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第十話 アーサーの回想

 森の中なのにやけに明るくて驚いたが、発する光の強さと裏腹に、隕石自体は人の頭ほどの大きさで言うほど大きくはなかった。

 しばし眩しさで目を眇めてしまったが、薄目で周りを見渡すと、既に遠巻きに何人もの学者らしき人間が隕石を取り囲んでいた。


「………君がかの有名なアーサーかい?」

 隕石の一等近くに佇んでいた金髪の男が、こちらに向かって歩き、問う。

「有名かどうかは知りませんが、私の名前はアーサーです」 

 ニコリと笑顔で応対したが、正直良い気はしなかった。

彼は見たところ二十歳程度。一回りも上だろう私に対して、随分と不遜な態度に感じられた。

 それはマリクも同じだったようで、眉間に皺を寄せ彼を窘める(たしな)

「ちょっと君。人に名を尋ねるときはまず自分からでしょう」

「ああ、失礼。今までは名乗るほどの者でもなかったんでね。でも、そうだな。今は一応この隕石研究の第一人者になったからね。名乗っておくべきか。私はノエルというんだ」

 彼は一々癇に障る言い回しをする男だった。まるで自分の立場をひけらかしているような物言いだ。

「隕石研究の第一人者………」

 マリクがそのフレーズに反応すると

「この隕石、落ちてしばらく経つけど、一向に調査が進まない。何故かは聞いているだろう。❝触れる人間がいないから❞だよ。でも、何の因果か流浪の旅人である私が触ることが出来た。だから、私が中心となってこの隕石の研究を進めることとなった。国王陛下からの直々の依頼でね」

 いやに饒舌に語る青年だな、とアーサーは思う。

 突然権力を手にして調子に乗る若者、という構図が浮かび、あまり彼にこの件を任せたくないなと正直思った。

 確かにこの石は誰も触れないとの報告は受けていた。興味本位で近づく者も多数いたが、皆、近付くだけで身体にビリビリ、或いはバチバチと電流が走るような感覚に陥り、触るどころの話ではなかったのだ。

 この隕石にはおそらく特殊なエネルギーが内包されているのだろう、とまことしやかに囁かれ、こうして魔に造詣の深い、魔導師の中でもかなり高位のアーサーが《子連れでも何でもいいから様子を見に行ってくれ》と派遣されたのだ。

まぁ、マリクやスルーフが来ているところを見ると、魔道士であれば構わないから、手当り次第に派遣しようといった感も否めないが。


「そうですよ。私以外にも先日この隕石を触れる少年が二人見つかりましてね。その子達とも協力していく所存ですが」

 続くノエルの発言に一瞬、思考が止まった。

「少年二人………?」

「ええ。まだ5歳の双子ですから、知識を期待するわけではありませんが。彼らに触らせて、私が石の反応を観察するとか、そういう感じです」

 アーサーは絶句した。特殊なエネルギーが内包されているとされる石を、ただ触れるからと言う理由で、むやみに子どもに触らせるなど………。

 子を持つ親としても余計に反対だった。

「年端も行かぬ子どもにそのような事を………、君は正気か?」

 怒りで声が震える。

「そうですよ、どんな影響があるかもわからないのに!」

「本当に国王陛下が同意された事なのか?」

 マリクとスルーフも信じ難い目でノエルに非難の目を向ける。

「陛下は保留だと仰っている。しかし高い確率でそうなるだろう。何せ彼らは孤児だ。帰るところなんてない。拾ってくれた所に寄りかかって生きていくしかないんだよ。そうだろう?」

 アーサーはこの男の発言に吐き気を覚えた。

 彼らが孤児であることを利用して、研究対象にすると言っているようなものではないか。

「君は………!」

「おや?」

 抗議の声は彼の声でかき消された。

「あそこにいるのは、君の連れてきた娘たちじゃないのかな?」

 彼の指差す方を見ると、なんとリズとルーテが平気な顔で隕石に近付いて行くところだった。

「リズ!ルーテ!」

 青い顔で叫ぶが、間に合わず二人は魅入られたかのように隕石に近寄りだす。

「………ほう。貴方の娘さん二人も、隕石の研究員に招かれそうですね。5人もいればさぞいいデータが取れることでしょう」

 さも慶事のように、笑みを深めるノエルに悪魔の微笑みを見て、アーサーは戦慄した。

 

 




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