6:街へお出かけ
「アリサも一緒にお出かけですか!? うわーい、やったー!」
「はしゃぎ過ぎだろ……」
本当に十七歳なのか?と疑いたくなるほど大喜びするアリサに呆れつつ、俺はため息を漏らした。
今日はアリサと二人で少し遠くの街まで出る予定なのだ。別に日帰りなのでアリサを置いて行ってもいいのだが、何せこいつを一人で残すと何をやらかすかわからない。今までだって、俺の短時間の外出の間に部屋中どろんこにしていたことがあるくらいだ。本当にあれは一体どうやったのか不思議でならない。
ともかく、そんなわけで俺はアリサを連れて行かざるを得ないわけだが。
不安だ……。非常に不安だ。何故なら、この俺が、女の子と二人で出かけるからである。いや、もちろんデートとかではない。そんな甘い要素は皆無のただの買い物だ。どうしても街でしか手に入らない食材が食べたくなっただけの話である。
しかし十七歳の少女と二人きりという事実は変わらないわけで、考えるだけでもゾワゾワした。
「ただのロリっ娘であってくれれば良かったのにな、クソ」
「何か言いましたかぁ〜ウィルド様ぁ〜」
「その変な甘え方やめろって。……はぁ」
正直できれば置いていきたい気持ちでいっぱいだ。でも屋敷の安全を考えれば――半日留守にしていたら屋敷が倒壊していてもおかしくないのだ――それはできない。
俺は仕方なく、彼女を引き連れて屋敷を出たのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「そういえばウィルド様のお仕事ってどうなったんですか? ウィルド様ってほっそりしていらっしゃるから、まさか力仕事じゃありませんよね?」
「それがなぁ……まだ決まらなくて焦ってるところなんだよ。もうすぐ金欠になっちまいそうだっていうのに」
「へぇ。大変なんですねぇ。いざとなったらアリサが可愛いメイドちゃんとして色々なお家に働きに行ってお金を稼いであげてもいいですよー?」
「お前を雇ってくれるところなんてあるわけないだろ。冗談も休み休みに言えよ?」
「はいっ! ウィルド様、愛してますっ!!!」
そんな甘々なやり取りをし、時々休憩を挟みながらも歩き続けること数時間。
俺たち二人が到着したのは、別荘地から一番近隣の街だった。確かどこかの子爵家が治める領地で、それなりに治安は良く、裕福な民が多い場所だったと記憶している。そしてどうやらその記憶は間違っていないらしく、街はとても賑わっていた。
「お買い物もいいですけど、せっかくならこの街を色々と歩いて回りたいかなーって思ったりします! いいですか、ウィルド様?」
「……少々ならいいが、帰りも歩きなのを忘れるなよ? いくら小さいとはいえお前を背負って帰るのは無理だからな」
「わかってますってば。実はアリサ、どうしてもお屋敷に飾ってみたいと思ってたお花があるんです。早速それを買いに行きましょう! さあさあ、早く早く!」
この時断っておかなかったのを後でひどく悔やむことになるのだが、この時の俺はまだ知らない――。
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