気がつくと、みんな声に出していた。強い願いとは、自然と表に出てきてしまうものなのだ。ほんとに好きなら、「好きだ」と言葉に出るはずだ! ほんとに大切なら、「あなたのことが大切だ」と行動で表現してしまうはずだ! “強い思い”は絶対に、表に出る。もし、行動できないと嘆いている人がいたら、それは思いが足りないからだ。もっと、もっともっと! もっと強く願えよ!
「バヒヒヒヒヒヒューン!!」
「落ちろぉおおおおお!!!!!」
気がつくと、みんな叫んでいた。“叫び”、それは単なる声でしかない。さらに言えば、ただの空気の振動でしかない。しかし、そこにはとてつもないエネルギーがあるのだ。叫びは人にエネルギーを与える。歴史をつくってきた偉人を見てもらえばわかるだろう? 彼らは必死に叫び、必死に周りの人間を動かし、そして、自らの手に勝利を勝ち取ったのだ。最後まで自分の“思い”を叫び続けた者だけが、勝利を手に入れることができるのだ。歴史をつくることができるのだ。
「ズドーーーーン!!」
数秒後、大きな落下音と共に、砂煙が宙に舞った。
その瞬間は、やけに静かで、やけに空虚で、やけに長く感じた。