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泡沫メモリーズ  作者: 三神拓哉
2/2

すべてがFになる Ⅰ

 本編スタート


【登場人物】

小熊玲衣 主人公 金髪ロング

三上凛華 ロリコン 茶髪ポニテ


 午前九時、少しずつ暖かくなる季節の春。

 学園都市 桃源郷。


 この都市は世界で初の『学園×都市』みたいなものとして建立しているらしい?

 『らしい』なんて他人事のようだけど、わたしもついさっき知ったばかりでよくわかっていない。

 今の私は、簡潔に言えば記憶喪失というものらしく、この学園に転入することとなったのもそれが原因と先生が説明してくれた。

 この『学園都市 桃源郷』というのは、その名の通り学園そのものが都市という区分をされているらしく、本屋や服屋、スーパーマーケットなどがあり、申請すれば取り寄せも可能とのこと。


 都市の周りには、外に巨人でもいるのかと言いたくなるようなよくわからない巨大な壁が囲うようにあり、基本出ることはできまない。すごいけど、この壁いらない気がする。


 それを言ったら、学園を都市にする必要も感じない。ロマンはあるけど、学生を半ば鎖国みたいな状態にすることに何の利益があるのだろう。

 抑々ここはどこなの。


 あの先生も言いたいことだけ言って、家に行って明日また来いといったきりどこか行ったし。家の地図はもらったけど、地図なんて日頃見ないから道があっているという自信はない。

 ここで合っているのかな?


 私の目の前には30畳ぐらいの大きさの家があり、場所があっている自信がなくなってくる。本当にこんな大きな家が私の家なのかな?

 隣に小さいボロ小屋があるし、ここが私の家なんじゃ……。


 家が与えられるといっても、ボロアパートの一部屋ぐらいのものだと思っていたため、予想以上のしっかりとした家に少したじろぐ。


 一応ノックをするが、返事はない。

 でも、扉を開けて家の中に入ると、玄関には誰かの靴があった。

 おかしい。先生がここには誰もいないと言ってたのに。


 小さい声で「誰かいますか」というが、無反応。耳を澄ますと小さな寝息が聞こえてくる。

 誰かが奥で寝てるのだろうか。


 先生の伝達ミスか、もしくは勝手に住み着いている不法侵入者か。抑々、私が家を間違えただけかも知れない可能性も捨てきれなくはない。

 隣の家はボロかったし、そこが私の家だったかもしれない。


 このまま玄関に突っ立ったままなのもどうかと思い、寝息が聞こえてくる扉が襖の部屋に入る。


 畳の上に布団という書院造? な部屋で、どうやらここは寝室みたい、布団もあるし。

 やはりと言いうか、部屋では女の子が寝ている。

 ご丁寧に布団までひかれて、茶髪の少女が気持ちよさそうに眠っている。


「すぴーガガ、すぴーガガ、すぴーガガ」

(そこは「すぅすぅ」ぐらいの可愛らしい鼾が良かったのに)


 しっかりと戸締りのされた部屋から玄関先まで聞こえていたのだから、お淑やかな寝息のわけがないのだけど。名前も知らない人に自分の鼾を聞かれるのは可哀そうだし、ちょっとした罪悪感のようなものを感じる。


 なんとなく居心地の悪さを感じ、地図を再度確認するが地図は無情にもここを指している。


 どうしよう。起こすことを躊躇ってしまう。


 不法侵入とイメージがぶっ壊れるような鼾を初対面でぶつけられたけど、可愛らしい少女が眠っているのは確かだし。こんな状況で起こせるほどの度胸はない。

 そして私は度胸と同じくらいの胸を張る。


 暇だし睡眠少女を見る。

 茶髪で後ろに髪を一つ縛りしている少女は、呼吸でポニーテールごと小さく揺れる。

 丸顔で文句なしの美人だろう。


 睡眠少女からは起きる気配はない。

 ところで、私はどこで寝ればいいのだろう。

 私も寝たいのだけど謎の少女によって布団は使えないし……。

 

 私はしばらく考えていると急な眠気に襲われて、一緒に眠ってしまった。

 人の眠気ってうつるっていうよね。




 玲衣が寝入ってから二時間、睡眠少女が目を覚ます。




 どうも初めまして、睡眠少女事、三上凛華です。起きたら私を湯たんぽにしてくれて寝ているに金髪美少女がいます。

 お腹あたりで眠っている少女は息継ぎと共に少し揺れる姿は猫のようでとてもとても素晴らしい。


 ああ神よ、私もとうとう恋愛ものの主人公に抜擢されたのでしょうか。私、これからこの子の攻略頑張るよ。


 まあ、そんなわけないか。

 この子が先生の言っていた転校生なのかな。

 美しい寝顔と長い金髪に目を向ける。

 にしても金髪とは、地毛なのかな。

 この子の持つ金色の髪はサラサラで染めている感じはしない。

 染めている人の髪質なんてわかんないから、髪を染めたかの区別なんてつかないけど。


 本当にこの子が転校生なのかな。

 同級生にしては小さすぎる気がするけど。

 私も身長は大きいほうじゃないけど、この子の身長はいくら何でも小さすぎる気がする。盛って中学生くらいかな。


 それはそうとこの状況をどうしようか。

 春になったとしてもまだ肌寒い、この子の上半身が私に乗っているから動けない。

 小動物みたいに引っ付いていて、何とも愛らしい、布団を盗った私のせいだけど。


 アレ?

