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第九話 隕石の落ちた森

「………実はね、この近くの森に隕石が落ちたんだ」

 呼ばれたリズがウキウキ顔で席に着くと、旦那様は釣られる用に満面の笑みで言った。

「いんせき……?って、宇宙から降ってくる石?」

 リズは更に目をキラキラさせる。

「そう。そんなに大きいものではないんだけどね。最近リズの体調も良いし、ルーテも来た頃よりかなり体力が付いてきたから、みんなで行こうかと思って」

「行く!行くわ私!ね、楽しみね、ルーテ」

 ニコニコと笑顔を向けるリズに、ルーテは困惑した。

「あの、本当に私が付いていっても………?」

 家族水入らずの邪魔にならないだろうか。いや、そんな事を言う人たちではないとは知っているけれど、やっぱりちらっとそう思ってしまうのだ。

「えっ、ルーテ、行かないの?どうせお父様もお母様も仕事のついでよ。私の事なんて構ってくれないわ。一人でぽつんと見てたってつまらないし、ルーテが行かないなら私もお留守番してようかしら」

 あからさまにしょぼんとするリズに、旦那様が頭を掻く。

「バレてたか。実は隕石の調査官に任命されてね。教授の仕事もあるのに二足のわらじなんて、娘達との時間が無くなるって上司に文句を言ったら、じゃあ連れてこいって来たもんだ。だから、そんなら堂々と連れてって娘自慢してやるって宣言したんだよ。だから来てくれないと私が娘に振られたみたいで困るなぁ」

 茶目っ気たっぷりにウインクしてみせる旦那様に、私はクスリと笑ってしまった。

「それじゃあ、私は旦那様と奥様が如何に良いお方か、その方に自慢しないといけないですね」

「リズも自慢する〜!」

「本当かい?嬉しいなぁ!じゃあ早速明日出かけよう!」

「ええ、そうと決まれば馬車の手配や昼食の準備をしなくっちゃ」

 和やかなムードで、翌日の外出が決まった。私はなんとなく『隕石の調査』という言葉が気になっていた。

 (調査って、旦那様は魔法使いなのよね?魔法を使ってどう調査するのかしら……?)

 その気がかりが、思いもかけない形で自分に関わることになるとは露ほども思わずに。


 ☆ ☆ ☆


 そして翌日。

 夫妻とリズと四人で馬車に乗り、一時間ほど走らせた先の森で停める。既に他にも三台ほど馬車が停まり、人だかりができている。

「ここからは馬車は通れないから、徒歩になる。まぁ、そんなに奥へは行かないから、すぐ着くよ」

 旦那様は馬車から真っ先に降りると人だかりに目を向け、知己の青年二人を見つけて声をかける。

「やぁ、マリクにスルーフ。君たちも調査に呼ばれたのかい?」

「ああ、先輩!こんにちは。そういう先輩こそ。まぁ先輩ほどの能力があれば調査団に招かれるのは当然ですけど」

 マリクと呼ばれた茶髪の青年が何故かドヤ顔をする。先輩と呼ぶくらいだし旦那様を尊敬しているんだろう、と様子を窺いながら、奥様の次に馬車から降りる。

「私としては大学の授業だけで精一杯なんだけれどね。家族も連れてきて良いというから、遠出がてら様子見に来たんだよ。…………紹介しよう。娘達だ」

 旦那様が近くに来た私達を手招きし、青年二人に引き合わせる。

 本当の娘ではないが、娘達と言ってくれた事に胸がじーんとした。しかし、マリクとスルーフの反応が怖い。この家族との関係を不可解に思われて、問い質されてしまうだろうか。

 しかし予想に反して、金髪の男が目線を合わせ中腰の姿勢で挨拶をしてきた。

「初めましてですね。私はスルーフと言います。こちらはマリク。私達は君達のお父さんの後輩で、魔導学校で教師をしているんだ。よろしくね」

 私とリズの顔を交互に見てにこやかな顔を向けるスルーフ。マリクも私達に会釈をし、奥様に挨拶をする。

 詳しく触れられずにホッと一息つく横で、リズが

「私はリズでこの子がルーテ!私のお姉様でお友だちなの。これからよろしくおねがいします!!」

と元気に返事をする。

 お姉様でお友達。なんだかとてもくすぐったい。ずっと一人だったから、本当にこの家族に受け入れてもらえて嬉しくて目頭が熱くなる。

 スルーフがリズに頷いて、旦那様に向き直る。

「………私達も先程着いたばかりで。せっかくですから一緒に向かいませんか。すぐそことはいえ森ですから、娘さん達が心配ですし」

「そうだな……。はぐれでもしたら大変だ。みんなで行こうか」

 リズは奥様に、私は旦那様に手を引かれ、横をマリクとスルーフが歩く。

 そうして少しすると、光り輝く隕石の落下場所に到着した。

 

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