第6話 屋敷の大冒険
巨大な門を抜けると、噴水が2つも並んでいる大きな庭が拡がっている。
大きなカバンを抱え、魔女カーリーと道化師キーンは、あの屋敷へとやってきた。
「わあ、凄い」
魔女カーリーは、(アイザック氏の) 大きな屋敷に感動のあまり声が出る。
「ようこそ、我が家へ」
他人の家を我が家ということに、罪悪感を感じつつも、道化師キーンは必死に家主を演じていた。
「素敵なお家ね。この花は何?」
魔女カーリーは花壇に咲く花を指さして尋ねる。
そんなこと言えない道化師キーンは、必死に誤魔化した。
「ああ、ガーデンデザイナーさんが植えてくれたんだ。正直よく知らない」
「そうなんだ」
魔女カーリーは戸惑う道化師キーンを気づかった。
「さてさてさて、家に入ろう」
道化師キーンは魔女カーリーを屋敷の中へと招待する。
ふぅ、と息をつく道化師キーン。
しかし、試練はまだ続く。
天井には巨大なシャンデリア、壁一面に飾られた絵画の数々、螺旋階段は富を象徴していた。
「まあ、素敵ねぇ」
魔女カーリーは豪華絢爛な屋敷に感動する。
「ああ、素敵だろ」
この時、道化師キーンも彼女と同じ感情を抱いていた。
同時に、このまま嘘を突き通せるか、不安にもなった。
少し目を離した隙に、魔女カーリーは螺旋階段の上にいた。
「ねえ、普段どんなベッドで寝てるの?」
道化師キーンは緊張していた。
自分が寝ているベッドではない、つまり何が隠されているか分からないからだ。
「普通さ、他の人と大して変わらない」
魔女カーリーは道化師キーンの許しを待つことなく、寝室の扉を開けて中に入る。
道化師キーンは、勝手な行動をとる彼女に慌てて駆け寄っていく。
寝室は実に質素なものであった。
ベッドとクローゼット、それ以外は何もない部屋だった。
「本当に普通ね」
魔女カーリーは期待していた自分を悔やんだ。
「普通のベッドだ。でもこの部屋は普通じゃない。(おそらく、)隠しているんだ。書斎をね」
嘘をつく道化師キーンにとって、寝室から書斎への隠し通路を見破るのは、造作もないことであった。
「ああ、なるほどね。寝る時に色々目に入ると寝れないタイプか」
魔女カーリーは、彼の意外な一面を見れたと思い、思わぶ笑みをこぼす。
「そうみたいだ。折角だし、家の中を案内しよう」
道化師キーンは今日も冴えていた。
家の中を全て明かすことで、魔女カーリーについた嘘を証明しようと考えたからだ。
「見たい見たい、こんな豪邸に住んでいるって思いながら見ないとね」
魔女カーリーは、この家の主になった気持ちで豪邸の散策を開始した。
「自由に見てくれ」
道化師キーンは、魔女カーリーの行く先について行くことにした。
その方が後出しで説明できるから、嘘をつきやすいと思ったからである。
魔女カーリーは好奇心旺盛の少女であった。
高級車や宝石などの目立つものから、皿や額縁の裏、裏口や隠し通路まで、至るところを見て回った。
道化師キーンはこの家の主ではないのに、彼女と家を見回る内に、嘘をついていることを忘れてしまうほどであった。
家を歩き疲れた魔女カーリーは、食堂で一息ついていた。
「はあ、足が痛い。いっぱい歩いたわ......」
「かなり広いですから」
道化師キーンも魔女カーリーと同様にヘトヘトであった。
すると、屋敷の中を探検していた10羽のハトも食堂に戻ってきた。
しかし1羽だけ迷子になったのか、食堂には9羽のハトしかいなかった。
「あれ?1羽足りない」
ハトを大切にする道化師キーンにとって、10羽のハトが欠けるのは、心が痛かった。
「ねえ、あそこって何があるの?」
魔女カーリーは怪しい扉を見つける。
ちょうどハトが1羽入れるほどの隙間があいた石の扉から、地下へ通じる階段が見えていた。
怪しい地下へ通じる階段。
道化師キーンは嘘を突き通せるのか......?