34:結論としては
「もちろんアリサが一番でしたよね?」
「アタシでしょ?」
「メイドとしての技能に関しては私が間違いなく一番だと思いますが」
「家畜たちがワタクシに勝るとでも思っていて? 雄犬は主人であるワタクシを選ぶものですわ」
「ウィルド様に一番尽くしたのはボクさ。これだけは絶対の絶対に譲れないな」
――迎えた六日目の朝、俺はほとほと困り果てていた。
メイドたちからの圧がすごい。皆、自分が一番だと疑っていない目をしている。
もちろんお役立ちメイド選手権とやらの結果を出すのは簡単だ。
ぶっちゃけてしまえばこうなる。
アリサ:30点
パレクシア:60点
エメルダ:100点
トーニャ:80点
ルル:0点
だが、俺はこれをはっきり口にすることができない。
なぜなら、一人を選べばそれ以外の四人を確実に敵に回すからである。しかもルルなどは、選ばれた者をうっかり殺してしまいそうな怖さがあった。
だから俺は考えに考えた末に、誤魔化すことにした。
「アリサは一番可愛くて癒される。パレクシアは一番美人だ。エメルダは気遣いができるし、トーニャも仕事ぶりは満点だった。ルルも尽くすメイドの理想系だ。
つまり全員が全員、お役立ちメイドなわけだ。あぁぁ、俺は恵まれてるなぁ」
これでいける。場を和やかに保てる。
そんな風に考えていたのだが、現実は当然のように甘くなかった。
「「「「「ふざけないで!!!」」」」」
五人の声が重なり、十個の瞳が一斉に俺を睨みつける。
まずい、と思った時にはもう遅かった。
「ひどいですウィルド様! 癒されるって言ってくれたのは嬉しいです。でも、トーニャおねーさんやルルおねーさんと一緒にされるのは絶対に嫌です! 絶対の絶対、アリサの方が役に立ってるのに!」
「そうよ! 面倒臭いからってこんな終わり方にしようだなんて安直にもほどがあるわ。乙女心をなんだと思ってるの!?」
「旦那様、さすがにこれは私も庇護できかねます。一度始めた勝負、きちんと決着を着けなければいけません。メイドたちの諍いを収めるのが主の役目の一つでございますよ」
「はぁ、とことん呆れましたわ。きっと脳が溶けているに違いありませんわね。頭をかち割って確かめてみようかしら」
「ボクを選ばず他の女をもてはやすだなんて……許せないよウィルド様。よくもボクを裏切ったな」
それから俺がどんな目に遭ったのか、それは筆舌に尽くし難い。
この時俺は、女を甘く見てはいけないのだと改めて思い知らされたのだった。
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