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第十一話 アーサーの回想〜2

「リズ!ルーテ!そこから離れなさい、早く!」

 咄嗟に強い口調で叫ぶ。私達が彼に気を取られているうちに、まさかそんな近くまで娘達が近寄っているなんて。

「二人とも、待っ………きゃあ!」

 連れ戻そうとした妻が、隕石のエネルギーに弾き飛ばされ、バリバリッ、ドサッという音と共に倒れる。

「エリス!」

 駆け寄り抱き起こしていると、娘達も驚いて隕石から離れる。

「お母様!」

「奥様!」

「……だ、大丈夫よ。それより二人とも、その隕石には近付いちゃだめ………」

 私の腕の中のエリスはまだ自力で身体を起こせないようだが、それでも心配かけないようにと微笑んで娘達を諭す。

 こんなことは予想外だった。まさか、このノエルという男も含め、この隕石に近寄れる人間などいないと。事実、この隕石が落ちて一月は経つのに、触れる者がいるなどという報せは受けていなかった。そう思っていたのが仇になった。

 そうして、私はこのノエルという男の術中にはまったのではないかと、嫌な予感が頭をもたげた。


「……………。君は、此度の研究の第一人者になったと言ったね。今のはよもや、君の策略かい?」

「アーサーさん?それは一体……?」

 スルーフがまさか、と私の顔を窺う。対してノエルは不敵な笑みを浮かべるだけだ。

「君は先程、私達が君へ意識が行くように会話を誘導し、娘達への注意を逸らさせた。理由は、君が言っていた5歳の双子が触れたという話……。この隕石は確かに何がしかのエネルギーを内包しているようだが、魔力があれば触れるというものでもないようだ。君は5歳の双子が触れた事実を元に、子どもなら触れる者が一定数いるのではないかという仮説を立てた。だが何があるかわからぬ隕石を前に、大勢の子どもを集めるわけにもいかぬ。故に、高位魔導師の私に、あえて❝子連れでもいいから来い❞という通達を寄越した………。違うか?」

 キッと、睨めつけるようにノエルに仮説を突き付ける。

「まさか、そんな……。考えすぎなのでは」

 そういうマリクも、動揺のあまり目を白黒させている。

「………ふ。さすがはかの有名なアーサー氏。ご明察です。子どもたちにこそ触れられる可能性がと考えたのも、私自身今現在18だからです。18がこどもなのか大人なのか、微妙なところですが。まぁ、境目ですね。しかし、ちょっと試してみようぐらいの気持ちだったのですが、まさかこんな簡単に二人も見つかるとは思いもしなかったな。双子の方は身寄りがないからこそ、研究させる許可が降りず保留になっている。だが、貴方の娘ということであれば、貴方の許可さえあればすぐにでもメンバーに加えられるというわけだ?」

「………………!」

 彼の笑みは無邪気そのものだったが、私にはいっそ邪悪な何かに感じられた。

「まさか、拒否するつもりですか?国を揺るがす隕石研究への協力を?陛下の命でも?」

 反発しようとしたところを、畳み掛けるように論破してくる。この男は侮れない。彼の言うように子どもだと思って相手をしていたら、痛い目に遭う。

「…………娘は病弱だ。今日はたまたま調子がいいので外出したが、十二までしか生きられないと言われている。よしんば娘にその研究の真似事をさせたとして、寿命が更に縮まることも考えられる。貴殿は私に娘の命を差し出せというのか?」

 これは事実だ。そして、この事実こそが切り札でもあった。娘を連れ去られないための。

「なるほど。それを言われれば、さすがに無理にとは言えないか。では、もうひとりの娘なら構わないかな?見たところ健康そうだし、それに髪の色や瞳の色、どう見ても君たち夫婦と血の繋がりはなさそうじゃないか。君の本当の娘というわけではないんだろう?まさか二人ともだめなんて、言わないよね?そんなことになったら、君、陛下への不敬罪で打首になっても文句は言えないよ?」

 まるで天気の話でもするかのように、にこやかに脅し文句を口にするノエルに反吐が出る。陛下は寛大なお方だ。今回の様な事例でそのような事をするとは思えぬ。が、周りがこれを好機とそう仕向けることは充分に考えられた。例えば、今目の前にいるこの男など。だが、そう安安と屈するわけにはいかない。

「バカな!二人とも私達の娘だ!何があるかわからぬ研究に付き合わせるわけにはいかない!」

 声を張り上げたその時ーー。


 



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