白い砂浜
「綺麗な海ねー!」
「うおおおおおお!」
旅行に来た四人の男女は砂浜に着くなり、荷物を投げ捨て遊び始めた。人があまり来ない穴場だというのでそう警戒しなくても良かったのだ。実際、他に人影はなかった。
「ねえ、あっち行ってみない?」
そのうち、女の一人が海にポツンと浮かぶ島を指さしそう言った。泳ぐには少々距離があるが行けないこともない。弱音を吐けば男が廃る。ゆえに二人の男は同意し、もう一人の女もここに残されるのは嫌ということで一緒に行くことにした。
「ほら、見て! もしかしてって思ったのよ! ホワイトビーチよ!」
おお、と感嘆の声を上げ、飛び回る一同。その島の砂浜は太陽の光に照らされ目が眩むほどの純白であった。
スマートフォンのカメラを構え、はしゃぐ。
と、そこへ一人の初老の男が現れた。
ピタリと動きを止める一同。その男、どことなく浮浪者めいて映るが、男のさらに奥へと視線をずらせば椅子や小屋のようなものが見える。
「あ、その、ここってもしかして、プライベートビーチ……だったり?」
「まあ……な」
口数が少なく表情の変化が乏しい男だった。代わりとばかりに一同が「知らなくて」と言い訳めいたことを延々と喋る。
「写真が撮りたいのか……」
と、言い訳の中、そう耳にした初老の男は手招きするとトボトボと歩き始めた。無視するわけにも行かず、一同はあとに続く。すると驚いた。
「綺麗……」
連れて来られた場所は浜辺からそう離れていない位置にある洞窟であった。宇宙の星々さながら発光する天井。その神秘と美しさに一同、息を呑んだ。
「光っているのは何かしら?」
「苔かキノコじゃないか?」
「いいや、確か虫さ。そういうのがいるって前にどこかで見たよ」
「どうだっていいわ、ほら、写真を撮りましょう!」
「……もっと奥がいいぞ。ああ、そうだ、そこだ」
「ああ、本当ねぇ。ここにも白い砂が」
「ほら、みんな早く寝そべって! ここで撮りましょう!」
「いいねいいねぇ!」
「はははははは! あ? ああああああ!?」
悲鳴、そして咀嚼音のあと、生温かな風が初老の男の体を吹き抜けた。
その風に乗り、サラサラと白い砂が洞窟から砂浜へと運ばれていく。
風が止むと初老の男は目を開け、そして落ちていたスマートフォンに手を伸ばす。
写真か……考えもしなかったな。以前はこの島に来たやつらは、まず島の中腹にある旨い果実や酒、果ては麻薬などで油断させたものだが、これほど簡単かつ早くここまで誘導できるとは……。
初老の男はふーむと少しの間考えたあと、たどたどしい手つきでスマートフォンを操作すると、天井に向けそして写真を撮った。
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#ずっとここに……