諦めと妥協
「ラリー。私はあなたについて行くわ……一生」
重い足取りで夜の荒野を歩き始めていた。
「――え」
「あなたはとんでもないチキン野郎で、私の一番嫌いなタイプだけど……それがガッポの願いだったから」
「ガッポの?」
「ええ。……本当はね、いつも言われていたのよ。俺なんかよりもラリーと付き合え。あいつはチキン野郎だが、私のことをいつも思ってくれているいいヤツだって……」
潤んだ瞳で見つめられた。満月のように丸い月がジョナの瞳に綺麗に映っている。
「それに……。それがガッポの一生のお願いだから……。人間に作られ、人間のせいですぐに壊されてしまったガッポの……一生でたった一度のお願いだったんだから……」
震える肩をギュッと抱きしめた……。
ジョナは小刻みに震えていた……。
砂風が頬に当たると、一筋涙の痕に砂が付着して……俺も泣いていたのに気付かされた。
研究所の地下でガッポに渡された黒いリュックの中身は、たくさんのチョコレートと缶ジュースだった。あいつは、最初からこうなることを予想して、「非常持ち出し袋」を準備してくれていたんだ……。
ドロドロに溶けたチョコレートを口の周りに付けながら食べ、ぬるい缶ジュースを飲み、数日間歩き続け、俺とジョナはなんとか100マイル離れた田舎の農村に辿り着くことができた。
西部劇に出てきそうな俺達の借家。俺とジョナは電話も繋がらない田舎で一生農業を続け、裕福ではないが幸せな生涯を過ごした。
あの日以来、ジョナは二度とあの歌を口にはしなかった……。




