37:正式な騎士になる日
「苦労が絶えないようだね。最近、前にも増してげっそりして見えるよ。嫌なら僕が代わってあげたいくらいだ」
「できることならそうしてほしいんですけどね……。あのメイドたち、どうにも手に負えなくて」
「ロリっ娘にツンデレ、クーデレ、毒舌、ヤンデレときた。これなら好きな女の子を選び放題だ。最高の取り合わせだとは思わないのかい? まあ僕だったら絶対ツンデレ一択だけども」
職場である騎士団詰所にて、俺とヘイズは他愛ない話をしていた。
内容は俺の屋敷のメイドたちについて。日々溜まり続ける愚痴を聞いてくれるので、非常に助かっている。
だが今日ばかりは、いつも笑って聞き流してくれるヘイズもそうはいかないらしく、真剣な顔つきで言った。
「今日から君も正式な騎士になるんだ。メイドに振り回されているようではいけないよ?」
「……わかってます。騎士たる自覚を持て、ですよね」
実は今日、俺は正式な騎士に任命される予定なのだ。
俺とてメイドに翻弄され続けているだけではない。きちんと修行を積み、騎士としての職務を果たしていた。そしてその成果が認められ、騎士になることが決まった。
今まで作業着のような薄い鎧だったのが一変、鉛のように重い騎士服を着させられる。
ああ重い。貴族の礼服だって相当重かったが、それと比べ物にならない重さだ。手足が思い通りに動かない。これを毎日のようにつけている騎士たちに尊敬の念を抱かずにはいられなかった。
まあ、俺も今日からその仲間入りなわけだが。
「そろそろ時間だ。頑張って来てくれよ、ウィルド」
「はい」
これで給料も上がり、メイド五人を養っていく余裕もできるだろう。そろそろメイド服を新調したいとアリサから言われていたからな……。
そんなことを思いながら俺は、騎士団長のいる部屋に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後の行事は色々と面倒だったが、そこは割愛するとしよう。
とにかく俺は正式に騎士となることができたのだった。
これからは剣を振り、前線に行くことになる。と言っても有事の時しか基本は動かないので鍛錬以外はあまり何もしないだろうとは思う。このレシーア王国は平和なのだ。
しかし隣国エトペチカでは内戦があったとかトーニャが言っていたし、内乱や戦争も完全に他人事ではない。気を緩めるべきではないのかも知れない。
だがまさか、その危機が今この瞬間に己のすぐそこにまで迫って来ているなどと、この時の俺は考えもしていなかった――。
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