 人の家に許可なく上がり込み、勝手に布団を使って寝る。

 これ不法侵入としか言いようがない気がする。


 いやいや、少し冷静なって考えろ、三上凛華。 

 まず、金髪美少女と添い寝したというご褒美は隠しようもない事実。これは普通に家宝にできる。

 しかしどうだ、私はこの学園の生徒じゃないか。同級生の家にお邪魔して何の問題がある。

 仲良くなりたくてお邪魔したといえば、万事解決じゃないか。

 あとはこの子に学園の道案内でもしてあげれば、あわよくば一番最初にできた友達、ファーストフレンドの座を手に入れられるかもしれない。


 これぞ、一石二鳥。


 そんなことを考えていると、玲衣の瞼がゆっくりと開く。

 

 凛華は急いで挨拶する。


「お、おはようございます」



 

 顔を上げて回りを見ると、至近距離に女の子がいる。

 誰?

 一応、挨拶は返しておこう。


「おはようございます」

「まあ、もう十一時だけどね」


 部屋にある置時計を見ると、時計は十一時十三分。私がここに来た時刻は九時頃だったはずだから、二時間近く眠っていたこととなる。


 少しずつ頭が覚醒してくる。低血圧な私でも寝起きからこの状況を理解するのにそう時間はかからなかった。

 茶髪の少女に覆い被さる私、これやばいのでは。

 もし私が起きとき、人が自分の上に乗っいるなんてことがあったら即座に110番通報するだろう。

 誤解を解かないと。


「警察……」


 あぁ、「警察は呼ばないでください」と言おうとしたのにテンパりすぎて声が続かない。

 私の声を聞いて、目の前の少女が青ざめる。


「待って!?私は転校生がどんな子なのか知りたくて来ただけなの。

 だから怪しい不法侵入者でもなければここに住み着いてたホームレスでもないの!」


 ……この人は何を言ってるんだろう。


 一瞬、私の思考が止まる。

 よくよく考えたら、ここに人がいたのがおかしい。転校生を見に来たと言っていたし同級生なのだろうか。


 とりあえず聞いてみよう。


「もしかして私が所属するクラスの生徒さん?」

「そうです! そうです!」


 そうらしい。ということは別に警察を呼ばれる心配はないはもとよりなかったのだろう。

 私は安堵すると同時にある疑問が浮かぶ。


「先生は誰もいないと言ってたけど……」

「私が勝手に来ただけなの、あなたに学園の案内をしてあげようと思ってね」


 どうやら悪い人じゃないらしい。、もしかしてこの子はここでのファーストフレンドになるかもしれない。


「まず、自己紹介しようか。私は三上凛華。漢数字の三に上と書いて三上、凛々しいに華やかで凛華。

 よろしくね、リンちゃんって呼んでね」


 三上さんというらしい。私も自己紹介しておこう。


「小熊玲衣、動物の小熊に昌榮玲瓏の玲に衣と書いて玲衣、こちらこそよろしく」

「玲衣ちゃんの学園の説明は何かされたの?

 あの先生が説明してくれるとは思ないけど」


 先生はよほど信用されてないらしい。事実何の説明もされてないけど……。


「実はほとんど説明されてなくて」

「やっぱりね! そうだと思った。

 私が説明してあげるから安心して」

「ありがとう」

「なんてことないさ、ファーストフレンドだもの」


 頼りになる。


「じゃあ朝? 昼食食べたら早速行こうか」

「はい、三上さん」

「リンちゃんって呼んでね」

「わっかりました、三上さん」

「煽られている?」


 リンちゃんも私も寝室から出てキッチンがある部屋に向かう。

 冷蔵庫、流し台、、コンロがⅠ型で並んでいた。電子レンジもあるし、すごい用意周到だ。


「すご~い」


 リンちゃんも感嘆の声を上げる。


「やっぱり、すごいよね!?」

「うん、私の家にはキッチンすらなかったのに」

「え、リンちゃんの家ってどこ?」

「すぐ隣だよ」


 あれかよ!

 まさか散々ボロ小屋呼びした家がファーストフレンドの家とは。


「あの家ってとるとか、風入ってこないの?」

「余裕で来るよ、時々動物も家に来ることもあるし」


 か弱き乙女を防犯対策皆無のところに住まわせるのは危険では……。

 あ、そうだ。


「リンちゃんウチくる?」

「え?」


 一緒に住めばいいのだ、ここは一人暮らしをするには少し大きい。布団さえ持ってこれば、何の問題もなく住めるだろう。


「いいの?」


 そう言って私のことを上目使いで見てくる。

 

「もちのろんだよ、リンちゃん」

「やったあ!」


 こうして私たちは話して十分くらいでルームシェアすることとなったのだった。



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