13:先輩メイド募集
「お前たちは全然メイドとしての心得がわかっていないようだな」
メイド二人組が職場へ乗り込んで来た日の夕食の席で、俺はアリサとパレクシアを見回しながら言った。
二人とも首を傾げ、キョトンとしている。本気で心当たりがないつもりなのだろうか。もしもそうだとしたら呆れを通り越して感心してしまいそうだ。
「メイドたる者、主人に迷惑をかけないこと。今のお前たちはどう考えても俺の仕事の邪魔にしかなってない」
「えぇ〜、ウィルド様ったらひどいです。アリサもおねーさんも一生懸命に働いてるのに」
「何よ偉そうに! あんただって落ちぶれ貴族のくせに!」
口を尖らせ不満げなアリサと、やはりこちらも腹立たしそうにするパトリシア。両者ともメイドのことを何だと思っているのだろう。居候じゃないんだぞ。
従順などころかどこまでも聞き分けの良くない二人を見て俺は改めて思った。
――こいつらをどうにか躾けなければならない、と。
別に美味い飯を作れだとか掃除をしろだとかベッドを整えてくれとか、贅沢――もちろん普通のメイドであればできて当然なのだが――なことは言わない。
ただ、せめて最低限のことくらいは弁えておいてほしいのだ。
「メイドのことは、メイドのプロに任せるべきだよな」
この国のメイド文化は盛んだ。
街でメイド服を売っていることからもわかるように、貴族の傍に寄り添って献身的に仕えるメイドという職業は平民にとって憧れを抱く対象であるらしい。
メイドの格好をした従業員のいる喫茶店もあるくらいだ。そんな風にメイドが平民の間でも親しまれている一方で、一流のメイドというのもちゃんといる。
それすなわち、きちんとした貴族家出身であり、しっかり教育の施されたメイドだ。その大抵は侯爵家以上の高貴な身分の貴族に給仕している。
そういうメイドたちにこの屋敷に来てもらい、アリサとパレクシアを躾けてもらおうというわけだ。俺なら無理でも、同性であり先輩であるメイドなら間違いなく扱いてくれるだろう。
ただ問題は、何のツテもない俺がどうやってそんな優秀なメイドを見つけられるかということだ。実家に問い合わせるわけにもいかないしな……。
「ヘイズに頼むか」
ヘイズたち騎士団の人々は皆平民だが、貴族との交流が多く、同時にそういった情報にも耳ざといかも知れない。
先輩メイドを募集し、ある程度の給金で雇うと言えば……二、三人は食いついてくれるのではなかろうか。もちろんちょうどいい具合に手が空いている人材がいるかは不明だが。
――そうと決まれば行動に移すのみだ。
俺はニヤリと口角を吊り上げた。
「今に見てろよ、二人とも。泡を吹くくらい厳しい躾をしてくれる先輩メイドを選んでやるからな」
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