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第5話 騙す悦び

1羽のハトが上空を飛んでいく。

魔女カーリーは空を見上げながら、占いの休憩をとっていた。


「やったわね」


空高く飛んでいたハトは、魔女カーリーの開いた場所に最も近い電灯に止まる。


「道化師キーン、元気かな?」


昨日の楽しい食事のことを、魔女カーリーは忘れられずにいた。

初めて自分の全てを受けとめてくれる人が現れたのだ。


「嘘ついてごめんね」


魔女カーリーは1人の人物を思い浮かべながら口から思わず言葉がこぼれた。

するとそこへ、あの男がやってくる。


「やあ、占い師のお嬢さん」


空を見上げていた魔女カーリーは、声のする方へ視線を向ける。

目の前に立っていたのは、町一番の富豪、あの"アイザック氏"であった。

アイザック氏は、魔女カーリーの用意した椅子に座ると、懐から1枚の紙を手渡す。


「さあ、占ってくれ」


魔女カーリーは紙を受け取る前に、地主のアイザック氏に告げる。


「ごめんなさい、昼の1時から先客が入ってるのよ。その人が終わってからいらっしゃってくれないかしら?」


魔女カーリーの態度に腹を立てたアイザック氏は、すぐさま胸ぐらを掴んで激怒する。


「うるさい、さっさと占え」


魔女カーリーは横暴な態度をとるアイザック氏のことを睨みつける。

アイザック氏は睨む魔女カーリーの耳元で囁いた。


「君はもうすぐ自由になれる。そうだろ?」


魔女カーリーは、アイザック氏の言葉を聞くと、分かりやすく動揺する。


「うっ......、はい......」


アイザック氏は、今朝に届いた魔女カーリーからの手紙を机の上に置く。

そして、紙をカーリーの目の前で広げる。


「これはこれは光栄なことだ。ほら、(この紙の通りに) 僕を占いたまえ」


魔女カーリーは言われた通りに、アイザック氏から渡された紙を読み上げた。


「少しお疲れのようですね。旅行に行かれてはいかがですか?」

「そうなんだ、よくわかったね。最近肩が凝って仕方ないんだ。少しばかり旅行に行こうかね」


アイザック氏は誰でも分かるような猿芝居を演じる。


「早ければ早い方が良さそうですよ」


魔女カーリーもアイザック氏の紙の台本通りに芝居を演じる。


「そうか、なら明日にでもこの地を出させてもらおうかな」


アイザック氏は椅子から立ち上がると、魔女カーリーに釘を刺すように睨みつける。


「ご旅行、楽しんでください」


魔女カーリーは作り笑いで、アイザック氏を送り出す。

アイザック氏を見送ると、電灯に止まっていたハトが再び空高く飛び上がった。


「ハトさん、あなたも頑張って」


魔女カーリーは自由に空を飛ぶハトを羨ましそうに見つめる。

嘘でもいい、魔女カーリーは本心が口から出た。


「はあ、自由に世界を飛び回りたい」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

(道化師キーン視点)


ハトは主の元へと帰ってきた。

派手なハット帽、派手なコートを着たあの男の元へと。


「おかえり、ポッポ太郎」


道化師キーンはハトの背中に取りつけた盗聴器の録音を止める。


「これで彼のことが少しは分かるだろう」


道化師キーンは、アイザック氏が屋敷を空ける日を探っていた。

なぜなら、魔女カーリーに大きな屋敷に住んでいると大嘘をついてしまったからだ。

録音機を再生する中、道化師キーンは旅行に出ることを耳にする。


「じゃじゃーん、ラッキー」


道化師キーンにとって幸運が転がり込んできた。

しかし、これが悲劇の始まりとは、彼はまだ知らない。

※この時代に携帯電話はありません。

皆さん、科学が発展する前、人はどうやって連絡をとっていたのでしょうか?

伝言板、口約束を守る人間の優しさである。

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