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44:エメルダは戦闘メイド

 一体何が起きたのだろうとしばらく呆けていた俺に、帝城にかけられていた守りの結界をトーニャが解き、そのおかげでルルの無茶苦茶な攻撃が通用するようになって城が壊れたのだとトーニャは言っていた。

 「コソコソ入るよりああした方がずっと手早く済みますわ。つまらないことで時間を取るほどくだらないことはありませんもの」ということらしい。

 言っていることはわかるが、もう少しやり方というものがあっただろうにとツッコミたくなるのをグッと我慢した。



「すまないがボクはそろそろ魔力切れのようなので外で待たせてもらうとするよ。ああそうだ、ウィルド様、『彼女』の救出は他の女たちに任せてボクと二人でここでイチャイチャするというのはどうかな? この密入城の最大の功労者であるボクにご褒美をくれてもいいんじゃないかとボクは思うんだけど」


「ご褒美は……そうだな、また後で何か考えとくから俺は行くよ」


「やっぱり胸が大きい女がいいんだね。まあ仕方ない、ボクはここで待っているとするさ」


 城を半壊させたことにより、魔力切れを起こしたらしいルルは外で待機。

 俺、アリサ、エメルダ、トーニャの四人で今にも崩れそうな城の中に突入することになった。


 ……それにしても、もしも本当にパレクシアが城の中にいるのだとしたら、先ほどの衝撃に巻き込まれて死んでいたりはしていないのだろうか。

 そんな心配をしつつ、しかし口に出す勇気もない意気地無しである俺は、「遅いですわよ、相変わらずの鈍間ですわね」と言いながら当たり前のように真っ先に突き進んでいくトーニャの背を追って走り出した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「何だ」

「あそこだ」「侵入者だぞ!」

「斬り殺せッ」「容赦はするな」「殺れ、殺れ!」


 ドドド、と無数の足音と共に、俺たちの周りを無数の兵士が取り囲み、武器を向けて来る。

 これほど派手に城へ乗り込んだのだから当然だ。たった四人、それもそのうち三人が女なのだから到底敵うはずがない。

 ……無論それは、彼女たちが普通の人間であれば、ということだが。


「アリサさん。一つ、メイドに備わっていなければならない能力を教えるのを忘れていましたのでたった今、お教えします」


「エメルダおねーさん、そんなこと言ってる場合じゃ……」


「メイドたる者、主を守れなければなりません。故に」


 エメルダはメイド服のスカートの中からナイフをさっと引き抜くと、それをくるくると手の中で回しながら言った。


「武器の嗜みも必要なのですよ」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 うちのメイドの中で唯一まともだと思っていたエメルダは、どうやら一番の危険人物だったらしい。

 そもそも、常日頃スカートの中に暗器を隠しているなんていうのはメイドというより暗殺者ではないのだろうかと思えてしまう。主を守るのがメイドの役目、というのもわからないではない。だが俺と彼女の契約内容はあくまで無能メイドたちを躾けるというものであり、決して身を張って戦ってくれというものではなかったはず。


 よく考えてみればこんな危険な場所までついて来る時点でまともな人間ではないのかも知れない。うちのメイド、変人しかいない件。


 エメルダは信じられない素早さで兵士と剣を交え、確実に打ち倒していく。

 その姿は騎士顔負けで、俺より間違いなく強いことが窺えた。というか、俺の出る幕がない。何のために俺は騎士になったのだろうと無力感さえ湧いて来るくらい、エメルダの戦いぶりは見事としか言いようがなかった。規格外。常識はずれ。そんな風にしか表しようがない強さだ。


 俺がそうして感心している間にも状況は動く。

 右手にナイフ、そして左手に死した兵士の持っていた剣を掲げながらエメルダが、最初の五分の一ほどにまで減った兵士たちに言った。


「この勝負を続けても無意味です。なので、あなた方に選択肢を差し上げます。

 一つ、直ちに降伏し、旦那様の探し人――パレラ・エトペチカをここまで連れて来ること。そしてもう一つは、ここで命を落とすこと。

 さあ、どちらを選びますか?」


 兵士たちが怒りに目を吊り上げ、再びエメルダに襲いかかったその直後のことだった。

 彼らの首から上が一つ残らず宙を舞っていたのだ。


 ……戦闘メイド、恐ろしや。

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