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7:空から人が降って来るなんて

「アリサ……もう勘弁してくれ」


「何言ってるんですかウィルド様! まだちょっとしかお買い物してないじゃないですかぁ〜」


「金がなくなる!」


「買い足らないですよ、もぉう」


 頬を膨らませて不服を表すアリサを見つめ、俺はどうしたものかと困り果てていた。


 買い物を許したのがいけなかった。飾りたいと言っていた花を買って終わりかと思えば、菓子やらアクセサリーやら何やらと可愛らしいものを売っている店を見つけては立ち寄り、時には「デートみたいですねっ!」なんて言いながら喫茶店に入り……。

 そうしているうちに時間はあっという間に経ち、手持ちの金も底をつきかけていた。


 女の買い物というのは恐ろしいと聞いたことがあるがここまでとは思わなかった。甘く見ていた数時間前の俺を殴りたい気分でいっぱいである。


「あっ! ウィルド様、あっちに可愛い雑貨を売ってるお店があります! あんなの見るのアリサ初めて! ねぇねぇ、買っていいですよね〜?」


「ダメに決まってるだろ! いい加減にしろ」


「ウィルド様のケチ。アリサ、見損ないました」


「お前に見損なわれたところで別に傷つかないぞ、俺は」


「むぅ……。わかりました、じゃあ後一つだけですから! ねっ?」


 可愛い顔で、しかも上目遣いで言うものだから、やはり厳しく言えない。

 俺は仕方なく「後一つだけだぞ」と言い、先を走っていくアリサの背中を追うため歩き出した。

 だが、俺の歩みはすぐに止まることになる。なぜなら――。



「きゃあああああ――――!!!」



 叫びながら、空から何か……そう、人間が、猛烈な勢いで落下して来たからだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 この国に古くから伝わる神話の中で、雲の上から落っこちた空の姫様が地上の英雄に助けられ、この国を築くきっかけになった、みたいな話があったように思う。

 もちろんそれはおとぎ話であり、空から人間が降って来るわけがない。今日までそう思っていた。


 だから彼女を見た瞬間、もしかして天界の姫では!?なんて馬鹿なことを考えたりしてしまったものだ。

 そして、その無駄な思考が命取りになった。


「ぎにゃあッ!?」

「うわあっ」


 考え事をしているうちに空から降って来た人物が俺に急接近しており、避ける前にぶつかってしまったのである。ゴチン、と互いの額が勢いよくぶつかり、次の瞬間には俺は地面に全身を投げ出していた。


 視界がぐるぐると回り、一体何が起こったかわからなくなる。遠くで悲鳴のような声がし、俺の意識は暗転し――。


「ウィルド様!?」


 ピンク髪の少女に思い切り体を揺すられ、遠のきかけていた意識が戻って来た。

 まあ、実際数秒は気を失っていたのかも知れない。それほどに衝突の衝撃はすごかった。


「う……あ、アリサ? こりゃ一体」


「アリサに聞かれても知りませんよっ! そこのおねーさんに聞いてみたらどうですか? アリサとチューする前にウィルド様のおでこにチューするなんて! 卑怯です! 正体不明のおねーさん、許しませんからっ!」


 すぐ近くでガンガン怒鳴られて頭が痛んだ。目がチカチカする。

 額にキスされたわけではないと弁明しようにも、この時の俺は混乱していたのでそこまでの余裕がなかった。代わりにアリサの頭を撫でて黙らせ、『おねーさん』とやらの姿を探した。


 ……そしてその『おねーさん』はすぐに見つかった。俺のすぐ隣に四肢を投げ出し、白い太ももをこちらに向けて横たわる人物。

 直視できないその人こそ、アリサの言う『おねーさん』であった。

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[一言] 親方! 空からおねーさんが!
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