表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/50

5:愛してます、ウィルド様 ……愛、軽くね?

 アリサへのメイド教育はなかなかにハードだった。

 何がハードかといえば、こいつ、真性のドジなのである。何をやっても何を教えても呑み込みが多く、失敗ばかりする。


 そのくせいつも目をキラキラさせて俺に「アリサ、頑張ります!」と笑顔で言うものだから、教育をサボることもできない。俺はどうしたものかと迷いつつ、仕事探しの合間にアリサの躾を続けた――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「おはようございます、ウィルド様!」


「う〜ん。…………っ、アリサ!?」


 俺はある朝、仰天してベッドから飛び起きた。

 ベッドのすぐ傍にはピンク髪を肩元で揺らすメイド、アリサの姿がある。彼女は頬を赤らめ、俺の枕元に立っていた。


 そして彼女は恭しく――のつもりなだけで全然マナーが整っていない――お辞儀をして、一言。


「ウィルド様、愛してますっ!」


 朝っぱらからとんでもないことを言ったのである。


「は……? ちょ、えぇっ!?」


 わけがわからない。

 普段俺はいつも一人で起床していた。伯爵家にいた頃は違ったが、ここ最近はもう慣れたものである。


 なのに今日突然、アリサが俺の部屋にいつの間にかやって来ていて、しかも、妙なことを言い出しているわけだ。俺は困惑するしかなかった。


「アリサってば、ダメダメなメイドじゃないですか〜。お料理は黒焦げにしちゃうし、お皿は割っちゃうし、アイロン掛けに失敗してせっかくのウィルド様のお洋服をボロボロにするし……」


 うん。確かに今彼女が口にしたのは、ここ数日で彼女がやらかしたことだ。改めて考えるとこれだけ失敗しまくるのはある意味すごいのかも知れない。


「だから、代わりにアリサはアリサのできることをやろうと思って! アリサにできること、それは毎朝ウィルド様のご尊顔を眺め……じゃなくてウィルド様を起こして差し上げて、それから心地の良い朝を過ごしていただくことです!」


 そういえば昨日、アリサに「人には向き不向きがあるんだ」みたいな話をしたことを思い出す。

 しかしそれをこんな風な意味で受け取るとは思わなかった。というか、別にこんなサービス俺は頼んでいない。


「なあアリサ。起こしてくれるのはありがたいんだが、愛の言葉ってのはそう簡単に口にするものじゃないぞ。それはメイドの仕事じゃないから」


 それは多分妻の仕事だと思う。まあ俺に妻などいないので詳しくは知らないのだが。

 しかしアリサは膨れっ面でぶんぶんと首を振った。


「いーえ、簡単になんて言ってません! だってアリサはウィルド様のこと、本気で大好きなんですから! ウィルド様に助けていただいたあの日から、ずっと愛してます」


「愛、軽くね? ……ってかお前、まだ十歳そこそこだろう。俺みたいな疲れ切った行き遅れ男に恋する暇があったら勉強でもしてろ」


「ウィルド様は素敵な方です! まだお若いですしかっこいいですよ!!! ……それにアリサ、十歳なんかじゃありません。これでも立派な十七歳の乙女なんです」


 ――アリサの驚きの発言に、俺は絶句した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その後これからアリサにどう接していいのかという難問に頭を悩ませ続け、仕事探しどころではなくなった。

 十歳ほどの女の子だからこそメイドとして傍に置いてやろうと思っていただけであって、年頃の女子と同棲するつもりなんてちっともなかったのだ。


「なのにどうしてこんなことになった……?」


 わからない。だが重要なことは、アリサが本気で俺のことを好いているということだ。


「ウィルド様、愛してますっ! さあさあ、美味しい朝ごはんを作ってください〜!」


「それ、主人に言うセリフじゃないだろ」


「えへへ」


 今もとても十七歳とは思えない顔で、アリサは笑っている。

 ……人の気も知らないで呑気な奴だ。

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 全てを許しちゃうこの可愛さ。 反則です!(笑)
[一言] 合法ロリキターーー!!!!(大歓喜)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