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41:連れ去られた帝国にて 〜sideパレクシア〜

 ――せっかく逃がしてもらったのに捕まるなんて、本当に情けないわね、アタクシ。

 しかも捕まる時に素の顔を晒してしまったし……ああ、最悪。


 魔女ルクルーレがなぜアタクシに協力するような行動を見せたのかはわからない。

 けれど、それも虚しく、アタクシは今帝国へ連れ去られていた。


 手足を縛られ、猿轡を噛まされている上に五人もの男に見張られている状態では、逃げ出しようがない。

 きっとこのまま帝城に連れて行かれ、処刑されるのでしょう。

 でもアタクシの胸に絶望感はなかった。当然でしょう? 魔女ルクルーレさえ裏切った女帝なんですもの、怖くなんてないわ。


 放っておいてくれたらアタクシ、あのまま二度と帝国に帰るつもりなんてなかったのに。それほどまでにアタクシの首が欲しかったのかしら、あの娘()は。


 そんなこんな考えているうちに、帝城に着いていた。

 荘厳な見た目の割には、あまり警備がきちんとしていないのよね、ここ。パミラに帝位を盗られた時はそれが災いしたけれど、さすがに警備面は見直されているらしく、兵士がずらりと並んでいる。


 ああ、あちらの男、見覚えがあるわ。

 確かアタクシの護衛騎士だった男よね。アタクシを裏切って、パミラの傘下に入った。

 なのにどうしてそんな辛そうな顔をするのかしら。アタクシが処刑されるから?


 見ていなさい、そこの男。

 このパレラ・エトペチカが大人しく処刑されてやると思ったら大間違いよ。


 四肢を縛られ、無理矢理歩かせながらアタクシは、護衛騎士だった男にニヤリと笑って見せた。

 元護衛騎士は何を思ったのか口を開こうとしたが結局何も言えずに閉じる。


 アタクシはさらに奥、女帝の部屋へと連れられて行った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ようやく来たか、元女帝パレラ・エトペチカよ。愚かにも逃げ惑うとは滑稽ここに極まれりだな」


 帝座に座っていたのは、アタクシの妹であって、アタクシの妹ではなかった。

 パミラ・エトペチカ。顔も声も姿形も全部彼女のはずなのに、アタクシの知るパミラとはまるで違う。


 ――私、お姉様のために立派な皇女様になるわ。だからお姉様も頑張って素敵な女帝になってね!


 かつてそう言って笑っていた幼い少女の面影は消え去り、『氷の女帝』とでも形容されそうな鋭い美貌の美女がアタクシを見下ろしている。

 しかしその瞳はほんの少し揺れているように見えた。


 アタクシは猿轡をされているから彼女と話すことはできない。

 けれど、アタクシの視線だけでパミラは何が言いたいかはわかったはずだ。


 ……アタクシの真似事をして何を成したいの、パミラ?


「その不快な目ができるのも今日までだ。パレラ・エトペチカを地下牢へ。明日の早朝に公開処刑とする」


 アタクシの無言の問いに答えることなく、パミラが指示を飛ばす。

 しかし彼女が無意識的なのか唇をぎゅっと噛み締めているのをアタクシは見逃さなかった。


 まるで、自分だってこんなことを望んでいるのじゃないとでも言いたげな辛そうな顔だった。

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