コミックス4巻発売記念番外編:夏
本日8/5コミックス4巻発売されました!
詳細は活動報告、またはこの下の方をご確認ください!
楽しんでいただけますように!
「あっっつううい」
私は自然と声が出た。
降り注ぐ日差し。ムワッとした熱気。ミンミンうるさいセミ(セミいるんだこの世界)
そう、夏である。
「暑い……暑い……」
前世で過ごした日本ほどではない。日本ほどではないが、当然夏はこの世界だって暑い。そしてこの世界、エアコンはない。
エアコン……あれすごい発明だったなあ……。
思わず遠い目をしてしまう程度に暑かった。
ただでさえ病弱な私だ。夏は外の日差しに勝てずに家に引きこもっている。
「日傘にも限度がありますからね」
「そうね」
アンネから飲み物を受け取りながら答えた。日傘があればかなり変わるが、それで長時間外に出られるほど私の身体は強くなかった。
「暑い時は中側から身体を冷やすことも大切なのよ……そう、冷たい飲み物とか飲んどくべき……アンネも飲みなさいね……」
「はい、お嬢様」
「あと塩分……水分だけでなく塩分も摂りなさいね……」
「はい、お嬢様」
アンネがうちわで扇いでくれる。ありがとう。自分でやろうと思ったけど腕の力もないからすぐに力尽きちゃったのよね。
「あつぅぅい」
「なんだい! ダラダラして!」
バーンッと扉を開けて入ってきたのは――おばあ様だった。
「おばあ様!?」
驚くと同時におばあ様の後ろからルイスが現れた。
「おばあ様、フィオナは『夏バテ』というやつで……」
「そうだよ。無理をさせないでよね」
さらに後ろからエリックが現れた。
「誰が無理なんかさせるかい。うちの大事な嫁だよ!」
「まだ嫁には行ってないんですけど……」
「あたしはただね!」
話を本当に聞いてくれないな。
「暑さを軽減してやろうと思ってね!」
おばあ様が指をパチンッと鳴らすと部屋に人が入ってきた。
「なになになに!?」
服装的におばあ様の使用人のようだけど、いきなりの展開に困惑する。
こちらが混乱している間に使用人たちはテキパキと動いていた。
一人は大きな箱から氷を出し、それを水桶に入れ、一人はさらに細かくなった氷を氷嚢に入れる。一人は大きなうちわを持ってこちらに向き直る。
私が状況把握している間に皆が素早く動き、全ては完了していた。
ベッドから椅子に移動した私の足は水桶に入った氷水につけられ、脇の下と頭に氷嚢が乗置かれていた。氷を前に置いた状態で大きなうちわで扇がれ、こちらに風が送られる。それが氷のおかげでひんやりしている。
「涼しい~」
なんという快適さだ。
「ふんっ! まったく、すぐにあたしに相談したらいいものを」
おばあ様はブツブツと文句を言っている。
「いいかい、こういう時に金持ちの婚約者を利用しなくてどうするんだい!」
ルイスが『俺!?』という顔をしている。
「無駄に金があるんだから、使わせてやればいいんだよ! 氷は安くないけどうちにとっては痛手でもないさ! 夏の間はその使用人も預けておくから涼しくしておくんだよ!」
おばあ様はルイスをチラッと見た。
「本当はあんたがさっさとやればいいのに」
「俺は夏バテに効く食べ物や製品開発を……」
「時間かかることより今できることをやる方が先だろうに」
ルイスは口を閉ざした。おばあ様には口で勝てない。
「そうか、金持ちならこういうこともできるのか。初めからこうしておけばよかったな」
エリックがしみじみと言った。
私は快適な涼しさを堪能し、アンネはどこか悔しそうだった。
さっきまでうるさかったセミの鳴き声が心地よかった。
本日8/5
『病弱な悪役令嬢ですが、婚約者が過保護すぎて逃げ出したい(私たち犬猿の仲でしたよね!?)』
コミック4巻発売されました!
詳細は活動報告、またはこの下の方をご確認ください!
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