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9:新入りメイドが手に負えない

 そして翌朝――。



「べ、別に料理を今まで一回もやったことがないとかじゃないんだから! 指を切っちゃったのはたまたまなの!」


「あはは、パレクシアおねーさんもダメじゃないですかぁ〜。さんざんアリサのこと馬鹿にしてたのに自分ができないとか……ブフッ!」


「わ、笑わないの! クッソ、ムカつく――!」


 朝早くからギャアギャア叫ぶ二人を横目に、俺は着々と料理を進めていた。

 メイドというのは普通、こんなにもやかましいだけの役立たずだっただろうか。少なくとも俺の常識ではメイドは家事全般が万能、喋り方も丁寧で常に落ち着いているイメージだったのだが。


「まったくこいつら使えねぇ……」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 話は若干前、昨日の夕刻まで戻る。


 メイドとして屋敷に連れ帰ることを決めたものの、どうしても名乗りたがらない『おねーさん』に俺はパレクシアと名付けた。

 ちなみに名前の由来は神話の天界の姫パレクシアから名前を頂戴したのである。そんな名前を借りるのはことなのかも知れないが、それ以外思い浮かばなかったのだから仕方ない。


「パレクシアね。……そうね、悪くはないんじゃない? ま、まあ、ちょこっとしかセンスはないけど」


「気に入ってもらえたようで何より」


「別に気に入ったとは言ってないでしょうが!!」


 いちいち吠えるパレクシアはうるさい。だが、美人に免じて多少は我慢しようと思った。

 その後はアリサが行きたいと言っていた雑貨屋に三人で寄り、そこでパレクシア用のメイド服を手に入れることができた。メイド服と言っても随分古い型のもので、アリサの着ているものとはまるで違う。しかしそれが非常にブッ刺さったようで、パレクシアは子供のように「これを買ってちょうだい!」を連呼。

 かなりお高かったので、元々街で仕入れようと思っていた物を泣く泣く諦めて、その分浮いた金でメイド服を買ってやった。こうなると何のために街まで来たんだ……とかなりゲンナリしたが、美人メイドを手に入れられたということでどうにか納得しておく。


 パレクシアが使えればいいのだが、と祈るように思いながら、俺たちは徒歩で屋敷まで帰って来た。

 しかしパレクシアは帰るなり早速期待を裏切ってくれたのである。


「お茶を淹れてあげるわ。そこで待ってなさい」


 そう言って勝手に厨房へ入って行ったかと思えば、


「ぎやあぁぁぁっ。熱ッ、熱いッ! 誰かっ――」


 熱湯を思い切り床にぶちまけ、大騒ぎ。

 まあ一度目の仕事だ。当然失敗するだろう。そう思ってその時は大目に見るつもりだった。


 しかしその後はベッドメイキングはできないだのむしろ逆に『着替えができない』などと言い出して俺に寝間着を着せてもらおうとするなど、とてもメイドと思えない行動の数々。

 結局、扱いづらい厄介者が一人増えただけの結果となった。


「ドジメイド二人もいらねぇってのに。なんとかならないもんかな」


 机の上に皿を並べながら俺はボヤいた。こうしてみると俺の方が使用人に相応しい気がする。

 一方のアリサとパレクシアはそれぞれ相手を指差し合い、アンタはあれができないこれができないと言い合っており、手伝いをしようという気持ちすら見えなかった。


 この先が思いやられる。手に負えない。

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