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40:魔女の叛逆 〜sideルル〜

「ルクルーレ。お前、何をしている。パミラ陛下はおかんむりだ。『彼女』の捕獲は一体どうなっているのだ?」


 鬼のような形相でそう問いかけられ、ボクはあからさまに顔を歪めた。

 ボクに迫って来たのは『彼女』を探すチームのリーダー格の男。名前は不要だから忘れたが、ボクが失敗した際にボクの形跡を追って送られて来ることが決まっていたのを思い出す。


 本来なら、ボクはこの男に適当な言い訳をして、すぐにでも『彼女』を捕らえるべきなんだろう。

 わかっている。わかってはいるが、ボクはそうはしなかった。だって――。


「ボクがキミの問いに答える義理はない。挨拶もなしにこの屋敷を壊してくれるような会話の通じない男と接するつもりは毛頭ないのでね」


 この男はウィルド様の屋敷を壊した。

 ボクと彼の、思い出の詰まった場所だ。たとえ短い間でもボクには宝物だったのだと失ってから気付かされる。


 それを奪ったこの帝国の男を、ボクは決して許さない。

 女帝パミラの意志に反する? それが一体何だというんだ。そもそもボクと彼女はとある契約で結ばれただけの関係。それを反故にするくらい、魔女であるボクにはそう難しくないことだった。

 ……それに癪だが、聖女である紫髪女には「せいぜい血反吐を吐いて奮闘なさい」と言って魔法封じの枷があらかじめ外されていた。ここで男の手を取り聖女に殺されるか、女帝を裏切るか。どちらがいいかなんて決まっている。


「魔女ルクルーレは今この場を持って女帝パミラとの契約を破棄し、キミたちの敵になるよ」


「なっ……!」


 ボクは二の腕に爪を立てて引っ掻き、そこに刻まれていた呪印を力づくで破壊した。

 直後、激しい痛みがボクを襲う。しかしこれ式のことで負けるボクではなかった。


 驚愕に目を見開く男に向けて、軽い呪いを放つ。

 しかし軽いと言っても真っ向から浴びると苦しみにのたうち回り、二度と起き上がれなくなる程度の力はある。それを至近距離で受けた男が無事であるはずがなかった。


「ぐぉっ。な、なんだこれは。ぐはぁ、あぅ、うあぁぁあううぉぉおおお――ッ!」


 獣のような悲鳴を上げる男に背を向け、ボクは歩き出す。

 ああ、痛い。契約を破るとこうなるのか。口からごぼっと血が流れ、ボクのメイド服を汚した。


 向かうのは『彼女』の元。

 愛するウィルド様を悲しませないために、『彼女』を守らなければいけない。ウィルド様が喜んでくれるのなら、恋敵だって救ってみせるさ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「妾がいかほどの罪を犯したというのか。妾が……アタクシが一体何したって言うのよ?」


「確かにキミは何もしていない。まあ、弱いことは罪とも言えるかも知れないし、何もしなかったことが災いしたのだろうけど、ボクのように強大な力をもたいないキミにそれを言うのはちょっとばかり酷だから――ボクが力になってあげてもいいよ?」


 涙を流し、それでも強がって叫ぶ『彼女』の前にボクは立つ。

 前髪を上げているので顔が丸見えになっているだろう。ボクの正体に気付いたのか、『彼女』は唖然となっていた。

 だがそれに構っている暇はない。早速魔法を発動させ、ボクらを取り囲んでいた兵のうち三人ほどを吹き飛ばした。


 一人の女を数十人の男で屈服させようだなんて、女帝パミラは一体何を考えているんだか。

 呆れながらもさらに五人ほどを殺った。ボクの手にかかればこれくらい、赤子の手を捻るようなものさ。


「ま、魔女ルクルーレ。貴様何を――」


「別に? ただの気まぐれさ」


 このままいけば全滅させるのは余裕だろう。

 しかし契約を破ったことで満身創痍になったボクは、最後まで魔力が保つ自信がなかった。だから『彼女』を逃がすことにする。


「今のうちに逃げるといい。キミを背に庇って戦うのはどうやら無理らしいからね」


「アンタは一体……」


「さあ行くんだ、パレラ・エトペチカ。――キミもウィルド様のことを愛しているんだろう?」


「――っ!」


 一瞬こちらを睨みつけ、すぐさま駆け出す『彼女』。

 たわわな胸をバインバインと揺らしながら屋敷の残骸の中を疾走する『彼女』の姿はすぐに見えなくなる。

 彼女を包囲しようとした者は瞬殺したので大丈夫だ。


 ボクは彼女の無事を祈りながら、ボクは残りの男たちを処分する……はずだった。


「ちょ、やめなさいっ! 助けて、誰か!」


 そんな悲鳴が聞こえて来るまでは。

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