双子の狼
・配役一覧
ナレーター(ナ)
狼の双子兄(兄)
狼の双子弟(弟)
フクロウ(フ)
台本↓
(森の音)
ナ-1:罪人は森に送られる。森の植物となるのだ。動くからだを奪われ、心を奪われ、この森の1部となる。
ナ-2:この森の主はそうして、何百年も前から人を選び、この森の自然を保ち続けてきた。
ナ-3:森の主に生み出された獣は役割を与えられ、森が生きている限り、森とともに永遠のときを過ごす。
ナ-4:森までの案内は、オオカミの双子が担当している役割だ。兄は嗅覚が鋭く、弟は目が見えず耳がいい。
ナ-5:少年の姿をしているが、決して侮ってはいけない。逃げ出そうとしたものは、植物になるより酷い仕打ちを受けるからだ。
ナ-6:今宵もある1人の幼い少女が、森に選ばれた。
ナ-7:オオカミの双子が迎えに出る。
ー場面切り替えー
(人型の姿をした双子が、薄汚れた少女の前に立つ)
兄-1:あなたは森に選ばれました
兄-2:もしやり残した事があるならば、3日の猶予を与えます
弟-1:3日は好きにしろ、逃げても迎えに来る
(少女の様子も見ず、双子が少女の元を去ろうとする)
(すると、少女が兄の服の袖を掴む)
兄-3:・・・っ(嫌そうな顔をする)
弟-2:珍しいな、自分の意思でついて来ようとするなんて。生存本能腐ってんのか
(弟が少女のそばにしゃがむ)
兄-4:状況が理解出来てないだけじゃないか?キョトンとした顔してるし
弟-3:俺、見えないし
兄-5:騙されて人間に目玉2つともとられたお前が悪い
弟-4:このガキ、変な音がする、本当に人間か?
兄-5:どう見ても人間だ、でも確かに、少し変な匂いだな
弟-6:俺らだって、人の形使ってるしな。まぁ、フクロウに聞けばわかるだろ
兄-6:そうだな
弟-7:ほら、ついてこいよ、え?手?つなげって?
兄-7:爪でも剥ぎたいんじゃないか?
弟-8:爪は困るな、狩りに支障が出る
兄-8:そういう問題じゃない
弟-9:兄ちゃん、扉出して。おれ、ほら、手が空いてない
兄-9:わかった、注意しとけよ。手まで使い物にならなくなったら、僕の仕事が増える
(兄が魔法で森への扉を出す)
弟-10:こんな小さいガキに何ができるんだよ
(3人が扉をくぐる)
ー場面切り替えー
(森の音)
(フクロウの元に着く)
兄-10:フクロウ、仕事中にごめん、少し聞きたいことがあるんだけど
フ-1:その少女のことね
弟-11:相変わらず俺たちのこと全部筒抜けなんだな
フ-2:そういう役割を与えられているから
兄-11:この子、なんか変な匂いがするんだ。他の罪人と何か違う気がして、何かわからないかな?
フ-3:罪人かどうか、という質問なら、罪人じゃない。植物にしようとしても、森が拒否するでしょうね。
兄-12:森が拒否・・・?どうして
フ-4:その子は森の外で、森の主に育てられたの。ロア、ニア、貴方たちの為にね
(無感情だけど、名前を呼ぶ時だけ愛がある感じ)
(⚠️愛は表に出ない、セリフは無感情のまま)
弟-12:えっと、つまり、どういうこと?
フ-5:末っ子で問題児のあなた達のことを見かねて、森が世話係としてこの子をつけることにしたの。森のものを食べて育っているから、3歳くらいに見えるけど、あなた達と同じくらいの歳よ。人間だけどね。
(ゆっくり、低く、たんたんと説明)
兄-13:ごめん、全然頭に入ってこない。世話係?何も世話を焼かれる必要が無いのに?
弟-13:そもそもこんなガキじゃ、世話するのは俺たちの方だろ
フ-6:だから、世話係よ
(世話係をつけられたことが、ペナルティじゃないことをわかっている様子。傍観しているような口調)
兄-14:問題起こしたペナルティってこと・・・?
フ-7:そこはあなた達の捉え方次第
(無感情、傍観姿勢)
弟-14:こいつ名前は?
兄-15:名前なんてどうでもいい
フ-8:主はコットンって呼んでた
(説明、無感情)
弟-16:俺らよりよっぽど動物みたいな名前だな
兄-17:そもそも、どうやって木が人間育てるんだよ、主は森の中心部から動けないだろ
フ-9:仕事があるの、もう行ってくれる?
(無感情だけど少しわずらわしそうに)
兄-18:あぁ、ごめん、でも・・
弟-17:兄ちゃん、俺たちも仕事がある。今はどうしようもない。とりあえず行こう。
兄-19:うー・・・わかった(すごく嫌そうな顔)
フ-10:ロア、その子はできれば(壊さないであげて)・・・きっと、主が悲しむから。
※()の中は言葉に出さない
(セリフ全体は無感情なまま、無感情の奥に悲しそうな心がある)
兄-20:・・・断言はできない
弟-18:兄ちゃん、行くよ
兄-21:今行く
ー場面切り替えー
弟-19:兄ちゃん、人間って何食べるの?
兄-22:雑食なんじゃないか?ニア、お前いつまで手繋いでるんだ?
弟-20:いや、こいつすぐ転びそうで。どこで転びそうかも見えないし、力加減間違って腕ちぎりそうだから変わってくんない?
兄-23:絶対嫌だ
弟-21:意地はんなよ、できない俺を見てもどかしくなってきただろ?できるとこ見せてくれよ
兄-24:お前本当に性格悪いな、誰の真似だ?
弟-22:正直者と言って欲しいね、この前人間と話してた兄ちゃんの真似
兄-25:正直に言う判断を選ぶことが性格の悪さだ、変なところ真似するな
弟-23:そっか、ごめん。でも、こんなふわふわの手がちぎれる音は聞きたくない。兄ちゃんを説得する手も浮かばない。
兄-26:・・・はぁ、貸せよ
弟-24:ありがとう
兄-27:どういたしまして
(兄がコットンの手を掴む)
弟-25:ねぇ、兄ちゃん。俺たちがいつも連れてきてた罪人って、全部罪人だったと思う?
兄-28:・・・どうして?
弟-26:コットンは結果的に罪人じゃなかった、だけど森からの指示はいつも通りだった。コットンがもし俺達から逃げてたらさ・・・
兄-29:考えすぎじゃないか?僕たちが森の主の指示について、変に考える必要はない。
(圧をかけるように)
弟-27:うん、まぁ、そうだな
ー場面切り替えー
ナ-8:森の獣に人間の世話係がつくことは、かつてない事だった。
ナ-9:この出来事が、森に、森の獣たちにどういう影響を及ぼすのか、まだ未知数だ。
ナ-10:森が意図を持って行っているのか、意図を持たず行っているのか、それは森の中心に近い獣のみが知っている。