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16:エメルダは超優秀

「見なさい! アタシ、掃除ができるようになったのよ。ほら、綺麗でしょう。べ、別に、頭を地面に擦り付けて褒め称えなくてもいいんだからねっ!」


「パレクシアさんはなかなかに仕事の飲み込みが早いので助かります」


 エメルダにパレクシアの成長度合いを聞くと、そんな答えが返って来た。

 確かにパレクシアが一人で掃除したという床は輝くほどに綺麗になっていた。最初のポンコツぶりとは大違いである。だからと言って褒め称えるつもりはないが……。


「よくやったな、パレクシア。その調子で頼む」


「ふ、ふん! 当然のことよ!」


 なぜか顔を真っ赤にして仁王立ちになるパレクシアを放っておいて、俺はエメルダに向き直った。


「ところでエメルダ、その口ぶりだとアリサの方は難しい感じなのか」


「……はい。五時間かけて教えても目玉焼きを焦がし続け、ベッドを整えるどころかシーツを破きまくり、掃除も逆にわざと汚していると言った方がいい具合です」


「よっぽどだな、それ」


 わかっていたことであるがアリサは本物のドジのようだ。メイドとして一番向いていない人材な気がする。

 だがエメルダは腕をまくり、「なんとしても立派に育て上げてご覧に入れます」と静かに、だが自信満々で言い切った。


 それを信じていいものかどうかはわからないが、たった数日でパレクシアをここまで成長させたのだ、エメルダが優秀なことには間違いない。

 もう少し頑張ってもらおう。それでも無理なら、アリサは居候に格下げするまでだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ウィルド様〜! アリサ、お洗濯できるようになりました! 頭撫でてください!」


 正直アリサに期待していなかった俺は、翌日、汚れ一つないどころか新品のようにシワ一つない服をアリサに手渡されて目を丸くすることになる。


「これお前がやったのか……?」


「はいっ! エメルダおねーさんにお尻ぺんぺんされるのが嫌だったのでめちゃくちゃ頑張りました!」


 ――エメルダ、こいつにどんな教育をしたら急成長させられるんだ? そんなに恐ろしいのか、お尻ぺんぺんは……。


 そう思いつつも、アリサが少しでもまともになってくれたなら嬉しい限りだ。

 俺は彼女の頭を撫でてやり、それからエメルダの元へ向かったのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 青髪におさげ髪のメイドは、他二人に代わって料理を作っているところだった。

 ちなみにエメルダの料理はとんでもなく美味い。少なくとも、一度食べたら他の食事など味気なく感じられる程度には。


「エメルダ、ちょっと聞きたいことがあるんだが」


「……アリサさんに関してのことですが、多少の無理をさせればすぐでした。あの子を躾けられないのは、子供には甘くできない旦那様のお優しさの問題かと」


 つまりそれって俺が甘かったって言ってるってことだよな。まあ否定はしないが。


「可哀想なくらい優しい旦那様、素敵でございますよ」


「今、なんて言った……?」


「ですから旦那様は素敵だと、そう申し上げたのです」


 今、エメルダが確かに『可哀想』と言った気がするが……彼女がそう言うならただの聞き間違いなのだろう。そういうことにしておきたい。


 せっかくの完璧なメイドが特殊な趣味を持っているとは思いたくないからな。

 うん、主人である俺をきちんと褒められるとは、エメルダは優秀だ。間違いない。これからももっと頑張ってほしいものである。


「メイドに翻弄される旦那様、可哀想」


 これは俺の空耳だ。間違ってもエメルダが言ったわけではないぞ。

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