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38:平和の崩壊は突然に① 〜sideアリサ〜

 このお屋敷はとても平和で、素敵な場所です。

 ウィルド様の奪い合いで揉めることは多々ありましたけど、おねーさんたちに囲まれて毎日楽しく過ごしていました。


 アリサが生まれ育ったあの場所と違って、ここではご飯にも困らない。やりたいことはなんでもやらせてくれるし、何よりウィルド様の姿を見られるだけでその日一日幸せだと思えました。

 ……だからアリサは勝手に思い込んでしまっていたんです。この平和が永遠に続くものだって。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「アリサさん、これくらいの掃除くらいはできるようになってください。あなたもこのお屋敷で働かせていただいているメイドの一人なのです。いつまでも甘えてばかりで役に立たないようではいけませんよ」


「掃除、これでも頑張ってやってるんですぅ」


「そうかも知れませんが掃除する度に床を汚されては困ります。私は元よりあなたたちの教育のために雇われているのですから。わかりますね?」


「エメルダおねーさんの意地悪!」


 ――それは、ウィルド様が立派な騎士様になる日のこと。

 アリサとエメルダおねーさんはお祝いのためにケーキを作っていました。でもアリサが粉をぶちまけちゃって、さらにお掃除も下手だって叱られて……もう最悪です。


 どうしてアリサはこんなミスばっかりするのでしょう。

 顔も知らない父親がろくでもない人間だったから? あ、でもお母さんもこんなところありましたね。お母さん譲りなんでしょうか。それだったら嬉しいな。


 などと思いながら雑巾で床を拭き拭きしていると、お祝いパーティーの飾り付けをしていたはずのトーニャおねーさんがいつの間にか厨房に立っていました。


「そっちの様子はどうですの? ……あらまあ、相変わらずの無能っぷりですこと」


 姿を現した途端に罵倒するなんて、ひどいです。

 思わず涙目になるアリサの代わりにエメルダおねーさんが答えてくれました。


「ええ、見ての通りでございます。それでトーニャ様は如何なさったのですか?」


「少々厄介な輩が来たようですわ。力のない子ウサギどもはとっとと逃げておしまいなさい。そうしなければ虎に咬まれ、命を落とすことになりますわよ」


「……?」


 アリサとエメルダおねーさんは同時に首を傾げました。だって、トーニャおねーさんがいきなり何を言い出したかがさっぱりわからなかったからです。

 ――でも。


 ガタガタ、ガタガタ。

 次の瞬間、激しい音を立てて屋敷が揺れ始め、アリサは粉まみれの床に全身を打ち付けて転んでしまいました。

 せっかくのメイド服が台無しです。しかしそんなことが気にならないくらい揺れが大きく、立てないほどでした。


「これは……!?」


 揺れに耐え切れずにかがみ込んだエメルダおねーさんが悲鳴のような声を上げます。

 そして混乱の中でも平気な顔で立ったままのトーニャおねーさんは、静かに言いました。


「時が来た、ただそれだけのことですわ」


 それと同時にお屋敷の天井がボロリと崩れ、屋根板が落っこちて来ました。

 何が起こっているのか、さっぱりわけがわかりません。しかしそれを説明してくれることもなく、トーニャおねーさんはアリサとエメルダおねーさんを両手で引っ掴み、厨房の外へと引っ張っていったのでした。

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