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28:お役立ちメイド選手権って何だ?

「ウィルド様はこのお屋敷のメイドの中で誰が一番だと思います? もちろんアリサですよね、ねっ!」


 今日も騎士団でたっぷり扱かれて帰って来ると、アリサにぐいぐいと詰め寄られた。

 もちろん一番優秀なのは誰かなんて決まっている。そんな子犬みたいな目で見上げても何も出してはやれないというのに。


「それは優秀さのことか? 可愛さのことか?」


「誰が一番役に立つかってことです!!」


「それじゃあエメルダに決まりだな」


「どへぇ〜! 健気で可愛いアリサを見捨てるなんて……ひどーいっ!」


 俺は答えを求められたから事実を言っただけなのだが。

 というより、なぜ今更そんな質問をするのだろう?


「だってアリサは掃除もできなきゃ料理も下手くそレベルじゃないくらい苦手だろ。優秀さで言えばルルの奴にすら負けると思うぞ」


「うぇーん!」


 なぜか泣き出してしまったアリサを持て余していると、どこからともなくパレクシアが姿を現す。

 かと思えばいきなり怒鳴りつけてきた。


「アリサを泣かせるなんて、それでもご主人様なの!? バカね、人の話をろくに聞きもしないで決めつけるだなんて! み、見損なったわっ!」


「帰って来た主人に一言くらいかけたらどうだ? ……それで、何なんだこの騒ぎは。さてはアリサに何か吹き込んだな?」


「べ、別に! 吹き込んだなんて人聞きの悪い! アタシはただ……「ああ心待ちにしていたよウィルド様。聞いてくれないか、大事な話があるんだ」


 さらにはパレクシアのものに重なるようにルルの声がし、背後からぬらぁっと黒髪の女が顔を覗かせる。

 ギョッとして数秒固まる俺などお構いなしで、ルルが喋り続ける。


「実は『彼女』がお役立ちメイド選手権なんていう馬鹿なことを考え出してね。そのせいで屋敷は大騒ぎさ。

 誰が一番としてキミに認めてもらえるか、みんなそのことに興味津々なのさ。まあもちろんのことこの勝負に勝利するのは最初からボクと決まっているが、愚かな女たちの遊びに付き合うのも悪くないだろう? ボクが他の女を下し、キミを手に入れる。考えるだけでゾクゾクするじゃないか。ねえ、面白いとは思わないかい?」


 昏く濁った瞳が、長い前髪の隙間からジロリと俺を見つめて来る。

 それだけで背筋がゾクリとし、俺は助けを求めるようにパレクシアに視線をやった。しかし彼女は「そういうこと。わかった?」となぜか自慢げに胸を張るだけだった。


「パレクシアさん。それではまだ説明が足りませんよ。

 旦那様のために言葉を尽くす。これもメイドの心得だといつも言っていますでしょう?」


 そんなところへ救世主が。

 青髪おさげの地味メイド……もとい、エメルダである。


「でも……!」


「言い訳は必要ありません。それではお役立ちメイド選手権の勝利は掴めませんよ? 確かにあなたの作法だけは美しいです。しかしそれ以外の色々がまるで足りていません。それが残念でならないのです。

 ともかく、旦那様、私からこの不可解な状況についてご説明させていただきます。

 この度、このお屋敷にて勤務する五人のメイドの中で誰が一番優秀なのかを競うことになりました。

 メイドとしての資質、そして人間としての魅力。それをもって選んでいただき、旦那様にメイド長を決めていただきたく思う次第でございます。

 ご理解いただけましたか?」


「うん、すまないが全く理解できん」


 仕事の疲れでまるで内容が頭に入らない。まあ多分、疲れのせいだけではないと思うが。

 頭を抱えているとさらに追い打ちがやって来た。


「愚かな雄犬に人語を理解させようとするだけ無駄ですわ。ともかく、その無能な脳に叩き込むまでですわよ。ワタクシという存在がどれほど尊く素晴らしいかということを」


 予想通りトーニャだった。

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