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79、リビエン帝国


 ふと声が割って入ってきて、私は飛び跳ねた。


「ミ、ミリィ!? 起きたの!?」


 いつからいたの!? 聞かれた!?

 冷や汗をかきながら、ミリィの反応を窺う。


「変な箱の中で寝たから身体が痛いんだけど。なんで私船にいるわけ? 説明してくれる?」


 この感じは聞いてない……?

 私は胸をなで下ろした。

 私は視線でレンを見ると、レンは首を振った。そうだ、そのほうがいい。ミリィは信用できないから、仲間に入れないほうがいい。


「ミリィも転生者だから連れてこられたのよ。なんで同じ転生者なのに自分は大丈夫だと思ったの?」

「うるさいわね!」


 ミリィがキャンキャン吠える。


「私は本当に大した知識なんてないのよ! あんたみたいに取り柄がないの! 自分が優れてるからって偉そうに!」


 なんとなくわかってたけど、ミリィが私を嫌う理由は、私が悪役令嬢というポジションだからという理由だけではない気がする。


「私を家に帰してよ!」

「無理だ。すでに出航しているのに戻れるわけがないだろう? 戻って捕まるリスクを負うと思うか?」

「知らないわよ! 捕まってもあんたが悪いんでしょ!」

「お前も共犯だから当然捕まるぞ」


 ピタリ、とミリィが吠えるのを止めた。


「え?」

「お前はフィオナ嬢を誘拐する協力をしただろう。当然お前も罪を問われる。俺もきっちり依頼があったと証言するしな。契約書が証拠になる」

「……そんな」


 なぜ自分は無傷だと思い込むことができたのか。

 ミリィはさっきまでの勢いをなくし、顔色を悪くした。


「帝国に大事にしてほしいなら、大人しくしておくことだな。自分の存在意義を教えれば、必要なくなるまでは大事にしてくれるだろう」

「存在意義……」


 ミリィはブツブツ呟きながら、甲板から去っていった。


「話を合わせてくれて助かった」

「いえ、ミリィがいたら、ややこしくなるから」


 彼らの企てるクーデターには、何がなんでも成功してもらわなければ困る。なぜなら、失敗したら私は帝国に幽閉されてしまうのだ。いや、もしかしたら協力者であることがバレて、想像より酷い目に遭うかもしれない。

 この話に乗った時点で、私と彼らは一蓮托生だ。


「ミリィは仲間にしないのよね?」

「ああ。彼女の性格だと信用ができない。……甘い餌をぶら下げられたら、逆に帝国側に寝返る可能性がある」


 確かにミリィは自分勝手な性格のようだった。もし帝国側に「協力したらいい暮らしをさせてやる」などと言われたら、きっとそちらに手を貸すだろう。


「本当は置いてきたかったが、もし早く目覚めて帝国に行くのに支障があると困るから、仕方なく連れてきたが……」

「いい判断だと思うわ」


 もし気絶しているミリィが見つかったら、なぜ倒れていたのか、私の誘拐と関わりがないか調べられるだろう。ミリィの性格だと黙秘していることができずに、すべて暴露してしまいそうだ。


「それで、私は何をしたらいいの?」

「ああ、やってほしいのは……」


 私のやるべきことを説明され、私は一生懸命頭に叩き込む。もし、間違ったことをしたら終わりだ。


「わかった。任せて」


 何度も脳内で確認しながら、頷いた。


「……巻き込んですまない」

「今更?」


 それなら攫わないでほしい。もう無事に帰るにはやるべきことをやるしかないのだ。巻き込まれた私には選択肢はない。


「すまない……」


 しかし、本当に申し訳なさそうなレンに、私はため息を一つ吐いた。

 そして、手を振り上げる。

 彼の頬からバチーン! といい音がした。

 驚いて目をぱちくりしている彼に笑う。


「これで一先ず許してあげる。だから、無事に成功させることだけを考えてよね」


 頬に手を当てたレンが、少し間を置いてから、笑った。


「……ああ、必ず成功させる」



          ◇◇◇



「すごい……」


 船から降りて、私はポツリと呟いた。

 今までの私が見てきたどの風景とも異なった。

 まるでマンションのような建物もあり、遠くに工場群のようなものも見える。しかし、街にあまり煙や公害のようなものは見えない。転生者の中に、そうしたことに詳しい人物がいたのだろうか。

 道路も整備されており、見たことの無いものがたくさんあった。それを見ると、私の国の文化が何世紀も遅れているように思える。

 しかし、そうではない。これらは転生者から知識を奪うことで手に入れた豊かさなのだと、私はもう知っている。

 とにかく帝国の首都は便利そうなもので溢れており、さぞ暮らしやすそうに見えたが、よく見ると人々の服はボロボロで、町の光景とのちぐはぐさに違和感を感じた。皆顔に活気がなく、ただ、生きている感じだ。

 平民が虐げられているというのは本当のことなんだろう。


「――こんなに値上がりしただと!? ふざけるな!」



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本気で抹殺の理由を得ようとしていると震えるクリスティナは、好感度を下げないために労働することを思いつく。一方、公爵は監視の他にも思惑があるようで……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 一つ大きな疑問。 リビエン帝国の上層部、 「軍の兵士も平民であること」 に、なぜ気付かないのでしょう。
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