第14章 本物のつわもの
「みんな、聞いてくれ……作戦は…………全て失敗した」
“ポイント1”と“ポイント2”で奮闘した騎士やハンター達は負傷者を除き、魔車に乗って再びグリーン王国に集まっていた。もう一度ブルハリと戦うために。しかし、そんな騎士やハンター達が聞いたのは、ラミールの口から語られる敗北宣言だった。
「もう、策はない。みんな、速やかにグリーン王国から非難してくれ。これが、最後の命令だ……」
ラミールの敗北宣言を聞いて、騎士やハンター達はざわめいた。
「まだ、ブルハリが来るまでに2時間近くあるんだろ? それなら、まだ何か方法があるんじゃないか! ブルハリを止めることができる方法が!」
一人の騎士がそう、叫んだ。
「そうだ! 俺はまだあきらめないぞ! まだ戦える。絶対にブルハリを止められる方法があるはずだ」
次いで、一人の魔法使いも叫んだ。その叫びを皮切りに、他の戦士や魔法使い達も次々に声を上げた。
「俺も戦う!」
「私も!」
「僕もまだまだ戦えるぞ!」
ラミールは、自分以外は完全にあきらめていると思っていた。自分のようにあきらめずに、最後の最後まで戦おうという強い意志を持つ者など、いないと思っていた。しかし、それは間違っていた。今ここにいるのは、あきらめることを知らない、本物のつわものだけだった。
「みんな、ありがと……」
ラミールがみんなに感謝しようとした瞬間、
「ほほほ」
突如、賢者パピルがラミールの横に現れた。おそらく、どこかから『テレポート』の魔法を使ってきたのだろう。
「負けっぱなしは悔しいからのぉ。ブルハリに『スロウ』の魔法をかけてきてやったぞ。特別に無報酬でな」
『スロウ』、それは対象者のスピードを半減させる魔法。賢者パピルのおかげで、ブルハリがグリーン王国に到達するまでの残り時間が、2時間から4時間に延長した。
「賢者様~! ありがとう!!」
何も知らない群集は、純粋に賢者パピルに感謝した。
「それじゃ。ラミールよ、報酬忘れるなよ」
ドヤ顔でそう言うと、賢者パピルは再び『テレポート』の魔法を使い、どこかに消えた。
<一方その頃、牙とクラリットは……>
「はぁ、はぁ……もう少しだぞ。もっと速く走れ」
「むちゃ言わないでくださいよ……。ぼ、僕は牙さんと違って頭は良いけれど……体力はないんですよ……」
「な、なんだとぉ……てめぇ、今間接的に俺はバカだって……はぁはぁ……言ったろ?」
「そうやって、人の言葉を……変に解釈するところが……バカだって……はぁ、はぁ……言っているんですよ……」
グリーン王国に向かって走りながら、喧嘩をしていた。