第18章 作戦失敗?
人事を尽くして天命を待つ。4つの穴を掘り終えた今、ラミールはただ待っていた。そう、勝利の時を。
ラミールの指揮の元、4つの落とし穴は2時間50分という非常に短い時間で完成した。これも、全員の惜しみない協力があったからだろう。力の強い戦士だけでは到底間に合わなかった。魔法使いがその魔力で土をやわらかくしたおかげで、土を掘り起こすスピードが非常に速くなったのだ。それに、グリーン王国の掘削道具が充実していたことも時間短縮の助けとなった。グリーン王国には大量のスコップや一輪車があったし、数機だが巨大なドリルを持つ掘削重機もあったのだ。
そして何より、全体を指揮したラミールの存在が大きかった。ラミールには全体を見渡して、それぞれに最適な指示を出すことができる、『指揮官』としての才能があった。ラミールの無駄の無い指示と、多くの人力、そして「絶対にこの作戦を成功させる」という強い意志のおかげで、わずか2時間50分という短時間で4つの落とし穴を作ることに成功したのだ。
「バヒヒヒヒヒヒューン!!」
そしてついに、ブルハリがやって来た。全長40メートルを超える巨馬。その体はまるで空のように青く、土煙を上げながら走る姿はまさに、『ブルーハリケーン』と呼ぶに相応しい。
「皆の者、直ぐに離れろ! 安心しろ、ブルハリは我らが頭脳、クラリットが残した図面通りに進んでいる。このまま行けば、我らの勝利は揺ぎない」
ラミールは直ぐに指示を出し、全員を非難させた。
「バヒヒヒヒヒヒューン!???」
次の瞬間、突如ブルハリが体制を崩した。
「何だ!?」
グリーン王国にいたラミールの目からは、それが“何”であるか確認することはできなかった。けれど、これだけはわかった。ブルハリは地面にあった“何か”を踏んだため、わずかに体制を崩したのだ。
「くそ! あんなところに障害物が転がっていたなんて、気がつかなかった……。くそ、あんな障害物を見逃すなんて! 詰めが甘かった! くそ! くそ、くそ!」
ラミールは自分の詰めの甘さを心底悔いた。もっと、広い視野を持って周りを見渡すべきだったと後悔した。これでもし、ブルハリの進路がずれたら、もはや穴に落とすのは不可能だろう。せっかくみんなで協力して、時間内に穴を掘ったというのに……。
「バヒヒヒヒヒヒューン!!」
「ラミール隊長! 大丈夫です、ブルハリのやつ、体制を立て直しました! あの強靭な足腰からしたら、あんな障害物 屁でもなかったみたいですよ!!」
「ほんとうか!?」
ラミールは直ぐに図面とブルハリとを交互に見て確認した。確かに、わずかなズレはあるかもしれないが、おおよその進路から外れたわけではなさそうだった。
小さな障害物によって、はやくも失敗に追い込まれそうになった“落とし穴作戦”。しかし、その作戦を救ったのは、今まで散々苦戦を強いられてきた、ブルハリの強靭な足だった。皮肉にも、その強靭な足によって、“作戦失敗”を免れることが出来たのだ。