殺人鬼を撃退した男は、その後も追いかけられ続けていく
「なんなんだよ…………」
毎日毎日追いかけられる。
男はその事にうんざりしていた。
世間を騒がす連続殺人。
それを行っていた殺人鬼は、最終的に死んだ。
最後に狙った者の反撃で。
その反撃をした男は、時の人となって注目される事になる。
最初は男も喜んでいた。
皆がねぎらい、称えてくれた。
特に目立つ事もなかった男にとっては快挙である。
だが、それが続くとだんだんとうんざりしてきた。
テレビにラジオに雑誌のインタビューに。
あちこちでもてはやされてるのは良い。
だが、毎日どこかに誰かがいる。
それがだんだんと辛くなってきた。
一人の時間がない。
どこかに誰かの目や耳がある。
常に監視されてるようなものだ。
下手な事をしようものなら、即座に全国にその様子が流れる。
おまけに誰かに毎日追いかけられてるのだ。
殺人鬼が報道関係者や注目してくる人間に代わっただけだ。
追いかけられてるのは同じである。
いつしか男は、殺人鬼に追いかけられていた頃を思い出す。
わずか数日の出来事だが、常に周りを警戒しているのは変わらない。
どこに潜んでるのか、どこから来るのかを常に考えてしまう。
精神にかかる負担は大きい。
いずれ興味を失って誰もいなくなるだろう。
だが、それがいつなのか分からない。
明日か、明後日か、一週間後か。
あるいは一ヶ月、一年も先なのか。
そう思ってる間にも、周りから人は消えていく。
さすがにいつまでも注目してる者はそう多くは無い。
ストーカー気味な者を除けば、大半の者は注目しなくなる。
それが問題だった。
大半は確かに興味を無くす。
しかし、わずかに残る者もいる。
それらが常に男を監視する。
その目が常につきまとう。
それを気にして気分が萎えていく。
それが嫌気に変わる。
最後に憤りになった。
「なんでこんな目にあわなくちゃならない」
それからは早かった。
周りにいる者達を探った。
見つけられた者から始末していった。
見つけて追いかけて追い詰めて。
二度と動かないように処分した。
死体になれば活動する事もない。
同じように何人か始末していった。
今も追いかけてくる者を。
かつて追いかけてきた者達を。
そうしてるうちに新しいニュースが世間を騒がせていく。
再びあらわれた連続殺人鬼。
その報道を世間は追いかけていく。
追いかけて誰かが死んでいく。
その殺人鬼も再び倒される。
倒した者に注目が集まる。
かつてと同じように。
その後の経過も同じようになっていく。
今日も誰かが追いかけられる。
追いかけられて反撃する。
そのくり返しは延々と続いていく。
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