4:屋敷の購入と、ロリっ娘の躾
「ねぇねぇウィルド様〜、これからアリサたち、すっごいお屋敷に住むんですよね? つまり同棲? なんかワクワクです!」
「そうだな……。でもそもそもそんな手頃な屋敷があるかどうかなんだが」
俺たちはあれから三日も街から街へ渡り歩き、これから暮らすためのちょうどいい屋敷を探していた。
しかしこれがなかなか見つからない。アリサのための可愛らしいメイド服は買ってやったが、屋敷がないのではメイドだけいても意味がない。
「困りましたね〜」と全然困っていなさそうな顔のアリサがエプロンドレスの裾をゆさゆささせながら言う。うっかり見えてはいけない部分が見えそうなのだが、大丈夫だろうか。
俺は彼女のペタンコな臀部に気を取られつつ、平静を装って答えた。
「今日は南に行ってみようと思う。南の方は観光地として有名だから、もしかしたら空いている別荘か何かがあるかも知れない」
「ウィルド様のお心のままに!」
結果から言おう。その日のうちに南方の静かな別荘地に着き、そこでちょうど空いた屋敷を見つけることができた。
しかしそこは元々公爵家の別荘だったらしく、かなり広かった。
つまりはかなり値が張るということ。いくら中古とはいえ、袋に詰まった金貨や銀貨を全て使っても足りるか怪しいほどである。
しかし他には屋敷がなかったし、新たに建てる費用ももちろんないため、俺に選択肢などないも同然だった。
「……買うか」
屋敷の購入で持ち金の約九割を使い果たした俺は、一気に貧乏人になった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……金は失ったがその分、定住地を手に入れることができたのは喜ばしいことだ。
俺の実家の二倍はあると思われる屋敷。元の持ち主であった公爵家はさぞ金持ちなのだろうなと思わせられる造りである。
今日のところは休み、明日から仕事でも探すか。そんなことを考えながらこれまた豪華なベッドに横になった、その時だった。
――ガシャーン。ガタガタガタガタ、ドーン。
かなりやばい感じの騒音が屋敷中に響き渡ったのは。
慌てて現場に駆けつけると、そこには割れ砕けた食器と、その中に埋もれるピンク髪の少女の姿が。
俺は一瞬で理解した。……こいつ、やらかしたな、と。
「どうしたんだ」
ひとまず食器の破片の山から助け起こしてやった俺が尋ねればアリサは今にも泣きそうな顔で言った。
「夕飯のためにお料理しようと思ったら、全部ひっくり返っちゃって! すみませーんっ」
どうやら彼女、料理の才能どころか、まともに食器を扱うという術すら知らないらしいことを、この時初めて俺は知った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夕飯は俺が作ったが、どうやらそれだけで解決する話ではないようだ。
アリサのできないことを列挙しよう。
料理、食事のマナー、食器洗い、洗濯、掃除、ベッドメイキング。
つまり全部である。メイドとして必要な全ての能力がまるで足りていないことが、たった数時間でわかってしまったのだ。
年齢のことを考慮に入れても、メイドである以上は役に立ってもらわないと困る。料理はできないわ食器はひっくり返すわ掃除は逆に汚すわという状態ではとてもとても面倒を見切れない。
しかしだからと言って彼女を追い出すわけにもいかないので、俺はアリサに躾を行うことを決めた。
「躾ですか?」
「ああ。アリサは孤児だろ? よく考えれば今まで料理も掃除も洗濯もやったことがないはずだ。つまり練習さえすればできる」
「本当ですか!」凹んでいた彼女の顔がパァッと明るくなった。「お願いします! アリサをどうか、ビシバシ躾けてください!」
素直でまっすぐなところが可愛い。さらに一人前のメイドになってくれれば最高だな。
俺は彼女を最高に仕立て上げるべく、メイド教育を始めたのだった。
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