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第2話 魔女は真実を語る

1人の魔女は、決して占いが外れることはない。

だから、"魔女カーリー・ユグドラシル"の元には、今日も多くの人が悩みを打ち明けに来ていた。

魔女は、いつも憂鬱になるが、今日はいつも以上に憂鬱になっていた。


「はあ、今日は最愛の女性が殺された男性が2人、今の仕事に疲れた髭のおじさんが1人。何だか大変そうねぇ」


彼女がなぜ、占い師ではなく、魔女と呼ばれるのか。

それは、相手の隠し事を全て見透かすことができるからだ。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

10歳の時、初めて占い師として路肩に出た時だった。

興味本位で近づいてきたカップルに、占いを頼まれてしまった。

2人は、互いがどれくらい愛し合っているかを知りたいと言ってきたのだ。

私は嘘をつかず、彼ら2人の関係を正直に答えた。


「2人の愛は完全に冷めきってます。だって両方浮気してるもの。相手の名前、お聞きになりますか?」


この一言で彼ら2人は破局した。

結局、名前は明かさなかったが、誰と付き合っていたのか私には分かった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


このことが街中に噂され、恋の悩みを聞く魔女として名前が通っていた。

本人は、占いをしたいが、恋の悩みを聞くだけでお金が貰えるのなら本望であると続けている。


「はあ、副業の方はすぐにはお金にならないからなぁ。誰か良い人いないかな?」


魔女カーリーには、人には言えない副業を持っていた。

するとそこへ、道化師キーンが今日も手品をしていた。

魔女カーリーは、道化師キーンに興味を抱いた。



「さてさてさて、こちらをご覧あれ」


道化師キーンが今日取り出したのは、りんごであった。

道化師キーンの連れている1羽のハトが、りんごに飛びついた。

ハトが食べたことで、りんごは偽物ではないことが証明された。


「では、このリンゴを、純金の林檎に変えてみせましょう」


道化師キーンは、誰もが夢見るようなことを口にする。

観衆がりんごに視線を送る中、道化師キーンは魔法を唱えた。


「嘘はやがて、真実になる」


すると、りんごを啄き続けていたハトが、急に食べるのを止める。

ハトが食べていた断面を、道化師キーンは観衆に見せる。


「じゃじゃーん」


すると、光に反射し、黄金に輝く純金の林檎がそこには存在していたのだ。

夢のような魔法に、人々から大きな歓声を一身に浴びる。

道化師キーンは、深々とお辞儀をすると、ハット帽を地面に置く。

そして、山盛りに積まれたりんごの籠を取り出す。


「ではこの魔法のりんご1個200ジェリー、おひとり様3つまでとさせていただきます」


道化師キーンの言葉を聞くと、ハット帽に溢れんばかりのコインが貯まっていく。


しかし、おばさんが純金の林檎に試しで齧りつくと、シャキッと音を立てて、普通に食べられた。


「あら、ただの美味しいりんごね」

「まさかお前、また騙したのか」


再び観衆の笑顔は、鬼の形相へと変わる。

コインの入ったハット帽を抱え、道化師キーンはいつもの決まり文句を吐き捨てた。


「なんちゃって!」


道化師キーンは再び観衆から追いかけられる。

あまりに愉快な犯行に、魔女カーリーはニヤリと笑みを浮かべる。


「道化師キーン、こっちよ」


魔女カーリーは彼を近くのレストランに招待する。


「ありがとう、お嬢さん」


道化師キーンはレストランに逃げ込むと、追いかけてきた観衆から何とか逃れることに成功する。


「あなた、とっても面白いのね」


初めて見た道化師キーンのマジックショーに、魔女カーリーは虜になっていた。


「助けてくれたお礼だ。今日はディナーをご馳走しよう」


真摯な道化師キーンは、魔女カーリーを食事へと誘う。

2人の出会い、これが大きな波乱を呼ぶ。


※作者の余談

"嘘をつく子は、悪い子ですよ"

この言葉を教えた先生は、この時点で嘘をつきました。

なぜなら、嘘をついた子は、怒られていないからです。


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